5月4日朝に行われたFIA-F4選手権第2戦は、チャンピオンクラス8台、インディペンデントクラス1台からスタート前にリタイヤ届が提出されるという異例の事態が発生した。
この原因となったのが、今季から導入されたMCS4/24に搭載されるトムスTMA43エンジンのトラブルだ。
これについて、スーパーGTのレースディレクターであり、FIA-F4のドライビングスタンダードオブザーバーでもある服部尚貴氏が、これまでの経緯と今後の見通しについてメディアの質問に答えた。
問題が起きたのは今週に入ってから。公式予選日の前に行われた専有走行、そしてその前に行われたスポーツ走行において燃焼室内のピストンやスリーブにダメージが及ぶエンジントラブルが相次いでいる。公式予選や決勝においても同様のトラブルは発生しているとのことだが、同じ富士で3月に行われたスプリングトレーニングでは問題は発生していないという。
また、このトラブルはエンジンの走行距離に関係なく発生しており、エンジン本体というよりは電気系や制御系に起因するものではないかというのが服部氏の見解だ。
これを受けてGTAは第1戦の決勝終了後にエントラントを集めて緊急ミーティングを開催し、これまでの経緯を説明したという。
その結果、4日朝になってTGR-DC Racing SchoolとHFDP WITH B-max Racing Teamのメーカー系チームとPONOS RACINGから選手の安全を優先するという主旨でリタイヤ届が提出され、第2戦はチャンピオンクラス13台、インディペンデントクラス11台で戦われることになった。
配線の問題なのか、点火系のトラブルなのか、現時点で原因は特定できていないが、第2戦はECUの変更で混合比を5%リッチにし、回転数を300回転低くして燃焼室温度を下げる応急処置を行なって決勝レースを行った。
チーム側の要望として今大会を中止にする提案もあったというが、すでに第1戦決勝を実施していることもあり、ここで第2戦を行わないことは考えられなかったという。また、有効ポイント制にとの提案もあったが、JAFの地方選手権として行われているシリーズである以上、シーズン途中でのレギュレーション変更はGTA単独では行えないとの見解。
今後の行方については、原因の特定と対策が重要であり、それが判明しない時点で次大会の中止や延期を判断することは現時点ではできないが、FIAのスーパーライセンスポイントがかかるシリーズであることを考えると、中止ではなく延期の形で年間14レースという形は守りたいという。過去には熊本地震の影響でオートポリス大会が中止となった2016年や、コロナ禍で10月開幕となった2020年には1大会3レースというフォーマットを採用した前例もあることから、今回もそうした措置をとる可能性もありそうだ。
いずれにせよドライバーの安全にも関わる事案であり、早急な原因の究明と対策が待たれるところだ。
Text: Kazuhisa SUEHIROPhoto: Motorsports Forum