2019年4月27~28日/三重県・鈴鹿サーキット国際南コース/うすぐもり(ドライ)
エントリー30台 参加30台
国内カートレースの最高峰、オートバックス全日本カート選手権OKクラス。その2019シリーズが4月最後の週末に開幕を迎えた。レースシステムは今季も1大会2レース制。全5大会・10戦による選手権だ。ツバメが舞う季節だというのに、鈴鹿サーキットは大会両日とも予想外の冷え込みに見舞われている。そしてふたつのレースは、“想定外”が相次ぐ展開となった。
【第1戦】井本が“全車抜き”で初優勝、ダンロップに勝利をもたらす
今季のOKクラスは2018年のチャンピオン佐藤蓮と同シリーズ3位の名取鉄平が抜け、それと入れ替わりに10名のルーキーが加入、そのうち4名が14歳というフレッシュな顔ぶれだ。そして大会初日のクオリファイングプラクティスは、新時代到来を予感させる結果となった。コースレコードを更新してトップとなったのは、2年目の古谷悠河(TONYKART RACING TEAM JAPAN)。2番手はルーキーの渡会太一(Drago Corse)。3・4番手にも2年目の山田杯利(Team EMATY)とルーキーの佐藤凌音(INTREPID JAPAN CORSE)が続いた。王座奪還に意欲を燃やすスーパーGTドライバー佐々木大樹(TONYKART RACING TEAM JAPAN)は10番手だ。
タイヤウォーズの面から見ると、ブリヂストン勢がトップ10を占拠して下馬評通りの速さを実証。ダンロップ勢は、古谷と約0.5差で11番手の井本大雅(TAKAGI PLANNING)がトップ。一方、昨年に佐藤蓮のドライブでチャンピオンタイヤとなったヨコハマ勢は、三村壮太郎(Croc Promotion)の19番手が最上位、今季からヨコハマ勢に加入した野中誠太(ADVAN HIROTEX)は27番手と、低気温に苦戦している。
クオリファイングプラクティスに続いて行なわれた第1戦の予選ヒートでは、実績のあるドライバーが浮上。5番グリッドの高橋悠之(TONYKART RACING TEAM JAPAN)が3周で先頭に立ち、そのままゴールして決勝のポールを獲得した。2番手は山田。昨年の最終戦にデビューした“準ルーキー”の伊藤琢磨(FA-KART RT)が13番グリッドから10台を抜いて3番手に。佐々木も5番手まで浮上してきた。対して古谷は7番手、佐藤は13番手と順位を下げた。
一夜明けて大会2日目、前日よりやや寒さが治まったサーキットで、24周の決勝が始まった。先頭の座を争うマシンの群れは、高橋、山田、佐々木とラップリーダーを入れ替えながら、大きな塊のまま周回を重ねていく。残り10周になると、その中から佐々木と山田が抜け出した。だが、第1戦は佐々木と山田のマッチレースとはならなかった。ハイペースで追い上げを続ける1台のマシンが、ふたりに急接近してきたのだ。それは、予選でローリング中にトラブルに見舞われDNSとなった井本だ。
決勝で最後尾グリッド埋没と引き換えにほぼ新品のタイヤを履くこととなった井本は、20周目に3番手へ上がると、一気に佐々木と山田を捕捉。山田が21周目にトップを奪うと、井本はその翌周に佐々木を、さらに残り2周で山田を抜き去ってトップに躍り出た。山田は続いて佐々木と高橋にも先行を許してしまう。ラスト2周で後続を突き離した井本は、チェッカーを受けると右拳を高々と挙げ、感極まった様子で天を仰いだ。OKクラス3年目での初優勝は、ライバル全車を抜き去り、劣勢かと思われたダンロップにドライで1年7カ月ぶりの勝利をもたらす快挙だった。
2位は佐々木。3番手でゴールした高橋はコリドー違反でペナルティを課されて6位に降格。代わって最終ラップに山田をパスした大草りく(nutec.LCT brioly)が3位となって、ルーキー勢の表彰台一番乗りに。初勝利を確信して決勝に臨んだ山田は、4位の結果に茫然自失の表情だった。
【第2戦】予選でまさかのハプニング! 佐々木が貫禄の走りでウィナーに
第2戦の予選は、2番グリッドの渡会がスタート直後にスピン。ポールの古谷も大きく順位を下げ、2列目の山田と佐藤が1周目から抜け出す展開となった。佐藤は3周目に山田の前へ出ると、山田からのプレッシャーに耐えながら周回を重ね、トップのまま最終ラップを迎えた。FP-Jrクラスから飛び級でOKに上がってきた新鋭の決勝ポール獲得の瞬間に、場内の視線が注がれる。その直後……。
3コーナーを立ち上がりS字区間に入ったところで、佐藤のエンジンがいきなり息絶え、そこに山田が激突。14歳のルーキーの決勝ポール獲得も、絶好調の山田の初優勝も、この瞬間に夢と消えた。代わってトップでゴールしたのは、2年生の森山冬星(TEAM WOLF)。2~4番手に高橋、佐々木、宮下源都(TONYKART RACING TEAM JAPAN)とトニー・ワークス勢が続き、伊藤が5番手、冨田自然(Birel ART RAGNO Racing)が6番手で予選をまとめた。
決勝は、オープニングラップで森山が順位を下げ、替わって伊藤が4台抜きでトップに浮上、これに佐々木と高橋が続いた。2周目、佐々木と高橋が相次いで伊藤をパス。ここから佐々木と高橋は阿吽の呼吸のタンデム走行で3番手以下を引き離していく。やがて先頭集団2台と3番手以降のギャップは1秒以上に。レースは佐々木と高橋の一騎討ちだ。
高橋は後半勝負を目論み、佐々木の後を追う。だが、レースが折り返し点を過ぎると、佐々木が高橋との間隔をじわじわと広げ始めた。劣勢に耐えながらこの大会を戦ってきた佐々木は、シャシーを第1戦と違うものに替える判断が当たり、さらに決勝を前に下がった気温がタイヤにもマッチして、ようやく本来の調子を取り戻したのだ。残り8周、ふたりの差は1秒以上に拡大。勝負あった。ゴールの少し前にやっと“セーブモード”に切り替えた佐々木は、チェッカーを受けるとマシンの鼻先をピットウォールの方に向け、待ち受けるチームメイトに右手を振り上げて勝利を宣言した。
逆転優勝こそならなかったものの、高橋も2位獲得で安堵の表情をのぞかせた。3位には予選DNSで28番グリッドに沈んだ皆木駿輔(Croc Promotion)が入り、またもダンロップ勢が表彰台の一角に。第1戦のウィナー井本は17番グリッドから4位まで追い上げ、今回も上位フィニッシュに成功。木内秀柾(Birel ART RAGNO Racing)が4ポジションアップで5位に入賞し、ルーキー勢の最上位となった。
- 第1戦優勝・井本大雅のコメント
- 最後の最後まで勝てる手応えはありませんでした。トップの2台に追い付いてからは、ちょっとビビりながら抜きに行ったんですが、うまく前に出られました。予選を走れなかったのが心残りだけれど、勝ててうれしいです。
- 第2戦優勝・佐々木大樹のコメント
- 決勝は同じブリヂストン・ユーザーの中で速かった人たちが前の方にいなくて、いい展開になりました。天候のせいで思うようにテストができなかったけれど、最終的にブッチ切って優勝できてよかったと思います。
Photo: Y's PHOTO(Yoshiaki YOKOTA)
Y's PHOTO(Chiaki NUKUI)