2024年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第5戦決勝は6月23日(日)に富士スピードウェイで開催され、トップが目まぐるしく入れ替わる12周のレースで、最後尾21番手スタートの渡会太一(FTK レブレーシングガレージ)がすべてのクルマをオーバーテイク、優勝を飾った。
予選がキャンセルになったことで筑波・富士シリーズのランカーが前方からスタート、鈴鹿・岡山シリーズの上位ランカーである松井啓人(FTKレヴレーシングガレージ)が12番、小田優(Drago CORSE TAKE)13番、渡会太一(FTKレヴレーシングガレージ)に至っては最後尾の21番グリッドからスタートすることになり、彼らがどんな追い上げを見せるかが注目された。
朝から降り続いた雨は12時55分のフォーメーションラップ開始時点でほぼやんでいるが、コースは依然としてウエットコンディション。21台全車がウエットタイヤでグリッドについて、レーススタート。
ポールシッターの角間光起(ELIVレーシング10VED)は好スタートを切ったが、それを上回るロケットスタートを見せたのが3番グリッドから発進の石井大雅(ファーストガレージ制動屋S2)。髪をまるめた効果かスタートの加速で2番グリッドの伊藤駿(ZAP SPEED 10VED)をかわすとTGRコーナーで角間をアウトから仕留めてトップに立つ。3位に落ちた伊藤も負けずにアドバンコーナーでは角間のインを差しに行くがここは角間がポジションを守る。その伊藤に今度は酒井翔太(ファーストガレージKK-S2)が襲い掛かり第3セクターでオーバーテイク、3位を奪ってストレートに戻って来る。
石井~角間~酒井~伊藤~黒川史哉(ZAP SPEED 10V)~津田光輝(ファーストガレージKK-SII)というトップ6でオープニングラップを終了。注目の渡会太一は1周で10台を抜き去って11位までポジションアップ。
勢いにのる酒井はスリップストリームを活かして角間に接近、2周目のTGRコーナーでインを突くとオーバーテイクを完了、2位に上がる。3位に落ちた角間は挽回を狙うが背後に伊藤が迫っている。2位争いのスキに石井はリードを拡げ、2周目に2位酒井に0.606秒の差をつける。酒井と3位角間は0.659秒差、そこから0.522秒のギャップで伊藤、0.462秒差で黒川と続き、6位には12番手スタートの小田が上がってきている。渡会太一は2つポジションを上げて9位。
スリップストリームが大変利く富士ではコントロールライン上で0.5秒程度の差があっても、TGRコーナー進入時にはほとんど差がない状態になる。それを利用したのが角間で3周目のストレートエンドで酒井に接近、テール・ツー・ノーズ状態でTGRコーナーに進入する。しかし角間はブレーキングで大きく姿勢を乱し、酒井と接触、アウト側へコースアウト、止まってしまう。リヤセクションのダメージが大きく角間はここで無念のリタイヤ。角間によるとブレーキングポイントが違う酒井に当たりそうになりブレーキの踏力を強めたらタイヤがロックして酒井に接触してしまったとのこと。酒井もこの接触でポジションを落としてしまう。
このアクシデントでセーフティカー(SC)投入が宣言される。この時点での順位は石井~伊藤~黒川~小田~酒井~磐上隼人(アルビ富士吟景GIAED)というトップ6。小田は4位まで進出、渡会は前を行くこれも鈴鹿組の元山泰成(Ecotech Works Racing F)にやや手こずり8位。さらに渡会の後方にチームメイトの松井が上がってきている。そして周囲が驚いたのが、10位につける落合蓮音(ファーストガレージKKS-2)で、今回がスーパーFJで2レース目、20番グリッドからスタートし中団の混戦をかいくぐってオープニングラップで14位、2周目13位、3周目10位までポジションを上げてきた。
SCランは5周目まで続き6周目からレース再開。リスタートでは石井が13コーナー辺りから加速を始めると伊藤もこれにうまく対応。コントロールライン上ではテール・ツー・ノーズ状態に持ち込む。その後方では小田がTGRコーナー進入でインから黒川をオーバーテイク、3位に浮上する。さらに第1セクターで磐上が酒井を攻略、5位にポジションアップする。元山と渡会も酒井を仕留めてそれぞれ6位、7位へ浮上し磐上に接近する。
続く7周目、ストレートでスリップストリームを効かせた小田が伊藤に接近、TGRコーナーでインから前に出て2位。後方では6位まで上がってきていた元山がコースアウト、大きく順位を落とす。これで渡会が6位。小田は追撃の手を休めず石井を追い詰めにかかり、ダンロップコーナーでインからずばっとオーバーテイク、ついにトップに立つ。しかし石井も諦めずに小田を追走。7周目終了時点で0.153秒の差。3位伊藤はやや離され0.730秒のギャップ。トップスピードが202キロ/hの小田、205キロ/hの石井に対して193キロ/hの伊藤は富士の直線勝負で何とも分が悪い。4位に磐上、渡会も5位とそれぞれ黒川を仕留めてポジションアップ。
8周目、石井はTGRコーナーで小田をインから差してトップを奪回。そして勢いに乗る磐上も伊藤をオーバーテイク、3位に浮上する。磐上のマシンはコーナー毎にリヤが流れそうになるのをカウンターで抑え込んでの激走で、バトルを繰り広げる石井と小田の背後に迫る。小田はコーナー毎に石井にプレッシャーをかけるとGRスープラコーナーでアウトからクロスラインで石井を攻略、再度トップに立つ。磐上もコントロールライン手前で石井をオーバーテイク、毎レーススタンドで旗を振り声援をおくる事で有名な磐上の応援団に応えてみせた。
小田を先頭に、磐上~石井~伊藤~渡会が0.7秒以内のワンパックで9周目のTGRコーナーに殺到。ここで磐上が先頭に出るが勢い余ってオーバーシュート。これを回避するために小田もコースアウトし、石井がトップに立つ。伊藤も一瞬失速し、そのスキを見逃さず渡会と松井が2位、3位へと進出する。9周目を終えての順位は
- トップ 石井
- 2位 渡会(+0.353秒)
- 3位 松井(+1.190秒)
- 4位 伊藤(+1.309秒)
- 5位 小田(+2.784秒)
- 6位 酒井(+3.790秒)
ストレートでスリップストリームを活かした渡会は石井との間合いをぐっと詰めるとTGRコーナーでインから仕掛ける。石井もアウトから被せるようにターンインするが渡会はドアをこじあけるように前に出てオーバーテイクに成功。ついに10周目にして最下位スタートからトップに躍り出るとじわじわと石井を引き離し0.539秒までギャップをひろげる。11周目も渡会のリードは拡がり、逆に石井は松井からのプレッシャーにさらされて防戦一方になる。アドバンコーナーでは松井が石井に並びかけてサイド・バイ・サイドで立ち上がり、ここは石井がしのぐもテール・ツー・ノーズ状態で第3セクターを抜けると最終コーナーからの加速で松井が並走。0.038秒の差でファイナルラップに突入する。その間にトップ渡会は1.447秒までリードを拡大。小田は伊藤をオーバーテイクして4位へ。
12周目のTGRコーナーで松井がインから石井を抜き去り2位にポジションアップ。石井はここで力尽きたか松井に追いすがることができず僅かずつだが間合いがひろがりここで勝負あり。
渡会は最後尾スタートから20台抜きを演じて会心の勝利、2位にチームメイトの松井がはいり、レヴレーシングの1-2フィニッシュとなった。3位石井は3戦連続の表彰台獲得も、両親から贈られた必勝のダルマに目を入れることは叶わなかった。4位小田、渡会同様圧倒的な速さを見せたがアクシデントに泣いた。5位酒井はフォーミュラBeatとのダブルエントリーで切り替えが大変だといいつつもファイナルラップで伊藤を仕留めて順位を上げた。伊藤はトップスピードの足りないマシンでレース巧者ぶりを見せたが悔しい6位に終わった。
応援団の目の前でトップ争いを見せた磐上は16位、しかし11周目にファステストラップを叩き出した。4台が出走のジェントルマンクラスは 終始クラストップを走った秋山健也(スーパーウインズKKS2)が総合13位でクラス優勝、以下総合17位の畠山退三(zap speed KKS2)、同18位の山根一人(光精工 TK-Sport MYST)というトップ3になった。
ポディウムに戻って来た渡会はまずクルーと抱擁。おもむろにヘルメットを脱いだオーバーテイクショーの主役は満面の笑みを見せた。
筑波・富士S-FJ選手権第6戦は7月28日に筑波サーキットで行われる。角間がノーポイントに終わったことでシリーズランキングは伊藤が56点でトップ。2位石井53点、角間52点、アレックス50点と混とんとしてきた。
Text: Yoshinori OHNISHIPhoto: Kazuhiro NOINE
Mizue NOINE