スーパー耐久

第1戦鈴鹿決勝 大クラッシュで赤旗終了 ST-Xクラス初陣の5ZIGEN GTR GT3が初戦を制す

優勝したTEAM 5ZIGEN(HIROBON/川端伸太朗/塩津佑介/金丸ユウ)

 ENEOSスーパー耐久シリーズ2023パワードバイハンコック第1戦「鈴鹿S耐5時間レース」は19日、三重県の鈴鹿サーキットで決勝を行い、今年からST-Xクラスに参戦を開始した500号車5ZIGEN GTR GT3(HIROBON/川端伸太朗/塩津佑介/金丸ユウ)が優勝した。(観客 18日予選:3,800人/19日決勝:8,500人)

 決勝日を迎えた鈴鹿は雲一つ無い好天に恵まれた。午前11時45分、8クラス54台が参加して5時間先のゴールを目指し、ローリングラップが始まる。

5時間の決勝がスタートした

 既報の通り今年からAドライバー規定が変更された。高齢者やアマチュアドライバーを想定しているが、それ以外のドライバーも登録可能で、その際STOの審査により、一定のハンディが課される場合がある。今回の決勝中のハンディ対象は以下の4台だ。

 90秒のピットストップ

  • ST-2:13号車ENDLESS GR YARIS(A:花里祐弥)
  • ST-2:225号車 KTMS GR YARIS(A:一條拳吾)

 ドライブスルー

  • ST-4:884号車 シェイドレーシングGR86(A:影山正彦)
  • ST-5:72号車OHLINS Roadster NATS(A:山野哲也)

ST-Xクラス優勝は500号車5ZIGEN GTR GT3(HIROBON/川端伸太朗/塩津佑介/金丸ユウ)

 予選トップ3の500号車5ZIGEN GTR GT3(HIROBON/川端伸太朗/塩津佑介/金丸ユウ)の川端、14号車中升ROOKIE AMG GT3(鵜飼龍太/蒲生尚弥/平良響/片岡龍也)の平良、31号車DENSO LEXUS RC F GT3(永井秀貴/小高一斗/嵯峨宏紀)の小高が3位以下を引き離しながらレースは始まる。予選7位の819号車DAISHIN MPRacing GT-R GT3(JOE SHINDO/藤波清斗/青木孝行/坂口夏月)の青木が、次々と前車をパスして4位までポジションアップ。5位に1号車HELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次)の鳥羽が、6位に23号車TKRI松永建設AMG GT3(DAISUKE/元嶋佑弥/中山友貴)のDAISUKEが、7位に202号車KCMG NSX GT3(ポール・イップ/ホーピン・タン/マーチー・リー)のイップが続く。

 10周目には5位を走る1号車鳥羽が、反則スタートでドライブスルーを行い、7位まで順位を落とす。

 14周目、3位を走る31号車小高が2コーナーからS字入口にかけ14号車の平良をパスして2位に上がる。1号車鳥羽も202号車イップをかわして6位に浮上。この間、トップを走る500号車川端は、2位に上がった小高を6秒離した。

 21周目のスプーンでは、1号車鳥羽が23号車DAISUKEをかわし、ドライブスルー前の5位までポジションを回復した。2位の31号車小高はトップ500号車川端に徐々に接近。その差は2秒となる。

 32周目には2位を走る31号車と4位の819号車青木が1回目のピットイン。ドライバーをそれぞれ、永井とSHINDOに交代した。

 この直後、ストップした車両がありフルコースイエロー(FCY)が提示される。やがてセーフティーカー(SC)に切り替えられると、これを利用してトップの500号車川端、2位の14号車平良、1号車鳥羽、23号車DAISUKEがピットイン。ドライバーをそれぞれ、HIROBON、鵜飼、湧也、元嶋に交代した。

 これでトップに浮上したのは先にピットインした31号車永井、2位にSHINDOが続く。500号車HIROBONは3位に落ち、4位に14号車鵜飼、5位に23号車元嶋が、6位に1号車湧也が付ける。

 SCが退き、レースは37周目から再開。トップ31号車永井と、2位SHINDOは接近戦。そこから13秒遅れて3位に500号車HIROBON、さらに7秒遅れて4位は14号車鵜飼の順。

 トップに立った31号車永井は2位の819号車SHINDOとの差を広げ始める一方、SHINDOには3位の500号車HIROBONが急接近。ここで31号車にピットレーン速度違反でドライビングスルーペナルティーが科された。

 40周目には3位の500号車HIROBONが819号車SHINDOを130Rでパス。31号車永井がペナルティーを消化したため、HIROBONが一気にトップに立ち、2位以下との差を広げ始める。

 51周目にはペナルティーで3位に落ちていた31号車永井が、819号車SHINDOを捉えて2位に上がる。さらに54周目にはSHINDOは14号車鵜飼にもパスされ4位に落ちてしまった。この間、トップを走る500号車HIOBONは、永井との差を37秒まで広げて独走状態となる。

 4位に落ちた819号車SHINDOは、58周目にコースアウト。この間23号車元嶋に、61周目には1号車湧也にもパスされ6位まで順位を落とす。さらに61周目にピットインするもスターターのトラブルでエンジンがかからず、万事休す。

 62周目には31号車永井が、66周目には14号車鵜飼が、69周目にはHIROBONが、ピットインしてドライバーをそれぞれ嵯峨、蒲生、金丸に交代した。

 14号車蒲生だが、ピットアウトして数周走りピットに戻ってきた。トラブルなのかマシンをガレージに入れてしまった。

 これでトップに立ったのはまだピットインを行っていない、23号車元嶋。2位に500号車金丸が、3位に1号車湧也が、4位に31号車嵯峨が続く。

 23号車元嶋は71周目にピットイン。この間、コースアウトした車両があり、FCYが提示される。ドライバーを中山に交代してピットアウトすると、500号車金丸にはパスされたものの順位を2位に落としただけでコースに復帰した。

 上位陣が2回目のピットストップを終えると、トップは500号車金丸、45秒遅れて2位に23号車中山、3位にはさらに80秒遅れて31号車の嵯峨、4位に70周目に湧也から玲次に交代した1号車が続く。202号車リーが5位。

 残り90分を切ったあたりで複数台の車両がコース上でストップ。FCYが提示され、その後SCに切り替えられた。ここで多くのチームがピットインを行う。上位陣は、92周で500号車金丸、23号車中山、91周で31号車嵯峨、1号車玲次がピットインし、ドライバーをそれぞれ塩津、元嶋、小高、湧也に交代した。

 SCが退き94周目からレースが再開されると、トップは500号車塩津のまま。2位には23号車元嶋が12秒差で続く。その後ろ3位31号車小高と4位1号車平木はラップダウンだ。

 トップに立った500号車塩津は逃げる。96周目には2分2秒606、97周目には2秒476とファステストラップを更新しながら、2位23号車元嶋との差を16秒まで広げた。

 ところが、残り50分を切ったあたり、ST-5クラスで三つ巴のトップ争いを演じていた内の2台、72号車山野哲也(OHLINS Roadster NATS)と17号車大谷飛雄(DIXCELアラゴスタNOPROデミオ)がシケイン進入で接触。山野のマシンはイン側のガードレールに激しくクラッシュ、跳ね返されたマシンはシケインアウト側に止まった。

 このアクシデントでいったんFCYが提示されたが、ガードレールも破損、マシンの破片がコースに散らばっていることもあり赤旗が提示されることとなった。

 各車、赤旗ラインに停車して、再開のアナウンスを待ったが、ガードレールの修復が短時間で困難なことなどでレースは再開されることなく、赤旗を持って終了。直前の周の順位で決勝結果が確定した。

 優勝は500号車5ZIGEN GTR GT3で、ST-ZからST-Xクラスにステップアップした初戦でポールトゥウインを飾った。Aドライバーとは思えないHIROBONのスピード、終盤ファステストラップを連発した塩津など、手ごわいチームを他陣営に印象づけた。

 2位には予選4位から23号車TKRI松永建設AMG GT3が入った。FCYやSCを巧みに利用し、終盤はトップに迫ったが、あと一歩及ばなかった。3位には2度のペナルティーを乗り越えた31号車DENSO LEXUS RC F GT3が入った。

ST-Zクラス優勝は52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT4(山崎学/吉田広樹/服部尚貴/川合孝汰)

 11台が参加したST-Zクラスは、ポールポジション(PP)の52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GT4(山崎学/吉田広樹/服部尚貴/川合孝汰)、885号車シェイドレーシング GR SUPRA GT4(HIRO HAYASHI/平中克幸/清水英志郎)、26号車raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4(大塚隆一郎/富田竜一郎/名取鉄平/篠原拓朗)、19号車BRP★SUNRISE-Blvd718 GT4 RS(鈴木建自/末廣武士/福田幸平/谷川達也)などが上位争いを演じていたが、19号車がペナルティーで脱落。52号車は最後のドライバー交代を行う前に、赤旗終了となったため、2位以下をラップダウンしての優勝となった。2位には26号車が、3位には885号車が入った。

ST-Qクラストップは61号車Team SDA Engineering BRZ CNF Concept(廣田光一/山内英輝/井口卓人/伊藤和広)

 4台が参加したST-Qクラスは、61号車Team SDA Engineering BRZ CNF Concept(廣田光一/山内英輝/井口卓人/伊藤和広)が93周を回りトップだった。

ST-1クラス優勝は47号車D\'station Vantage GT8R(星野辰也/織戸学/浜健二/ジェイク・パーソンズ)

 2台が参加したST-1クラスは、2号車シンティアムアップルKTM(井田太陽/加藤寛規/高橋一穂/吉本大樹)が序盤から独走。しかし終盤前に2号車が、ターン7(旧ダンロップコーナー)アウト側にストップしたため、47号車D'station Vantage GT8R(星野辰也/織戸学/浜健二/ジェイク・パーソンズ)が優勝した。本来、順位認定はフィニッシュラインを横切らないといけないが、赤旗終了のためフィニッシュ優先規定は適用されず、トップの70%以上を周回したため2号車も完走扱いとなっている。

ST-2クラス優勝は743号車Honda R&D Challenge FL5(石垣博基/武藤英紀/木立純一/柿沼秀樹)

 5台が参加したST-2クラスは、PPの6号車新菱オートDIXCEL夢住まい館エボ10(冨桝朋広/菊地靖/大橋正澄)が序盤、27周目にストップして早々に脱落。これでトップに立ったのが743号車Honda R&D Challenge FL5(石垣博基/武藤英紀/木立純一/柿沼秀樹)だった。一方、Aドライバーハンディを課されていた、225号車 KTMS GR YARIS(一條拳吾/荒川鱗/奥住慈英/奥本隼士)は1周目に、13号車ENDLESS GR YARIS(花里祐弥/石坂瑞基/伊東黎明/岡田整)は16周目に90秒のピットストップ義務を消化し、追い上げにかかる。しかし、225号車は2位まで追い上げた、残り90分余りのところで、左フロントタイヤが脱落しストップ。13号車は終盤、743号車に迫ったが、赤旗終了のため743号車が優勝を飾った。

 743号車は、本田技研工業の有志チーム。ST-2クラスにFF車が出場可能となり、2019年からシビックタイプRで参戦を開始。参戦5年目でうれしい初優勝を飾った。2位には13号車が、3位には7号車新菱オートDIXCELエボ10(藤井芳樹/安斎景介/成澤正人/下垣和也)が入った。

ST-3クラス優勝は15号車岡部自動車Z34(甲野将哉/長島正明/冨田自然/元嶋成弥)

 5台が参加したST-3クラスは、PP・39号車エアバスターWINMAX RC350 TWS(眞田拓海/伊藤鷹志/岡田衛)のリードで始まるが、序盤に15号車岡部自動車Z34(甲野将哉/長島正明/冨田自然/元嶋成弥)がこれをパスしてトップに立つ。2位にも16号車岡部自動車Z34(鈴木宏和/田中徹/田中哲也/小松一臣)が上がるが、トラブルで後退。15号車が逃げ切り優勝した。2位には39号車が、3位には僚友の38号車 ヒグチロジスティクスサービス RC350 TWS(尾崎俊介/鶴賀義幸/石森聖生)が入った。

ST-4クラス優勝は60号車TEAM G/MOTION\'GR86(塩谷烈州/山本謙悟/瀬戸貴巨)

 8台が参加したST-4クラスは、PPの884号車シェイドレーシングGR86(影山正彦/国本雄資/山田真之亮/鶴田哲平)がAドライバーハンディー消化のため1周目にドライビングスルーを行い、最後尾に落ちる。これでトップに立ったのは41号車エアバスターWINMAX GR86 EXEDY(石井宏尚/冨林勇佑/水野大)。2位には3号車ENDLESS GR86(坂裕之/小河諒/菅波冬悟)が、3位には60号車TEAM G/MOTION'GR86(塩谷烈州/山本謙悟/瀬戸貴巨)が、4位には86号車 TOM'S SPIRIT GR86(矢吹久/松井孝允/河野駿佑/坪井翔)が付ける。しかし、3号車は終盤トラブルでピットイン。41号車、86号車とも82周目に最後3回目のピットインを行うと、まだ3回目のピットインを行っていない、60号車がトップに浮上した。ところが、レースは赤旗で終了となったため、この時点でトップの60号車が優勝した。2位には41号車が、3位には86号車が入った。

ST-5クラス優勝は88号車村上モータースMAZDAロードスター(村上博幸/吉田綜一郎/有岡綾平/岡本大地)

 12台が参加したST-5クラスは、1周目に予選4位の72号車OHLINS Roadster NATS(山野哲也/金井亮忠/野島俊哉)がAドライバーハンディを消化するためドライブスルーを行う。PPの88号車村上モータースMAZDAロードスター(村上博幸/吉田綜一郎/有岡綾平/岡本大地)がトップに立ち、2位に17号車 DIXCELアラゴスタNOPROデミオ(西澤嗣哲/大谷飛雄/小西岬/野上敏彦)、3位に50号車LOVEDRIVEロードスター(伊橋勲/大井貴之/藤井順子/國沢光宏)、4位に4号車THE BRIDE FIT(太田侑弥/岡田拓二/新井薫/伊藤俊哉)、5位に65号車odula TONE制動屋ロードスター(外園秋一郎/太田達也/伊藤裕仁/丹羽英司)が続いてレースが始まった。

 序盤のハンディ消化で下位に沈んでいた72号車が徐々に順位を回復。中盤にはトップまで上り詰め、88号車と17号車との上位争いとなった。レース終盤、88号車は吉田に、17号車は大谷に、72号車は山野に3回目のドライバー交代を行うと、ゴールに向けてこの3台の争いは白熱していく。

 そして残り50分を切ったあたり、87周目の130R立ち上がり、大谷に先行してシケインに進入した山野の右リアに、大谷の左フロントが接触。山野はスピンをし、シケインイン側のガードレールに激しくクラッシュ。マシンは、はじき返され破片をまき散らしながらシケインアウト側にストップした。このアクシデントでFCYが提示され、前述のとおりレースは赤旗終了となった。

 赤旗終了直前、86周目でトップに立っていたのは接触の当事車17号車だが、マナー違反で競技結果に40秒を加算され3位に降格。優勝は88号車となった。2位には3回目のピットストップ義務を消化していない4号車が入った。

ST-Xクラスの表彰式

ST-Zクラスの表彰式

ST-1クラスの表彰式

ST-2クラスの表彰式

ST-3クラスの表彰式

ST-4クラスの表彰式

ST-5クラスの表彰式

 大クラッシュの山野は鈴鹿中央病院に搬送された。肋骨骨折の重症だが、脳検査も異常も無いようで、命に別状はなく、まずは一安心といったところだ。

 このレース、赤旗終了のため、3回のピット義務はなくなった。そのため2回ピットで優勝したり、上位に食い込んだチームがあったが、運不運も勝負の綾といったところだろう。過去にもそういうレースはあった。

 また、通常のレースはチェッカー後5分以内にゴールしないと完走扱いにならないが、これも採用されない。クラストップの70%を周回していれば、走行不能でガレージに入っていてもポイントが与えられる。通常終了では与えられなかったポイントを獲得したチームもあり、選手権争いに影響を与えそうだ。

 第2戦は富士スピードウェイに舞台を移して、5月27日~28日に24時間レースが開催される予定だ。

Text: Yoshinori OHNISHI
Photo: Kazuhiro NOINE
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