遂にジンクス破れる!
2009年スーパーGT第5戦「SUGO GT 300kmレース」は、#1MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・
トレルイエ組)がGT選手権におけるニッサン勢として初の勝利を勝ち取った。
GT300クラスは#33HANKOOK PORCHE(木下みつひろ/影山正美組)が第2戦鈴鹿に続いて今季2勝目を上げた。
(天候:晴れ>雨>晴れ コース:ドライ>ウェット 観客動員数26,000人)
全日本GT選手権が発足してから16シーズン。途中名称はスーパーGTとなり、全日本選手権から国際格式のシリーズ戦となったが、この間、
ニッサン勢がただの一度も勝てないサーキットがあった。それがこのスポーツランドSUGOだ。
GT-Rがあれほどの強さを見せた昨年でさえ、SUGOはTAKATA童夢NSXが勝利している。
そのため、「菅生には魔物が棲んでいる」とさえ言われるほどだった。
しかしその魔物をブノワ・トレルイエの激走がついに打ち破ったのだ。
決勝スタートは午後2時。
ホールショットを奪ったのはポールスタートの#3ハセミGT-Rだったが、その後中々ペースが上がらず、2位の#6エネオスSC、
3位の#24HIS GT-Rらが次第に接近していき、一時は上位5台が団子状態でトップを争う展開となった。
そして遂に9周目、最終コーナーで周回遅れに詰まった#3ロニー・クインタレッリを#6ビヨン・ビルドハイムが抜き去った。
トップに立ったビルドハイムは快調にペースを上げ、2位以下を引き離しにかかるが、25周目に入った辺りから懸念されていた雨が振り出した。
レース距離の3分の1となる27周目が近かったこともあって、ここで各車相次いでピットイン、
レインタイヤ装着に併せて給油とドライバー交代も済ませることとなった。
ここから6号車勝利のシナリオが狂い始めた。
30周終わりで交代した伊藤大輔の刻む、1分30秒台のラップタイムは他と比べて決して遅いものではなかったのだが、
その後方から伊藤を2秒近く上回る凄まじい勢いで追い上げているドライバーがいた。
#1モチュールGT-Rを駆るトレルイエだ。
ピットストップが相次いだ26周~30周の混乱をうまく凌いで2位に浮上したモチュールGT-Rがチョイスしたタイヤはインターミディエイト。
このため、レース中盤までは苦しい走りが続き、一時はエネオスSCに12秒以上もの大差をつけられたものの、
レースが50周を過ぎた辺りで雨は止み、徐々に路面が乾き始めたことで一気に形勢が逆転し、みるみるうちにトップとの間隔が縮まっていった。
60周を過ぎる頃にはGT300クラスを中心にスリックタイヤに履きかえる車両が続出、 ポールスタートながら順位を落としていたハセミGT-Rもその中の1台だった。
こうした状況の中、トレルイエは遂に65周目に伊藤に追いつき、馬の背コーナーで最初のアタックを試みる。
しかし伊藤も簡単には順位を譲らない。最終コーナーではあわや接触の場面もあったが、トレルイエは落ち着いてチャンスを待ち、
66周目の1コーナーでアウトから抜き去っていった。
トップに立ったトレルイエはその後もペースを上げ、スリックで走行する3号車をも凌ぐ1分25秒台まで記録しながら後続を突き放し、 最後は2位に21秒もの大差をつけてニッサン勢のGTにおけるSUGO初勝利を見事達成してみせた。
また、これによりモチュールGT-Rは20ポイントを獲得、シリーズポイントを43に伸ばし、13位に終わった#24HIS GT-R、7位に終わった#36ペトロナスSCを抜き去ってランキングトップに躍り出た。
GT300クラスは、ポールスタートの#81ダイシンフェラーリが序盤から着実に2位以下を引き離し、ほぼ独走状態に持ち込んだが、
こちらも天候の変化に翻弄される結果となった
降り出した雨に対応して31周終わりでウェットタイヤを装着したダイシンフェラーリに対し、
#33ハンコックポルシェの木下は残り周回数や空の明るさを見てインターミディエイトを選択。
このため、ピットアウトして暫くは、強い雨にペースを上げられず、一時クラス6番手まで後退するものの、雨が止み、
コースが乾き始めた50周過ぎから俄然勢いを取り戻し、#46エスロードZ、#11ジムゲイナーF430、
#26タイサンポルシェらを次々に抜き去って一気に3位まで順位を戻すと、
59周目には#2紫電をも攻略して一気にダイシンフェラーリに迫った。
反対に終盤ペースの落ちたダイシンは抵抗する余地もなく、ハンコックポルシェは見事トップを奪い去り、第2戦鈴鹿以来、
今シーズン参戦2戦目をまたしても勝利で締めくくった。
木下/影山組の次のチャレンジは第7戦富士、その次は最終戦もてぎを予定しているという。
次回第6戦は鈴鹿サーキット。
伝統の1000kmレースとはいかなくなったが700kmの長丁場、8月23日決勝だ。
Text:Kazuhisa SUEHIRO