SUPER GT

SGT:第6戦富士 Exe ASTON MARTIN、多重トラブルを乗り越えて、振り返れば5度目の完走 (Arnage)

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September 7th Qualifying
  • 天候:曇り 路面状況:ドライ
  • 気温:Q1 開始時25℃→Q2 終了時25℃ / 路面温度:Q1 開始時33℃→Q2 終了時30℃
  • 入場者数:19,500人

gt_r06_arnage-02.jpg  夏の祭典Suzuka1000kmレースが終わるとSUPER GTのシーズンもいよいよ終盤戦となります。前回の富士500kmレースでは8Lapで無念にもリタイアし、「今度こそ」との思いで臨んだ今回の富士ラウンド。御殿場はArnage発祥の地であり、富士スピードウェイは鈴鹿とは違った意味での思い入れのあるコースであるだけに、チームの意気込みも高く、車両も満足のいく仕上がりとなりました。

 天気予報は雲と傘マークの並んでいた週末でしたが、予選日は時折日も差す思わぬお天気となりました。雄大な富士山こそ厚い雲に覆われていましたが、午前中の公式練習はドライコンディションで安岡選手からスタートしました。しかし、4Lap目のストレートで左フロント側のタイヤがパンク、そのまま安岡選手は第一コーナーでコースアウトして縁石に引っかかりながら車両をストップさせました。

 安岡選手に大事はなく、そのままピットに戻ってくることができましたが、このアクシデントにより車両はフロントバンパーとスプリッターを大破。チームは車両をピットに入れて破損個所に応急修復を試み、現行の規則では予選に出走するには二人のドライバーのタイムが必要なため、急いで加納選手に交代して走行を再開しました。しかし車両の振動が大きく、加納選手はタイムを記録するためだけの走行となり、わずか3Lapで走行を終えることになりました。

gt_r06_arnage-03.jpg  予選は定刻14時からスタート。予選を走行できるまでに修復された車両で、まずはQ1を安岡選手が担当し、4Lap目に1’40.640のベストラップを出す好走を見せましたが、1分40秒台に7位以下9台のマシンがひしめくハイレベルな戦いとなり、わずか0.2秒及ばずQ2進出はなりませんでした。

 なお300クラス予選の結果は下記のとおりとなりました。

  • P1 #55 ARTA CR-Z 高木真一 / 小林崇志
  • P2 #3 S Road NDDP GT-R 星野 一樹 / 佐々木 大樹
  • P3 #16 MUGEN CR-Z GT 武藤英樹 / 中山友貴
  • P17#50 Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒

September 8th Race Day
  • 天候:くもり時々小雨 路面状況:ドライ
  • 気温:29 度→24 度(レース終盤)/ 路面温度:35 度→26 度(レース終盤)
  • 入場者数:32,800人

gt_r06_arnage-04.jpg  前日よりも雲が厚く9時からのフリー走行直前には一時雨脚が強くなるほどのコンディションのなか、フリー走行はウェットタイヤで安岡選手からスタート。ところがタイヤが温まる暇もなく2Lapで車両は突然エンジンをストップし、最終コーナー近くで停止したまま動かなくなってしまいます。

 チームは車両をどうにかピットまで戻しましたが、午前中の走行を断念、決勝に向けて原因の究明と修復に取り組むことになりました。当初燃圧が上がらないことからフューエルポンプの異常が疑われ、部品の交換を試みましたがトラブルの解決には至らず、また、ギアのポジションセンサーの作動異常という別の重大なトラブルが出ていることも判明、チームは決勝間際になってセパンラウンド以来の多重トラブルに直面しました。

 決勝まで2時間半を切っているタイミングで、チームは原因箇所を特定するためミッションを降ろすことを決め、ギアのポジションを目で確認、原因究明を試みました。結果、ようやく燃圧の症状はフュエルプレッシャーセンサーの作動異常、またギアのほうはギアポジションセンサーの断線と判明。

 しかしこの時点で時計はすでに12時をまわっており、車両をグリッドに送り出せるタイムリミットまで1時間を切っていたため、一時はチームもピットからのスタートを覚悟しました。

gt_r06_arnage-05.jpg  12時50分、スタート進行が開始。他チームが次々に車両を送り出し8分間のウォームアップ走行が進行する中、メカニックの一秒を争う懸命の作業が続きます。その頑張りが奏功し12時58分、ウォームアップ走行の終了直後作業が完了し、文字通りギリギリのタイミングで、車両をグリッドに送り出すことができました。

 まぶしいほどの秋空の下ドライコンディションで定刻14時にフォーメーションスタート。ステアリングを握るのはセパン以来ずっとスターティングドライバーを担当している安岡選手。

 直前までのトラブルがウソのように、車両は非常に安定して本来の高いポテンシャルを発揮し、安岡選手はスタート直後の混戦で一時ポジションを落としましたが、すぐに追い上げて1分42~43秒台のペースで順調に走行、ポジションも一つまた一つと上がって15Lapで12位まで浮上してきました。

 19Lap目、32号車のタイヤがバーストしてクラッシュするアクシデントが発生してセーフティーカーがコースイン。ピットレーンオープンになったタイミングで他チームが次々とピットインする中、チームは安岡選手の周回を見守ります。空模様は次第に怪しくなって27Lapには小雨が降りだすバッドコンディションとなりましたが、安岡選手は37Lapのところで1'42.194のベストラップを出すなど最後まで好調をキープし、40Lapになったところで加納選手にステアリングを委ねました。

gt_r06_arnage-06.jpg  このピットインでチームは給油とリアタイヤのみのタイヤ交換を行い、車両はコースへと戻っていきました。加納選手は多発するトラブルのため前日の公式練習以来ほとんど走行するタイミングがなく、走り出しにはスピンしてコースアウトする場面もあったものの、その後は周回を重ねるごとに本来の走りを取り戻していき、残り7Lapのところで順位を争っていた0号車がピットインしたため18位に浮上しました。

 その後もペースを落とすことなく、最終周回となる60Lap直前の59Lap目に1'43.692と自身のベストラップを記録するなど好調をキープする走りを続けて見事完走し、18位でチェッカーを受けることができました。

gt_r06_arnage-07.jpg  今回の富士ラウンドでは、土曜日の公式練習から次々と予測不能かつ重大な、多くのトラブルに見舞われたため、加納、安岡両選手とも決勝までに満足に走行することができず、またメカニックも決勝直前までピットでの攻防を余儀なくされたハードなレースでした。しかし、第二戦の富士ラウンドでの苦い思い出を払拭して今季5度目の完走という結果を残すことができ、また、チームにとって、トラブルを乗り越えてのこの「18位の完走」という結果は、紙の上の数字が示しているものよりずっと大きな宝物となりました。

 10月にオートポリスで開催される次戦のSUPER GT in KYUSHU 300kmレースにおきましても、変わらぬ応援を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

  • P1 #4 GSR 初音ミク BMW 谷口 信輝 / 片岡 龍也
  • P2 #31 Panasonic apr PRIUS GT 新田 守男 / 嵯峨 宏紀
  • P3 #86 クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3 山西 康司 / 細川 慎弥
  • P18 #50 Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒
チーム代表 伊藤宗治
gt_r06_arnage-08.jpg  富士ラウンドは、いつも気負いという邪念と戦いながら現場に入るのですが、今回は最後までチームのみんなが力を出し切ってくれたおかげで、目標だった「いい仕事をしたうえで完走する」ことが、ドライバーを含めチーム全員のなかで達成できたのではないかと思います。予選日の朝から決勝日まで、あれだけのアクシデントとトラブルが続き、トラブルの内容もこれまで起こったことのないものばかりだったにもかかわらず、メカニックの日頃のルーティンワークの積み重ねが功を奏して非常に速いペースで作業を進められ、また、ドライバーもひたすら信じて待ってくれたおかげで、一時はピットスタートも覚悟しましたが、すべて本番の走行には間に合いました。またタイヤもヨコハマタイヤ様のおかげで安定した性能を出せていましたので、そういう意味で皆に非常に感謝しています。決勝は、最初は左側のタイヤのみを交換する作戦でしたが、リア2輪交換に作戦変更という流れになりました。そのため加納さんは経験不足からスピンして順位を落とすことになり、今回の結果としてはこの流れはマイナスだったと言えるかもしれません。しかしこういうタイヤ交換のパターンを経験したことは加納さんにとってもチームにとっても、今後のレースをしていくうえで大きなプラスとなりました。今回のレースでの一番の収穫といっていいかもしれません。また、加納さんが最終的に1分43秒台で周回し本来の走りをしてくれたことは非常にうれしいことでしたね。次戦のオートポリスは車両にとって得意とするコースのひとつなので、まずまずの走りを見せられると思いますし、気候的な変化に柔軟に対応できる態勢をとっておきたいと思います。なにしろ練習走行やフリー走行で、せめてタイヤが温まるまでは走りたいですね(笑)
ドライバー 加納政樹
gt_r06_arnage-kano.jpg  チーム皆が最終的にギリギリでも車を仕上げくれて、とりあえず完走できました。自分のスティントは難しい状況だったし、自分の経験の中でリアだけを交換して出て行ったときの引き出しが、まだまだ足りなかったかなというのが本音です。しかし、今後いろんな状況が出てくる中で、これからはそういう時はもっと慎重に走ることを、今回勉強できてよかったです。ともあれ、第二戦の富士がああいう状況だったので、きちっと完走したかったのでその目標を達成することはできてよかったと思います。最後の10 周くらいのペースは、自分的にも納得はできていますが、それまでの走りをもう少し自分としては見直して次戦に臨みたいなと思います。チームは相変わらずほんとにいい雰囲気だと思いますし、そういった中で、次オートポリスに向けて、クルマ的にもたぶんチャンスはあると思いますので、そのチャンスを生かせられるようにしていきたいなと思ってます。
ドライバー 安岡秀徒
gt_r06_arnage-yasuoka.jpg  土曜日は、走り始めていきなりタイヤがバーストしてクルマもダメージを負ってしまい、予選を走るにあたっては難しい状況でした。それでも菅生と鈴鹿の速さから、なんとかQ1 を突破できるんじゃないかと楽観的に考えていたのですが、結果的には0.2秒届かず、しかも自分の走りも0.2秒以上ロスがあるような部分もあったので、車のポテンシャルを引き出すことができず、練習できなかったという部分も含めて、今の僕には難しかったです。決勝日はまた、朝の走行開始後すぐにトラブルが起きてしまったのですが、なんとかスタート前に直してもらえてよかったです。17番からのスタートだったので混戦になるのは解っていましたが、慎重に上を目指して落ち着いてレースを進めようと思っていました。ペースはそこそこ良かったので、前の車を一台ずつ抜いて行ってという状況でした。走っていて楽しかったのですが、やはり練習がなかった分走りのバリエーションというか、状況に応じたドライビングというものに適応するのに時間がかかってしまったというのが僕の反省です。加納さんにチェンジしたあとのスピンについては、僕自身もリアタイヤ2本交換の経験がなかったので有効なアドバイスができず、(最後にすごくいいペースを出していたので)何事もなかったらまたポイントを争っていたようなレースだったのかもしれませんが、そこはドライバー二人の経験だと思っています。ただ、そういう経験を踏んでクルマが得意なオートポリスに行けるのは、ラッキーかもしれません。僕が好きなサーキットでもあるので、練習でパパっと僕がペースを上げて加納さんの走行時間を多めに取れるようにできたらなあと思ってます。

gt_r06_arnage-11.jpg  第7戦九州ラウンドは10月5日~6日にオートポリス(大分県)に於いて開催されます。引き続きの応援、宜しくお願いします。

Arnage Racing 2013 SUPER: GT Race report


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