2023オートバックス スーパーGT第1戦「岡山GT300kmレース」の決勝が4月16日、岡山県美作市の岡山国際サーキットで行われ、GT500クラスは23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が2021年の第3戦鈴鹿以来の優勝をものにした。GT300クラスは18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)が優勝。レースは2度のフルコースイエローとセーフティーカーラン、3度の赤旗が出る大荒れの展開で、規定周回の75%を僅かに超える62周で終了となった。
第1戦決勝は午後1時30分に岡山県警のパトカーの先導によるパレードランに続いてスタートした。天候は朝からスタート進行までは晴れていたものの、パレードラップが始まるや否や雨粒が時折路面を叩き始めた。
レース序盤はポールポジションのロニー・クインタレッリ(MOTUL AUTECH Z)と予選2番手の千代勝正(Niterra MOTUL Z)が後続を引き離していたが、牧野任祐(STANLEY NSX-GT)が予選8番手から猛烈な追い上げを見せ、1周目を4位で戻ってくると、3周目のヘアピンで国本雄資(WedsSport ADVAN GR Supra)を抜き去って3位に浮上した。この時点で2位の千代とは3秒282の差があったが、槙野はなおもハイペースで周回を重ね、7周目には3号車の0秒628後方まで迫ってきた。8周目にはその差が0秒447と牧野は完全に千代を射程に捉える。
しかし千代も巧みに周回遅れを利用して牧野を押さえにかかり、上位3台は僅差で周回を重ねていく。
その間に雨脚はどんどん強まり、スリックタイヤでの走行が困難な状態となったため、トップのクインタレッリは15周目にピットイン。ウェットタイヤに交換してコースに戻っていった。後続の車両も相次いでピットに戻ってきた。
続いて牧野も16周目にタイヤ交換を行ったが、ちょうどそのタイミングで片山義章(DOBOT Audi R8 LMS)が1コーナーでコースを飛び出したため、この日最初のフルコースイエロー(FCY)が宣言される。さらにタイヤ交換を行った石川京侍(GAINER TANAX GT-R)のタイヤが脱落してバックストレートにストップ。ピット出口でも青木孝行(RUNUP RIVAUX GT-R)がストップしてしまったため、トップが17周目に入ったところでセーフティーカー(SC)が導入された。
この間に天候は一旦回復。上空には青空が広がり始める。
19周目に入ったところでピットレーンがオープンとなり、ここまでスリックタイヤで我慢の走りを続けていた千代がピットへ。3号車はこのタイヤ交換に併せて燃料補給も行う作戦に出た。同じタイミングで国本とベルトラン・バゲット(MARELLI IMPUL Z)もピット作業を行なったが、この3台はピット出口で隊列の通過を待つこととなり、大きく後退してしまう。
この時点でトップに立っていたのは16周目にタイヤ交換を行った牧野。同じ周にピットインした笹原右京(Deloitte TOM'S GR Supra)が2位につけ、クインタレッリは3位に後退していた。
SCは22周目にピットイン。レースは23周目から再開となる。するとすかさず坪井翔(au TOM'S GR Supra)がクインタレッリをかわして3位に浮上、続いて松下信治(Astemo NSX-GT)、大嶋和也(ENEOS X PRIME GR Supra)らも相次いで23号車を抜き去り、クインタレッリは一時6位にまで後退するが、路面が乾き始めるのを待って反撃に転じ、25周目に大嶋と松下を次々に捉えて4位に浮上する。
坪井は笹原をも捉えて2位に浮上すると、28周目にはヘアピンで牧野を捉えてトップに躍り出た。牧野はペースが上がらず、29周目に笹原に捕まって3位に後退すると、クインタレッリにも抜かれてしまった。
さらにここで16周目のタイヤ交換がFCY中に行われたということで、100号車と37号車に対し、60秒間のペナルティストップという裁定が下る。これにより2台は勝負権を失った。
クインタレッリは31周目の2コーナーで笹原を抜いて2位に浮上すると、その後も坪井との差を縮めていき、41周目の1コーナーで大外から坪井を抜き去ってトップを奪い返した。
その後方では大嶋と大湯都史樹(ARTA MUGEN NSX-GT)が相次いでピットイン。ドライバー交代とスリックタイヤへの交換を行った。この辺りから続々とドライバー交代を行うチームが相次ぐ。
44周目には千代もピットイン。高星明誠に交代するが、最初のピットストップで燃料を補給していたこともあって他のチームより遥かに短い作業時間でコースに復帰、一気に順位を挽回することに成功した。
2位の坪井は45周目に宮田莉朋に交代、トップのクインタレッリも46周目に松田次生に交代する。47周を終えた時点での松田と宮田の差はわずか0秒783の接戦だ。
しかしここで山内英輝(SUBARU BRZ R&D SPORT)がヘアピンでコースを飛び出したために2度目のFCYが宣言される。すると再びコースには雨が降ってきた。
FCYは50周終わりで解除となったが、その直後にアトウッドカーブで元嶋佑弥(JLOCランボルギーニGT3)とリアン・ジャトン(PACIFICぶいすぽっNAC AMG)が絡むアクシデントが発生し、2度目のSCが導入されることとなった。
この間隙を縫って松田はピットへ飛び込み、ウェットタイヤへの交換を行った。
コース上の雨は一層激しさを増し、コースの近隣へは落雷が認められたため、55周目に赤旗が提示されてレースは中断された。
午後3時35分に走行はSCの先導で再開され、56周目のピットオープンと同時に両クラスの車両が一斉にタイヤ交換を行ったため、50周目の交換で6位まで後退していた23号車は再びトップに。しかしここでタイヤ交換を行った36号車が作業ミスから左前輪の脱落を起こして2コーナー外側でストップしてしまう。
そして天候は回復の兆しを見せなかったことから隊列が61周目に入ったところで2度目の赤旗が提示されることとなる。
その後、午後4時20分に走行は再開されたものの、63周目に入ったところでまた赤旗が出されてレースはストップした。
結局この3度目の赤旗を持ってレースは終了との決定がなされ、この時点でトップにいた23号車MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が開幕戦の勝者となった。2位は3号車Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)、3位にはシャシー交換による5秒ストップペナルティをレース序盤に受けながらも、早めのタイヤ交換で順位を挽回してきた8号車ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が獲得した。
なお、スープラ勢の最上位は8号車と同時にスリックへの換装を行った14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)の4位だった。
GT300クラスは、ポールポジションからスタートした65号車LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)がレース前半をリードしたが、18号車UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)が予選18番手と後方からのスタートながらも、天候の変化にいち早く対応し、13周目に行ったウェットタイヤへの交換で4位に浮上すると、37周目にもスリックタイヤへの交換をいち早く行ってトップに立ち、開幕戦を制した。小林とチームにとっては2018年の開幕戦岡山以来の2勝目で、NSX GT3での初勝利。小出にとっては嬉しいデビュー戦での勝利となった。
2位はポールスタートの65号車。244号車HACHI-ICHI GR Supra GT(佐藤公哉/三宅淳詞)が3位で開幕から表彰台を獲得した。
次戦の舞台は静岡県小山町の富士スピードウェイ。ゴールデンウィークに開催される人気の大会で、毎年多くの観客を動員する。久々に制限なしのレース開催となる今年はコロナ前の賑わいが戻ってくることが大いに期待される。
第2戦は5月4日決勝。今年最初の450kmレースだ。
Text: Kazuhisa SUEHIROPhoto: Katsuhiko KOBAYASHI