2023年スーパーFJもてぎ・SUGOシリーズ最終第7戦決勝が11月18日(土)モビリティリゾートもてぎで開催され、白崎稜(TAKE FIRST スタッフリソース)がポールポジションから出るといったんは2位に落ちたがすぐに挽回、途中SCランからのリスタートもそつなく決めてトップを守り10周のレースで優勝を飾った。
朝の予選から僅か2時間のインターバルで行われた第7戦決勝。朝の冷え込みに比べれば陽ざしもあり気温11度まで上昇。路面もほぼドライコンディションになった。
シリーズ参戦選手に加えてスポット参戦組も合わせて26台が出場。その中でシリーズチャンピオンの可能性を残しているのが6台だ。
- 池田拓馬(TAKE FIRST & AMEROID) 60ポイント
- 椎橋祐介(FG&SW NMSP 919 KKSII) 57ポイント
- 内田涼風(群馬トヨペットRiNoA ED)56ポイント
- 中澤凌 (ZAP NAKs 10V ED) 52ポイント
- 豊島里空斗(C.S.I Racing ED) 45ポイント
- 磐上隼斗(アルビ富士吟景GIA ED) 43ポイント
優勝20ポイントを筆頭に以下15-12-10-8-6-4-3-2-1ポイントが付与される。
このチャンピオン争いを混沌とさせるのが、他のシリーズからやってきた有力選手たち。鈴鹿・岡山シリーズで現在首位の白崎、2位の田中風輝(24systemタイヤサービスM2 KK-SII)、オートポリスのチャンピオン宇高希(UDKナックル)、筑波・富士シリーズチャンピオンの小村明生(FIRST GARAGE REAXION)などなど、12月の日本一決定戦を目標にやってきた面々が予選から上位を占めて、レースとチャンピオンの行方を左右する。
午前10時20分フォーメーションラップ開始。路面温度はまだ低そうで、各車タイヤの熱入れにマシンを振ってコースを1周。ここで11番グリッドの豊島がS字コーナーでストップ、コース脇にマシンを止めた。豊島によるとブレーキペダルのトラブルだそうで、無念のDNSとなってしまった。
豊島を除いた25台がスターティンググリッドに戻り、レッドライトが消えてレーススタート。シリーズ最終戦の幕が切って落とされた。
ポールシッター白崎はスムーズにスタート。蹴り出しがよかったのが3番手スタートの田中で一気に加速すると2番手スタートの堂園鷲(Kデンタルオフィス☆ミスト)をかわして2位で第1コーナーに飛び込む。堂園3位、4位椎橋に続くのが内田で、第2コーナーで5番手スタートの迫隆眞(EAGLE ERS S-FJ)の前に出る。第3コーナーでシリーズランキング首位の池田がコースアウト、大きく順位を落とし、チャンピオンシップに黄色信号がともる。
トップ白崎と2位田中はテール・ツー・ノーズ状態、そこからやや離れて3位堂園、4位椎橋、5位内田、6位迫が連なって第4コーナーを通過。第5コーナーへのブレーキングで田中が白崎のアウトから被せるようにターンイン。トップを奪い取る。後方では堂園~椎橋~内田~迫が2列に並んでコーナリング。
2位に落ちた白崎だが田中とほぼ並んでファーストアンダーブリッジを通過、サイド・バイ・サイドのままで130Rコーナーを通過する。しかしS字では田中が完全に前へ出る。3位グループでもポジションが入れ替わり3位椎橋、4位迫、5位内田、6位堂園の順に。白崎はダウンヒルストレートで田中の左サイドから90度コーナーへのブレーキング勝負に出るが、ここは田中がポジションを守る。
オープニングラップを終えてトップ田中、0.328秒の差で2位白崎、3位椎橋、4位迫までの間隔がそれぞれ0.2秒、5位内田と6位堂園も0.293秒差と団子状態で続いている。2周目の第1コーナーでは迫が椎橋をインから仕留めて3位に浮上。
ここから白崎が反撃を開始、第3コーナーで田中のアウト側からアプローチ、縁石ぎりぎりで踏みとどまり田中と並走するが続く第4コーナーでは田中が前、しかしS字の入り口で白崎がずばっとインを差すと田中とサイド・バイ・サイドでコーナリング、V字コーナーの進入で逆転、トップを奪い返す。白崎に前をふさがれた格好の田中に対して迫がアウトから被せていき田中はワイドにラインが取れない。迫がデビューレースとは思えないバトル巧者ぶりを見せる。後方ではS字で椎橋をかわした内田に続いて小田優(AUTOBACS Drago CORSE KK-SII)がV字で椎橋のインを狙う。
白崎~田中~迫~内田がひとかたまりになってヘアピンを旋回。ダウンヒルストレートを4ワイドで駆け降りる。そのすぐ後ろで椎橋~堂園~小田も3ワイドで先陣を争う。ここから白崎が頭一つ出て90度コーナーへターンイン、田中、迫、内田が並んで旋回するが田中が僅かに前で2位に、3位迫、4位内田の順でビクトリーコーナーへ。椎橋~堂園~小田のグループは堂園が僅かに前に出て90度コーナーを抜ける。小田が続き椎橋は7番手までドロップする。
2周目を終えてトップは白崎、2位田中~3位迫~4位内田が0.222秒以内のワンパック、そこから0.4秒のギャップで5位堂園~6位小田~7位椎橋までが0.261秒以内で連なり3周目に突入。
この中でまず第1コーナー進入で迫が田中をインからオーバーテイク、さらにその内側に切れ込んだ内田がレイトブレーキングで田中と迫をまとめて差して第2コーナーで2位に浮上する。もてぎをホームとする内田の面目躍如のパッシングだ。その後方では小田が堂園を捕らえて第2コーナーで5位に浮上するも3コーナーへの加速で堂園が再び前に出る。
このタイミングで10位あたりのグループで接触が発生、小村が第4コーナー立ち上がりでスピン、スポンジバリアにクラッシュしてしまう。小村と磐上、村田将輝(湘工冷熱ZAP SPEED ED)の3台が絡む接触があったもようだ。小村はここでリタイヤ。セーフティカー(SC)の導入が宣言され、激しかった序盤の攻防戦は水入りに。
この時点でのオーダーは白崎~内田~迫~田中~小田~堂園の順で、シリーズチャンピオンシップ的にはトップ池田が21位に沈み、2番手椎橋が8位、4番手中澤が7位と、現在2位の内田が圧倒的に有利な状況だ。
SCランは5周まで続き6周目からレース再開。トップを先導する白崎は落ちついてスタート。2位内田に対し迫が背後につけて第4コーナーを立ち上がるとストレートで並びかけて第5コーナーでアウト側からオーバーテイク。内田はチャンピオンシップを意識してかあまり抵抗せずに2位のポジションを明け渡す。このやりとりの間に白崎は2位以下とのギャップを築き、1.315秒の差で6周目を終了。2位迫と3位内田のギャップは0.394秒。さらに田中が0.561秒差の4位、小田が0.465秒差で5位。6位にはV字の立ち上がりで堂園を仕留めた中澤が浮上している。
7周目、白崎は2位以下をじわじわ引き離し2.050秒差、2位に上がった迫と3位内田は0.468秒差。内田の背後には田中が迫り0.225秒とテール・ツー・ノーズ状態。内田は走りが守りに入っているのか。
2位に上がった迫は8周目にここまでのファステストラップとなる2分5秒322を出して最後まで追撃の手を緩めない姿勢だ。内田も目が覚めたか2分5秒台にラップタイムを戻して田中との間合いを0.62秒まで戻す。
膠着状態が一気に崩れたのが9周目、田中が内田のテールに張り付いてV字の進入でオーバーテイク、3位に浮上する。さらにヘアピンの入り口で小田が内田をアウトから大外刈り。内田は一気に5位にドロップする。ダウンヒルストレートでは小田が田中の右サイドから並びかけて90度コーナーでインを取って3位の座を奪い取る。ここで失速した田中を内田が差し返して、ビクトリーコーナーで再逆転、内田4位。
ファイナルラップ、白崎は2秒以上のギャップで走り切り見事な優勝。2位にはデビューレースの迫が入り実力をアピールした。3位はファステストラップを出した小田が迫を0.151秒差まで追いつめて表彰台を獲得。第4コーナーで田中が内田のインから仕掛けてオーバーテイク、4位の座を奪回する。内田5位で6位にランキング2位の椎橋が上がっていて、この2者のうち前でフィニッシュした者がチャンピオンという状況に。ここは内田が踏ん張り5位のポジションを守り切ってフィニッシュ、64ポイント。椎橋6位63ポイントで内田のシリーズチャンピオンが決定した。
パルクフェルメにマシンを運んだ白崎はヘルメットを脱ぐと満足そうな表情を見せた。1年前に筑波でキャリア初優勝を飾った時は初々しい笑顔を見せていたが、1年経って鈴鹿岡山シリーズのタイトルを争うほどに成長し、風格さえ漂うようになった。12月3日はその鈴鹿・岡山シリーズ最終戦。タイトルを取って翌週もてぎでのS-FJ日本一決定戦に戻って来ると、力強く宣言した。
2023年スーパーFJもてぎ・SUGOシリーズはこれにて終了。シリーズチャンピオンは内田涼風。一昨年の佐藤樹に続いて里見代表率いる「RiNoA Racing project」がチャンピオンを輩出したことになる。
そして12月9-10日と同じモビリティリゾートもてぎでS-FJ日本一決定戦が行われる。長かった2023シーズンも大団円を迎えつつある。
Text: Junichi SEKINEPhoto: Kazuhiro NOINE
Mizue NOINE