Rd.2 Fuji [ COSMO OIL International Formula Cup ] 1994.4.10 (1) 《サーキットの情景》 ---------------------------------------------------------------------------- ■大逆転 Text/福田 陽一(Yoichi Fukuda) 表彰台の中央で、本当に嬉しそうな笑顔を見せるギルバート-スコットのこの勝利 をポール・トゥ・ウィンという言葉で表現してしまうには、余りにも惜しい気がす る。もちろん、この言葉が決して“楽勝”を意味しているので無いことは当然、理解 しているつもりだ。 ギルバート-スコットは「鈴鹿はポールポジションをとったのに勝てなかった」と 振り返る。今回、彼は自身の悔しさと、富士にかける意気込みの証として、再びポー ルポジションを獲得したのだろう。とは言っても、たった1秒や2秒の中に10数人 のドライバーがひしめき、タイヤの新ルールで不確定要素の多い激戦の予選で、2度 も続けてポールをとる事が只事で無い事は容易に想像できる。 前回の鈴鹿での失敗を2度と繰り返すまいと、自ら再挑戦の舞台を用意した彼に とって今日のスタートでの失敗はどれほどの失意であったことだろう。おそらくその 失意の中、彼は諦めずアピチェラを追いつづけたのだろう。そして、訪れたチャンス を決して見逃さず、自らの勝利に結びつけた。 もしかしたら、ギルバート-スコットがこの時、奪いとったのは、スタート時に 失ったものだったかも知れない。さもなければ、1カ月前の鈴鹿で失ったものだった かも知れない。それは全て彼の失敗で彼の手元を去ったに過ぎないものだったかも知 れない。失敗を取り戻したに過ぎないのかも知れない。 たとえそうだとしても「2番手を走っている時は、優勝出来るなんて思わなかった よ」と明るく笑う彼に、称賛の言葉を送ろうではないか。 そう「ギルバート-スコットおめでとう。“大逆転ポール・トゥ・ウィン”」と。 ---------------------------------------------------------------------------- ☆ 詳しいレースの模様は、 (2)《F3000レースレポート》をご覧ください。 ---------------------------------------------------------------------------- 文/福田 陽一(NBG01300)