JAF-F4地方選手権シリーズ第6戦決勝は7月24日(日)に富士スピードウェイで開催され、ポールポジションからスタートした佐々木孝太(スーパーウインズ&ISP)が一度もトップを譲る事なくポール・ツー・ウイン。シリーズ4勝目を飾った。
真夏の富士スピードウェイは朝から晴れ上がり、気温こそ30度あたりだが日差しは強く、観客も日陰を求めてスタンドの上の方に集まっている。
決勝までのインターバルの間、3台をエントリーさせているハンマーレーシングのテントでは予選に出走できなかったISHIKEN(HMRハンマーR☆ハヤテ)のマシンと、ジェントルマンクラス2番手のタイムを出した河野靖喜(ハンマーレーシング☆RISING)のマシンが揃ってエンジントラブルに見舞われていて、チーム代表で自身は予選2番手のハンマー伊澤(令和雪合戦ハンマーR☆ハヤテ)は予選終了直後からレーシングスーツをツナギに着替えてその対処に追われていた。ISHIKENのマシンはエンジンが始動するものの、回転を上げると停止してしまう問題。一方河野の方は走行中に時折エンジンが一瞬だが止まってしまう問題だそうで、いずれも電気系のトラブルと目星をつけてパーツを交換。どちらも決勝開始前には対処を終えてISHIKENは最後尾からの出走が認められた。河野の方は走行中に起きる症状なので、走ってみない事にはわからない、と話してマシンに乗り込んだ。
日差しが照り付けるスターティンググリッドで、ポールポジションの佐々木を先頭に午前11時10分全車がグリッドに整列。佐々木の隣は伊澤、セカンドロウは佐藤樹(MARUSAN★ミスト)、金井亮忠(チームNATS・正義・001)と並んでレッドライトが消灯して13周で争われる決勝がレーススタート。
スタートは伊澤の反応がやや遅く、逆に好スタートを決めたのが金井で、伊澤と佐藤をかわして2位でTGRコーナーへ進入。伊澤は佐藤にも抜かれて4位に後退、本人も課題だと言っているスタートを失敗してしまう。
佐々木は初手から後続を引き離しにかかり、100R~ヘアピンとギャップを拡げ、後方では佐藤が金井にプレッシャーをかけダンロップコーナー進入ではインから仕掛けるが、これは金井が抑える。
1周目を終えて佐々木は2位金井に1.427秒の差をつけてコントロールラインを通過。金井と3位佐藤は0.334秒差とテール・ツー・ノーズ状態。4位に落ちた伊澤だが0.777秒差とこの2台に食らいついている。5位はポジションキープの新倉涼介(ファーストガレージ&Sウインズ)、6位も安井和明(NAVY★RK-01)がキープし、その後方にはペナルティで9番グリッドからスタートした黒沼聖那(ファーストガレージ&Sウインズ)が2台をかわして7位に浮上している。
早く佐々木を追いたい佐藤は 2周目のTGRコーナーで金井のインに飛び込むとオーバーテイクに成功、2位に浮上する。しかし金井は佐藤を逃さずリヤに張り付いて走り、ストレートに戻ってくると佐藤の左サイドから並びかけコントロールライン上では0.144秒差で通過、TGRコーナーではアウトから佐藤に仕掛けるがここは佐藤が守り切る。伊澤はこの2台の攻防を見守る形で0.8秒後方につける。その後ろでは黒沼がダンロップコーナーで安井を攻略して6位に進出。安井は7位に下がったがジェントルマンクラスのトップを維持、クラス2位には8番手スタートから河野をかわしたKAMIKAZE(スーパーウインズ&ISP)がつける。
トップ佐々木は後方での争いをよそに2周目2.014秒までギャップを築くが、2位に上がった佐藤がこれを詰め3周目には1.865秒差。しかし0.3秒差で金井が追い、さらに伊澤もここまでのファステストラップの1分45秒749を出して金井の0.4秒後方でチャンスを狙っている状態。佐藤は防戦に追われる形になり、4周目には佐々木を2.193秒差まで逃がしてしまう。続く5周目に佐々木は45秒602のファステストラップを出して2.490秒差。佐藤~金井~伊澤は0.56秒差と3台が連なった状態で走行している。 スタートから5位の座を守っていた新倉だがチームメイトの黒沼の勢いが勝っており、4周目に0.4秒差に迫ると5周目に順位が入れ替わり黒沼5位、新倉6位。さらに安井が7位でジェントルマンクラスのトップ、これを3周目にKAMIKAZEをかわした河野がクラス2位で追走している。
6周目は佐藤が僅かにギャップを削り2.281秒差。佐々木と佐藤は最高速が237.8km/hと互角で佐藤はコーナーで頑張るしかない。一方ストレートスピードが速いのが伊澤のマシンで最高速は240.0km/hをマーク、234.2km/hと伸びない金井をストレートでオーバーテイク、3位にポジションアップする。
7周目、佐々木は1分45秒302とファステストラップを更新、佐藤とのギャップを2.481秒に戻すとさらにペースを上げて8周目2.803秒、9周目3.232秒と突き放しにかかる。佐々木を追いたい佐藤だが後方には今度は伊澤が接近し8周目で0.634秒差とする。一方4位に落ちた金井は次第に伊澤との差が拡がり9周目で2秒近く離されて、逆に5位に上がった黒沼が、8周目2.6秒、10周目2.1秒とじわじわ接近している。
佐々木は10周目に1分45秒172とこの日のファステストラップを出すと、佐藤と3.7秒差として後はギャップをコントロールしている印象。佐藤も自己ベストを出して追うが差は縮まらない。対して3位伊澤が再び佐藤に接近し、12周目の第3セクターで佐藤のリヤを捉えるが最終コーナーでは佐藤が速く、0.546秒差でコントロールラインを通過、ファイナルラップに突入する。ストレートエンドでは伊澤が佐藤の背後につけてTGRコーナーに進入するがそこからは佐藤の加速がよく伊澤を突き放す。
佐々木はスタートから一度もトップを譲らないポール・ツー・ウインで完勝。佐藤に3.92秒の差をつけてチェッカードフラッグを受けた。佐藤は序盤でつけられたギャップを縮めることができず2位、最後まで佐藤にプレッシャーをかけ続けた伊澤は0.5秒届かず3位となった。4位争いは次第にペースが落ちた金井を勢いに乗る黒沼が追い詰める展開になったが、金井がぎりぎりでしのぎ切り0.3秒差で逃げ切った。黒沼5位、新倉が6位。
安井を河野が追う展開に終始したジェントルマンクラスは安井に軍配があがり総合7位でクラス優勝。河野は1.6秒差で総合8位クラス2位、そこから11秒差でKAMIKAZEが総合9位クラス3位となった。
■決勝後のコメント
- 優勝 6号車・佐々木孝太(スーパーウインズ&ISP)
-
「結果的には(後続が)離れたのでよかったですけど、スリップつかれるとつらいなと思っていたので、なるべく1周目にプッシュしてスリップ圏内から離れるように序盤にしたいな、と思っていました。中盤思いのほかペースが上げられなくて、あまり差がなかったので、ベストラップ出そうと思って後半またプッシュして、(ファステストラップが)出たのですけど、その後結構ヤバい時があったのでこれでもう(タイムアタックは)やめておこうと思っていました。(外から見ているほど楽勝ではなかった?)そうではないですし、僕の中でも最後まで全開で走ろうって気持ちがあるので、(後続を)どれだけ離そうと最後のラップまで楽だってことには自分でもしないようにと決めていますし、あの距離だと一発ミスをすればすぐに追いつかれる距離なので、最後まで気を抜かない様に意識していました」
- 2位 5号車・佐藤樹(MARUSAN★ミスト)
-
「(佐々木選手は追いきれなかった?)そこまでのペースがなかったですね。スタートちょっとミスしてしまって、それが大きかったなと思います。(金井先生や伊澤選手が入れ替わり攻めてきて大変だった?)そうですね。マシン的には、練習の時よりは格段によくなりましたが、ドライビング的にまだダメなとこがあるので修正していきたいです」
- 3位 19号車・ハンマー伊澤(令和雪合戦ハンマーR☆ハヤテ)
-
「またスタートが…、という感じでホントどうしようもないですね。ただ練習走行の時はストレートスピードが伸びている感じがして、最終コーナーうまくついて行けば(勝負になる)という感じがあったのですが、今回決勝中は全然ダメでしたね。まわりがセッティング変更したのかわかりませんけれど負けている感じでした」
- 4位 72号車・金井亮忠(チームNATS・正義・001)
-
「スタートがうまく決まってというか、相手がうまくいかなかった人もいるようで、僕は2番に上がってという感じでしたけど。1周目2周目のタイヤが暖まっていない間は、このクルマはかなりダウンフォースがあって、有利だったのですけど、やっぱりペースが上がって来ちゃうと、後半は厳しかったですね。(前日からのセッティング変更は当った?)いい所もあれば悪くなった所もあるし、なかなかエアロバランスとの兼ね合いも難しいところで、一概に「よくなったか?」と言われるとなんとも言い難いです(笑)」
- 5位 92号車・黒沼聖那(ファーストガレージ&Sウインズ)
-
「前日の練習走行まではペースもよかったので、イケるかなと思っていたのですけど、今日の予選から、エンジンなのかセンサーなのか分からないのですが、ストレートのパワーがなくて、レースは厳しいかな、と思っていました。決勝では出来る限りの対策をして追い上げられた、というところです。(金井先生には届かなかった?)予選に出たトラブルもあまり解決していなくて、金井先生も同じようにペース上がっていなかったのでワンチャンスあるかな、と思いましたけど、行ききれなかったです。1回ノーズは入れたのですけど、金井先生も(ディフェンスが)上手なのでダメでした。(今年は惜しいトラブルが多い?)ちょっとお祓いに行きたいですね(笑)。そんな状況でも十勝では表彰台に乗れたので、今回もそのペースで行きたいな、と、練習まではそういう調子でしたけど、予選でトラブルが出たので、原因を見つけて、またリベンジしたいです」
- 6位 6号車・新倉涼介(ファーストガレージ&Sウインズ)
-
「黒沼先輩にやられちゃいました。もっと近い所にいれば、最後の黒沼選手と金井先生のバトルに加わっていけたので、そこが悔しいです。初めて走るコース、マシンパッケージで、最低限は走れたのでそこは良かったと思うのですけど、オープニングラップがよかっただけに、ちょっと、最後のペースが自分でもがっかりという感じです。(思ったほどペースが上がらなかった?)リヤタイヤのグリップがあまりなくて、走り始めからずっと(グリップが)ない感じで、そこからさらにタレてきちゃって、後半登りセクションがペース上げられなかったです」
JAF-F4第7戦、第8戦は8月20日、21日に岡山国際サーキットで開催される。JAF地方選手権の前半6戦を終えてここまで4勝の佐々木が107ポイントとして63ポイントで2位の黒沼に大差をつけているが、レースはまだ6戦あり、12戦中10戦という有効ポイント制の兼ね合いもありシリーズの行方はまだわからない。
Text & Photo: Junichi SEKINE