★カルソニックニッサン星野・鈴木組 今季初勝利を掴む
5月4日、富士スピードウェイで開催された’92全日本スポーツプロトタイ
プカー耐久選手権第2戦・全日本富士1000kmレース大会は、次々と脱落す
るライバルと、燃費との戦いの末にカルソニックニッサンをドライブする星野一
義・鈴木利夫が優勝した。
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富士スピードウェイは、1コーナーからヘヤピン方面に向けた、砂塵が舞い上
がるほどの強風に見舞われていた。
雲がほとんどない気象条件のため、路面温度は34゜Cと幾分高めであり、強
風にもかかわらず、じりじりと上がりつつある。そのためほとんどのチームは、
ミディアムコンパウンドのタイヤを選択しているようだ。しかし、幾つかのチー
ムではソフトコンパウンドのタイヤをチォイスする所もあるようだ。ただ、ハー
ドコンパウンドのタイヤは今日のコンディションでは使用されることはないだろ
うということだった。
そんな中、唯一のカテゴリー1クラスのエントリーである5番レナウンマツダ
が、ピット内でエンジンカウルを開けての作業が続き、ダミーグリッドには付け
なかった。しかし、フォーメーションラップ5分前には作業が終了し、ピット出
口でピットスタートを待つことになった。
フォーメーションラップに続き、いよいよグリーンフラッグと共にレースはス
タートとなった。まず1コーナーのトップを奪ったのは、予選2番手のNo.24YH
Pニッサンに乗る長谷見だった。それに続いて予選1番手のNo.1カルソニックニッ
サン・星野、No.36エッソトヨタ、No.39キッツトヨタと、トップ2台を除いて予
選順位通りのスタートとなった。
長谷見のYHPニッサンと星野のカルソニックニッサンは、その後3周にわ
たって1分17秒台というタイムを叩き出し、後続を引き離しにかかった。3位
以下の車は20秒台で周回をしているため、あっという間に2位のカルソニック
ニッサンと3位のエッソトヨタの間には、大きく間隔が開くことになった。
5周目、突然サントリーコーナーでNo.24YHPニッサンがスピン、コースア
ウト。ダートにはまってしまう。この後、オフィシャルの牽引作業により、なん
とかダートから脱出した長谷見は、8周遅れとなりながらもレースを続行する。
6周目には、ストレートでNo.39キッツトヨタがNo.36エッソトヨタをかわし、
3番手の座を手に入れる。また、キッツトヨタはNo.99のトラストトヨタにもか
わされてしまう。
次の7周目には、No.230トライデント767マツダがヘヤピンでスロー走行、
そのままピットに入り、フロントカウルを上げて作業に入ってしまった。どうや
ら左のドライブシャフトに問題があり、その交換作業に入ったようだ。この後、
14周遅れでレースに復帰する。
8周目、次第に燃費走行が目立ってきた各車のなかでNo.36エッソトヨタとNo.27
フロムエーニッサンだけが、ペースを落とさない。フロムエーニッサンは、スト
レートでNo.99トラストトヨタをかわし、3位の座を手に入れる。
トップNo.1カルソニックニッサンと、No.36エッソトヨタの間隔は、9周目の
6.5秒から、19周目には1.5秒まで縮んだ。しかし、ここでカルソニック
ニッサンも踏ん張り、ピットインまでこれ以上タイムが接近することはなかった。
まず32周目に、No.5レナウンマツダが通常のピットイン。
また、No.3アレクセル767Bフォードもピットイン。しかしこちらはエンジ
ンから水が漏れるトラブルで、25周遅れとなった時点でようやくピットアウト
した。しかし、スタートした時点で煙が上がっており、サントリーコーナーでス
トップ、そのままレースを終えることとなった。
主要なチームの第1回目の通常ピットインの周回数と燃料補給量とその燃費は、
以下のとおりだった(ただし、燃費については当初どのくらいの燃料を搭載して
いたかが判然としないため、参考程度の数字と考えて頂きたい。また計算は周回
数プラスフォーメーションラップでおこなっている)。
35周 No.36エッソトヨタ 83.0l 1.94km/l
36周 No.1 カルソニックニッサン 93.2l 1.77km/l
No.27フロムエーニッサン 80.4l 2.06km/l
37周 No.61コクヨテイクワンニッサン 90.0l 1.89km/l
40周 No.99トラストトヨタ 90.2l 2.03km/l
No.39キッツトヨタ 94.4l 1.94km/l
No.1カルソニックニッサンは、左リアタイヤがボロボロの状態だった。また、
ピットアウトまでに時間がかかってしまい、No.36エッソトヨタにかわされるこ
とになってしまった。No.99トラストトヨタはピット作業に手間取り、これまた
No.39キッツトヨタにかわされてしまうことになった。
50周を終了した時点での上位の順位は、36,1,27,99,61,39。
56周目、ストレートエンドで、No.61コクヨテイクワンニッサンがNo.99トラ
ストトヨタを捕らえ、インから抜き去った。
73周目、No.99トラストトヨタが、突然旧ピットロード付近でマシンをコース
サイドに寄せ、ドライバーのスティーブン・アンドスカーが降りてしまった。
その後は大きな事件もなく、トップが74周した時点で2回目のピットインが
始まった。主要チームのデータは、以下の通りである(順位順)。
No.36 エッソトヨタ 39周 90.1l 1.93km/l
No.1 カルソニックニッサン 38周 87.2l 1.94km/l
No.27 フロムエーニッサン 39周 87.4l 1.99km/l
No.61 コクヨテイクワンニッサン 38周 82.2l 2.07km/l
No.39 キッツトヨタ 32周 74.8l 1.91km/l
今回のピット作業では、順位の入替えは起きなかった。トップ5の全車両は、
1分20秒台から21秒台で周回をしている。
1時間55分が過ぎたところで、No.230トライデント767マツダがスロー走
行後、ピットイン。フロントカウルの交換作業ののちにピットアウトするが、ス
トレートでエンジンがバラついた状態になってしまった。7周ほど走ったところ
で再びピットインする。8分ほど、フロントカウルを開けて作業をし、再び走行
を開始するが、症状が回復せず、15分ほど走ったところでまたもピットイン。
大きなトラブルを抱えているようだ。
91周目、No.39キッツトヨタが、ダンロップコーナーでスピン、コースアウ
ト。しかし、なんとかコース上に復帰した。
100周を終了した時点での上位の順位は、36,1,27,61,39,5。
1位と2位の差は、約20秒差だが、両車とも21秒台から22秒台で走行し
ているため、変化が起きない。
3回目のピットインは、トップが110周を回ったところで始まった。主要
チームのデータは、以下の通りである(順位順)。
No.36 エッソトヨタ 38周 88.0l 1.93km/l
No.1 カルソニックニッサン 38周 89.1l 1.91km/l
No.27 フロムエーニッサン 38周 88.9l 1.91km/l
No.61 コクヨテイクワンニッサン 38周 86.5l 1.96km/l
No.39 キッツトヨタ 40周 88.5l 2.02km/l
No.27フロムエーニッサンは、通常のピット作業に加え、フロントカウルも交換
した。どうやら、フロントのダウンフォースを強めたものと交換したらしい。
スタートから、2時間50分ほど過ぎたところで、No.24YHPニッサンがピッ
トイン。左リアの内側のタイアがエンジンカウルに接触する、というトラブルの
ため、ダンパーを交換し、キャンバーの再調整して接触をしないように作業を行
う。が、長い時間を要してしまうことになる。
2時間57分を過ぎたところで、No.39キッツトヨタがピットロードをスロー走
行して戻ってきた。ミッションを入れるとガラガラ音がする、という症状のため、
エンジンカウルを開けるが、しばらくしてドライバーのローランド・ラッツェン
バーガーは降りてしまい、リタイアとなる。トラブルはどうやら、デフらしい。
3時間6分頃、No.5レナウンマツダがピットイン。エンジンの左側よりオイル
が漏れるトラブルのため、エンジンカウルを開けての作業に入るが、修復はかな
わずこのままリタイアとなった。
3時間23分と言うところで、今度はNo.36エッソトヨタがスロー走行ののち
ピットイン。ミッショントラブルだった。メカニックが、ケースを開け、修復作
業に入るが、長時間のピット作業となってしまう。
150周を終了したところで、トップはNo.1カルソニックニッサン、続いて
No.27フロムエーニッサン、No.61コクヨテイクワンニッサンと、上位3台のみが
トラブルなしで走行している。トップと2位との差は19秒で、カルソニック
ニッサンが24秒台なのに対し、フロムエーニッサンは21秒台のタイムでな
おも追い上げようとがんばっている。
4回目のピットインは、トップが152周を回ったところで始まった。主要
チームのデータは、以下の通りである(順位順)。
No.1 カルソニックニッサン 40周 86.8l 2.06km/l
No.27 フロムエーニッサン 40周 91.1l 1.96km/l
No.61 コクヨテイクワンニッサン 37周 84.4l 1.96km/l
No.27フロムエーニッサンは、通常のピット作業に加え、左前輪と右後輪のブ
レーキパッドの交換を行っている。
スタートより3時間47分ほど、160周目になったところでNo.27フロム
エーニッサンが突然スローダウン、ピットインしてきた。エンジンカウルを開け、
スロットルケーブルをチェック、またドライバーが降りた所でペダルのチェック
をおこなう。どうやら、スロットルケーブルがどこかで引っ掛かるようなトラブ
ルだったらしい。6分ほどのピット作業で再スターととなった。しかし、もう少
しでトップの姿を捕らえるところまで行っただけに、悔しいところだろう。
これを見たNo.1カルソニックニッサンの星野は、今までの21秒台から22秒
台のペースから、25秒台までペースを落とした。
この時点で、2位No.61コクヨテイクワンニッサンとトップとの差は2周、3位
No.27フロムエーニッサンと2位の間には3周の開きがある。
最後のピットインは、トップが189周を回ったところで始まった。1位と2
位のデータは、以下の通りである(順位順)。
No.1 カルソニックニッサン 38周 50.9l
No.61 コクヨテイクワンニッサン 38周 57.3l
注目したいのは、61番車が1番車よりも7リッターほど、多く燃料を使える
ところだ。レース終了までの30ラップ強を61番車がいかに追い上げるかが
レースの焦点となってきた。この時点でのトップとの差は、104秒ほどなので、
1周3秒強のタイム差で追い上げることが出来れば、最終ラップあたりでトップ
とのバトルが予想されるからだ。
200周を過ぎたところでの順位は、No.1カルソニックニッサン、No.61コク
ヨテイクワンニッサン、No.27フロムエーニッサンの順。カルソニックニッサンは
27秒台、コクヨテイクワンニッサンは25秒台で走行。次第に間隔が狭まっ
ていく。
カルソニックニッサンは更にペースを下げ、210周では27秒台に突入して、
24秒台のコクヨテイクワンニッサンの追い上げで、計算上最終周のバトルが現
実のものとなってきた。しかし、コクヨテイクワンニッサンも燃料に不安があっ
たのか、確実に2位をキープする作戦に出て、212周辺りからペースダウンし、
220周目には、トップ2位とも30秒台のエコラン走行になってしまった。
こうしてNo.1カルソニックニッサンにとっては今期初勝利、ニッサンにとって
は2連勝という形で、223周目のチェッカーを迎えることになった。2位には
No.61コクヨテイクワンニッサンが、3位にはNo.27フロムエーニッサンが入った。
●ニッサンチーム水野監督のコメント
「サバイバルレースだった。レースとテストとでは、状況が全く違うものだが、
特に今日は予想もつかない展開になった。燃費については、当初タイヤがダレを
起こしたために予定以上に燃料を消費してしまったため、その調整を終盤行うこ
とになってしまった。開幕2連勝を達成したが、苦しい生き残り戦に勝つことが、
今後に繋がってゆくのではないか。次回もがんばりたい」
参考:富士スピードウェイPit-FM
FMOTOR4 SUB-SYSOP 山川 順治/PEE00630
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