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全日本F3000

F3000:CABIN-F3000第1戦鈴鹿リリース

1992年全日本F3000選手権             1992年3月11日
RACE INFORMATION
                       キャビン・レーシング事務局
           《第1戦 鈴鹿》
        「行くべきか、行かざるべきか」
        キャビン・アロー、トリプル入賞
  F3000 カーナンバー19 星野一義 予選A組3位 決勝2位
  F3000 カーナンバー 3 黒沢琢弥 予選B組2位 決勝5位
  F3    カーナンバー19 高村一明 予選A組2位 決勝4位
 キャビン・レーシングチームにとては苦しいレースだった。実績ある昨年型の
ローラも星野自身も絶好調にあった。しかし、公式予選でタイムアタックのタイ
ミングを逃し、スターティング・グリッドは3列目。決勝レースでスタートダッ
シュをきめて3位へと進出したものの、ロス・チーバー選手は92年型のレイナ
ードで首位を疾走していた。「思い切って勝負をかけたい。ぜも王座を手に入れ
るためにはしっかり完走して、選手権ポイントを確保することも必要だ」。開幕
戦の鈴鹿サーキットを走りながら、星野の心は微妙に揺れていた。
 一方、昨年のチャンピオンチームからの緒戦を迎えた黒沢琢弥はスタートに失
敗、せっかくの2列目のグリッドから後退して群れの中に取り込まれていた。彼
はライバルと同時に緊張と焦りとも戦わなければならなかった。
 1992年全日本F3000選手権・開幕戦が、3月7日(土)、8日(日)、
三重県・鈴鹿サーキットで開催された。キャビン・レーシングチームは、このレ
ースにキャビン・レーシングwithインパルより星野一義、キャビン・レーシング
チームwithヒーローズより黒沢琢弥を戦線に送り込んだ。
《体 制》
 キャビン・レーシングチームwithインパル
  ドライバー : 星野一義
  監   督 : 金子 豊
  マ シ ン : ローラT91-50/無限
 キャビン・レーシングチームwithヒーローズ
  ドライバー : 黒沢琢弥
  監   督 : 田中 弘
  マ シ ン : ローラT91-50/DFV
《マシン》
 1992年シーズンに向けて、星野は英国レイナード社製レイナード92D/
無限を、黒沢は日本の童夢製DOME F103/DFVを準備した。しかし、
どちらも十分に熟成する時間がなかったため、開幕戦は実績のある昨年型のマシ
ンで戦う決断を下した。
 両チームとも、ほぼ昨年の仕様をそのまま引き継いでいるが、カラーリングは
一部変更された。
《公式予選》
 第1回目の公式予選セッションは、晴天・寒風の下、ドライコンディションで
行われた。公式予選A組から出走の星野はセッション終了間際にソフトタイヤを
装着してタイムアタックを行うが、1分44秒671のA組3位に留まった。
 一方、昨年のチャンピオンチームであるキャビン・レーシングチームwithヒー
ローズの黒沢は、公式予選B組からの出走。セッション終了5分前にソフトタイ
ヤでタイムアタックに入り、1分44秒649を記録してB組2位につけた。
 午後、星野は2セット目のタイヤにミディアム・タイヤを選択してタイムアタ
ック。1分43秒960を記録してB組2位の座を守った。
《談 話》
星野一義 : 1分44秒089 A組3位
「車の調子はバッチリなんだ。午前中の予選では、タイムアタックに入ろうとし
たストレートの終わりで、ピットアウトしてきたマシンにひっかかってしまった。
それで途中でペースを落としてタイヤの消耗を防ぐ走りに切り替えた。うまくい
けばそのタイヤでもう一度タイムアタックできるからね。午後は2セット目にミ
ディアム・タイヤを選んでタイムアタックに入ろうとしたんだが、ストレートで
またマシンがピットアウトしてきたのでアタックに入れなかった。もうそこでア
タックをやめようと思ったんだけど、気を取り直してゆっくりもう1周してアタ
ックに入った。でも、やはり途中でタイヤの消耗が進んで、44秒台が精一杯だ
った。調子はいいのに、決勝レースは楽ではなさそうだなぁ」
黒沢琢弥 : 1分43秒960 B組2位
「いいクルマといいタイヤといいエンジンがあってのポジションですよ。ドライ
バーなんか、そんなに急に腕が上達するものではありません。1回目の予選では、
スプーンを抜けたところでタイヤを使いきってしまったので、タイムが伸びなか
った。『たら・れば』を言っていたらいけないけれども、43秒台には入れるつ
もりでいた。テストのときに比べるとコンマ9秒落ちていますから。本番でいつ
もの力が出せなかったのは、完全にぼくの責任です。明日はとにかくミスしない
で最後まで走りきることを目指して頑張ります」
《決勝レース》
 決勝で星野が見せたスタートは絶妙だった。星野は3列目外側から思いきりイ
ンへ切りこんで加速、服部選手に並びかかった。1コーナー手前で服部選手のイ
ンに入りこみ、一挙に3位へと進出する。一方、黒沢はアクセルのコントロール
に失敗、グリッド上で後輪をホイールスピンさせて大きく遅れをとった。結局1
周を終わったときの順位は星野3位、黒沢6位。
 その後、レースは単調に進んだ。星野は12周目にヘアピンでバイドラー選手
のインに飛び込み2位に進出したが、この時点でトップ、チーバー選手とのタイ
ム差は18秒近くあり、残り周回数を考えると星野の首位奪回は難しい状況だっ
た。星野は首位のチーバー選手とほぼ同じペースで周回しを続けたが、順位を入
れ替えることなく2位でフィニッシュした。
 黒沢は、落とした順位を挽回するために2周目の130Rで勝負に出た。5位
の鈴木選手のインに飛び込もうとしたのだ。しかし黒沢はコースのワダチに入り
こんで路面の凹凸にマシンの底部を激しくうちつけてしまい、操縦性を狂わせて
しまった。その後、黒沢は鈴木選手を追いかけ続けたが強いオーバーステアに苦
しんで届かず、27周目の180Rで、後方から追い上げてきた中谷選手にかわ
されて7位へ後退してしまった。しかし、レース終了間際のアクシデントにより、
上位2台がレースから脱落したため、黒沢は最終的に5位でチェッカーを受けた。
耐えた黒沢は、キャビン・レーシングチームでの初レースでポイントを獲得し、
第2戦以降に期待をつないだ。
《談 話》
星野一義:
「スタートは、落ちついていたからうまくいったと思う。それでバイドラー選手
の後ろにつけたんだけど、そのうちチーバー選手が逃げていくのがわかった。で
も、ここで無理してバイドラー選手を抜いても、チーバー選手のコンディション
を考えると、それに対抗するのは無理だと思えた。それでも思いきり勝負をかけ
たかったんだ。でもチームからは、しっかり完走してポイントを捕ってくれ、と
指示をもらっていたし、板挟みになって考え込んでしまったよ。
 必死になって自制したけれど、やっぱり我慢できなくなって、バイドラー選手
にはけっこう強引な勝負をかけてしまったけれどね。チームのみんなは2位入賞
を喜んでくれあ。確かに予選の失敗を考えればいい結果だったかもいれないけれ
ど、ぼくはやっぱり悔しくてしかたがないよ。こういう悔しさがあれば、ぼくも
まだまだやっていけるね。次回の富士までには新しいマシンを熟成させて、チー
バー選手にきっとお返しするよ」
金子 豊監督:
「2位に上がった時点で大きな差があったので、これはしようがない、と思った。
チームとして、昨年型の91を選択したのが失敗だったかどうかはわからない。
チーバー選手のタイムを見ると、新しいレイナードに可能性を感じるけどね。で
も、リタイヤが続いていた鈴鹿でのレースで2位入賞という結果が残ったのだか
ら、よしとしなければいけないだろう。次の富士までには92年型のローラとレ
イナードを十分に熟成させて、速い方を選ぶつもりでいる」
黒沢琢弥:
「スタートでは緊張してしまった。あっと思ったらホイールスピンさせて出遅れ
てしまった。今日のレースは、あれがすべてでした。監督にスタートは慎重に行
け、と言われていたのに、すべてをぼくは台無しにしてしまった。スタートに出
遅れたものだから、思い切って鈴木選手を130Rで抜こうとしたんですが、そ
のとき路面のワダチに入りこんでマシンの底を思いきり打ってしまった。そうし
たら、強いオーバーステアが出るようになって、ペースを上げることができなく
なってしまいました。スタートでミスしなければ、あんな無理をしないでも済ん
だのだから、これもぼくの責任です。せっかくいい道具を準備してもらったのに、
チームのみんなに申し訳なく思っています。でも次のレースでは頑張りますよ」
田中 弘監督:
「予選のポジションは満足すべきものだったと思う。琢弥は非常に器用なドライ
バーだと評価している。タイヤやエンジンに負担をかけずにナチュラルな走りが
できる。敢えていうならば、中嶋悟に似たタイプの才能だと思う。テストでは、
最前列に並んで当然のタイムで周回していた。それが2列目になったのは、やは
り平常心を失っていたのだろう。これは経験不足のせいだ。
 しかし、ポイント獲得を単純に喜ぶ気にはなれないよ。公式予選でも、決勝レ
ースでも、今回残った結果以上の速さで走ることができるはずの道具を準備して
琢弥に与えた。しかもスタートは慎重にいけ、といってきかせた。それで失敗し
たのだから、反省点は大きい。その後ペースが上がらなかったとかタイムが安定
しなかったとかは、スタートで遅れてしかも無理をした琢弥の責任であって、言
い訳にすぎないよ。落ち着いて、言った通りにやっていればもっと上位でしかも
速いペースで走れたはずなんだから。
 新しいマシンには期待している。まだ少ししか走らせていないけれど、童夢は
いいマシンだと思う。これの熟成を進めれば、レースの先頭をどんどん走ること
ができるはずだ」
 なお、併催された全日本F3選手権レース・第1戦にキャビン・レーシングチ
ームから出場した高村一明は、ラルトRT34に乗って予選総合3位からスター
ト、レース中盤まで3位を快走するが、マシンにアンダーステアが出てしまいポ
ジションを4位に下げてしまう。その後リヤカウル脱落、エンジントラブルを問
題が続いたが、4位でチェッカーを受けて入賞を果たした。
高村一明:
「マシンにトラブルが出てしまったが、新チームのデビュー戦ということもあり
頑張った。ライバル達もみんな速くて大変だけれど、できるだけ早く表彰台に上
がれるよう頑張ります」
  提供:キャビン・レーシングチーム事務局


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