SUPER GT

第7戦オートポリス 上位陣に匹敵するペース イゴールの追い抜き劇場(ANEST)

初の450kmオートポリスで3戦連続ポイント獲得を狙う

 ANEST IWATA Racing with Arnageは、10月14日(土)~15日(日)、大分県オートポリス・インターナショナルレースコースで開催された2023 SUPER GT第7戦GT300クラスにANEST IWATA Racing RC F GT3で参戦した。チーム創設以来最上位の7位で終えた前回は、SUPER GTシリーズの決勝標準距離である300kmのレースだったが、今回の決勝レースの走行距離はオートポリスでは初めての450km。戦略面で様々な選択肢が生まれてくる。チームは再び、Aドライバーのイゴール・フラガ、Bドライバーの古谷悠河に加え、450kmレースに備えCドライバーとして小山美姫を登録してレースウィークを迎えた。

不安定な天候に左右される予選

 第5戦、第6戦と2レース連続で選手権ポイントを獲得したチームは、アップダウンが激しいテクニカルコースがRC Fの車両特性に適していることもあって上位入賞に向けて意気込んでいた。SUPER GTシリーズではレースウィークに使用出来るタイヤの本数を450kmレースの場合、6セット24本に制限しており、レースウィークのコンディションを想定してタイヤを選択する必要がある。チームは2種類のタイヤをオートポリスに持ち込んだ。

 しかし週末は曇天となりオートポリスの気温、路面温度はチームが想定していたよりも低くなり、持ち込んだ2種類のタイヤの特性がコンディションに合わない状態に見舞われた。14日(土)午前中の公式練習セッションでタイヤがうまく機能せずタイムが伸び悩み、予想外のクラス18番手に終わったイゴールは、公式予選Q1A組出走を前に、自分が置かれた厳しい状況に緊張していた。

 ところがセッション開始直前に雲が切れ、太陽が一時的に顔を出して気温、路面温度ともわずかに上昇。このタイミングにイゴールはコースインし、タイヤをうまくウォームアップしてタイムアタックにかかり、Q1A組出走13台中5番手となるタイムを記録してQ2セッション進出を決めた。

   しかしQ2セッションを前に太陽が再び雲に隠れ、気温と路面温度は再び低下。Q2セッションに出走した古谷はタイヤがうまく温まらずグリップが出なくなったことを感じながらタイムアタックに入ったが、出走16台中15番手のタイムに終わり、ANEST IWATA Racing RC F GT3のスターティンググリッドは15番手となった。

難しいコンディション 粘る古谷

 チームは決勝レースでは天候が回復して、気温と路面温度が上昇することを願ったが、翌15日(日)も曇天となり、前日同様のコンディションで午後1時30分、決勝レースが始まった。スタートを担当した古谷は、タイヤがなかなか温まらずグリップのない状態で走行しているうちに順位を2つ落としてしまう。10周を前にようやくタイヤが温まり発動しようとしたところでコース上にアクシデントが発生しFCY(フルコースイエロー)が宣言されペースダウンを余儀なくされたためせっかく温まったタイヤが再び冷えてしまい、古谷はレース再開後またタイヤをウォームアップするところからやり直さなければいけなくなった。

 FCYは26周目にも宣言され、この時点では上位車両の何台かは1回目のピット作業を終えており、ポジションが10番手まで繰り上がったところで古谷は29周を走って1回目のピットインを行った。ここでドライバーはイゴールに交代、チームはタイヤ交換と給油を行いマシンをコースへ送り返した。イゴールの順位は見かけ上18番手まで下がり、そこから追い上げが始まった。

上位陣に匹敵するペース イゴールの追い抜き劇場

 ウォームアップに時間がかかることには変わりなく、その反面、いったん温まるとその後の消耗はライバル車に対して緩やかであることが見え始め、イゴールは他車のラップタイムがタイヤの消耗につれて低下するのに対し自分のペースを守り、相対的に追い上げを進めることとなった。しかしオートポリスはオーバーテイクが難しいコースでもあるため、明らかにイゴールより遅い車両に追いついても容易に順位を入れ替えることはできなかった。

 それでもイゴールは上位陣と同等のラップタイムを繰り返し記録しながら追い上げ、36周目には16番手、42周目には15番手、48周目には14番手、52周目には13番手、56周目には12番手、58周目には11番手へと見かけ上の順位を上げていった。

 イゴールは63周を走ってANEST IWATA Racing RC F GT3にとっては2回目のピットインを行い、タイヤ交換と給油を行いコースへ復帰。そこからは再びタイヤをウォームアップする必要があったが、時間をかけて温めると再び上位陣に匹敵するラップタイムが復活、イゴールの追い上げが再開となった。

 ピットインの間に見かけ上の順位は65周目に16番手にまで後退したが、70周目に15番手、73周目に14番手、85周目に13番手、86周目に12番手、87周目には11番手へとポジションは上昇。シリーズポイントが獲得出来る10位のポジションが目前になったイゴールは力走した。前走車はイゴールより1秒から2秒遅いペースで、間隔は縮まっていったが、結局2秒632まで追いついたところで89周目にチェッカーフラッグが振り下ろされレースは終了となった。

 結果ANEST IWATA Racing RC F GT3の正式順位は11位に終わり、3戦連続でのドライバー部門でのシリーズポイント獲得とはならなかった。チーム部門では7戦連続の完走を果たしたANEST IWATA Racing with Arnageは完走ポイントを2点加え、ランキング18番手につけた。次回シリーズ最終戦となる第8戦は、11月4日(土)~5日(日)、栃木県モビリティリゾートもてぎで開催される。

■正式結果

  • 公式予選 クラス15位(出走25台)
  • Q1: 1分44秒144(イゴール:A組5位)
  • Q2: 1分45秒071(古谷:15位)
  • 決勝 クラス11位(出走25台) 89周(2周おくれ)

イゴール・オオムラ・フラガ
 「今週末の天気では気温も路面温度も上がらず、持ち込んだ2種類のタイヤが、柔らかすぎるか、ちょっと硬すぎるかだったので、うまくハマらず、土曜日の午前中から苦戦しました。そうしたら、予選が始まる前に少し太陽が出て路面温度がちょっとだけ上がったんです。ちょっとドキドキしながら走り出しましたが、タイヤのウォームアップも割とうまくいって、アタックもまとまったので、個人的には満足出来る結果が出ました。決勝レースでは気温、路面温度が上がることを願ったんですが、思うようにはならず、厳しい展開になってしまいました。でも僕が担当したレース後半は、コンディションが良くなったこともあったのか、タイヤが温まった後は良いペースで走れました。もう少しだったのに前のクルマに追いつけなかったのが残念です。最終戦では良い結果を出してシーズンを締めくくりたいです」
古谷悠河
 「予選Q1はイゴールが良いアタックで突破してくれてQ2は僕だったんですが、Q1に比べて日が陰って路温が下がってしまったのでタイヤが発動するレンジを外れてしまったようで、全くグリップを引き出せずタイムが出ませんでした。決勝は、僕がスタートを担当しましたが、やはりタイヤのウォームアップに苦しんで、序盤ペースが上がらずポジションを落としてしまいました。そこから淡々とラップを重ねていくうち、だんだんタイヤが温まって、そこからのペース自体は納得行くレベルになって、周囲のペースが落ちていくのに対して落ちは少なかった感じがします。ただ、僕のスティントでFCYが何度か入って、そのたびにタイヤが冷えてしまい、せっかくペースが上がって来たのにそこから回復するのにまた時間がかかるという繰り返しでした。悔しい週末でしたが、予選、決勝を通して、タイヤやブレーキは本当にシビアな使い方をしなければならないのだなと勉強になりました」
武田克己総監督
 「今回はとにかく想定より気温が低すぎました。オートポリスはそもそも難しいサーキットであるうえ、季節的にもどれぐらいの温度になるのか、なかなか判断が難しかったです。結局タイヤがコンディションにうまく合わなくて予選15番手となってしまいましたが、決勝では11位まで追い上げましたから、よく頑張ったと思います。Q1に通ったまでは良かったんですがQ2に行った時に、ちょっと気温が下がってしまい、タイヤがうまく合わなくなったのが残念でした。決勝では、終盤イゴールが追い上げてくれたんですが、ペースの遅いクルマに前を塞がれる形でひとつ上の順位のクルマとの差が拡がってしまったので厳しい状況でした。でも、クルマには10位以内でフィニッシュするだけのパフォーマンスが明らかに認められましたし、メカニックもドライバーも厳しい条件の中でしっかりやってくれて、シーズン開幕当初から比べると非常にレベルの高いレースだったと思います。次回の最終戦は、決してRC Fに有利なコースではありませんが、しっかりと結果を出したいと思います」
ANEST IWATA RACE REPORT


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