秋深まる大分オートポリスサーキットで、2年ぶりとなるSUPER GT Rd.6オートポリスが開催された。ファクトリーでは5週間のインターバルの間に、前戦菅生で起きたエンジンクラックからのオイル漏れを入念に修理し、菅生前に交換したギアの当たりを確認した。さらにオートポリスでは給油が通常のサーキットとは逆側になるため、給油口の入れ替えを行なった。レース直前に阿蘇山の噴火のニュースが流れたが、レースには影響はなく、チームは遠路九州に向かった。
10/23 予選日
オートポリスは阿蘇山の噴煙の影響もなく、からりと晴れた秋空がひろがって、ドライコンディションで土曜日のスケジュールがスタートした。
9時15分から行われた公式練習で、セットとタイヤの確認を行なった。
チームは、オートポリスの経験値として、出来上がっていない路面での走り出しではフロントタイヤを傷めやすいことがわかっているため、その対策を入れたセッティングを行っていた。
また、今大会のタイヤとして、チームはヨコハマタイヤが準備したH(ハード)とハード目のMH(ミディアムハード)を持ち込んでいたが、練習走行の早いタイミングでフロントタイヤを傷めることが懸念されるため、ひとまずMHをキープして、少しでもゴムの強いHタイヤで午前中の走行をスタートすることにした。
柳田選手と加納選手がそれぞれフィーリングをチェック、マシンのコンディション、セットともに問題がないことを確認することができた。
次にチームは両選手にMHをテストさせたが、こちらも問題なく、しかもHタイヤよりもグリップレベルが良さそうで、柳田選手は21Lap目に公式練習ベストとなる1’45.247をマークして順調なところを見せた。
ただ予想通り、こちらのMHタイヤではフロントに路面からの攻撃性が強く出て、タイヤがおろし金でおろしたようになるグレーニング現象が出ており、チームはグレーニングの発生を遅らせるために、車高やスタビライザーを調整するなどセッティング続けた。しかし、少しフィーリングが改善される程度で捗々しい効果が見られず、根本的な解決には至らなかった。
とはいえ、HとMHではグリップレベルの差が格段に大きく、また、グレーニングは路面が出来上がると起こらなくなることを考慮して、チームは決勝のスタートタイヤをMHに定め、予選はMHタイヤでアタックすることにした。
午後から予選が行われ、柳田選手がQ1をB組から出走、柳田選手は慎重にタイヤに熱を入れながらタイミングを窺う。温まりの良いMHタイヤに、柳田選手は4Lap目で1‘44.191をマーク。B組10番手でQ1を終えた。あと一歩のところで惜しくもQ2進出は叶わなかったが、Arnage Racingは、今シーズン最高位の20番グリッドから決勝を戦うこととなった。
10/24 決勝日
朝のうちは、青空に日差しの眩しいレース日和に見えていたが、次第に雲が広がり、さらにウォームアップ走行が始まる頃にはぐっと冷え込んで、気温13℃、路面温度20℃と冬を思わせるようなコンディションとなった。
前日は非常に感触良く練習走行と予選を終えたArnage Racingだったが、12時10分からのウォームアップ走行で、MHタイヤが異常に早く摩耗する現象が発生。ウォームアップ開始からほんの2、3周でアンダーステアを訴える状況となってしまった。両ドライバーの訴えに、急遽車高を下げるセットをしたものの、検証する時間もなく、想定外の成り行きに、チームは我慢のレースとなることを覚悟した。
13時30分、2周にわたるフォーメーションラップの後、300kmのレースが始まった。20番手からスタートした第1スティントの加納選手は、スタートラップで3つ順位を落としたものの、並み居る強豪チームに引けを取らない走りを見せ、それ以降は順位を落とすことなくレースを続けた。途中9Lap目に大きなクラッシュが発生してFCYからSC導入となり、混乱に乗じた加納選手は20番手にまでポジションを回復、SC中、摩耗の気になるMHをうまく休ませながらレースを続けていた。しかしその直後、また300クラス同士のクラッシュが発生して、再度コース整備のためSCが導入される展開となる。
加納選手はSC中の無線で、これ以上MHでレースを続行することは難しいとの見解を伝えていた。第2スティントの柳田選手がMAX周回数でレースできるよう、加納選手のスティントを19周前後と見定めていたチームは、ロングとなる第2スティントを、耐摩耗性の高いHタイヤで柳田選手に託すことに決断。
このSC導入の絶妙なタイミングに、チームはピットレーンオープンと同時に、タイヤ交換のみ行う作戦を敢行した。21Lap目、チームは四輪Hタイヤに交換したのち加納選手をコースに留まらせ、23Lap目、レース再開となると同時に再度ピットインさせた。そして、迅速な給油とドライバー交替を行ない、しっかり温まったタイヤで、柳田選手コースに送り出した。
24位でコースに戻った柳田選手は、コースイン直後、1’46.697ベストラップをマーク。トップマシンのタイムにも迫るような素晴らしい走りで、残り39周を激走した。柳田選手は、気迫のこもった猛プッシュでライバルマシンを1台、また1台とオーバーテイク、さらに熱ダレを起こして脱落していくライバルマシンを尻目に、48Lap目には12番手までポジションアップした。
しかし、ポイント獲得まであと一歩というところで、55号車との接触で危険なドライブ行為を咎められ、52Lap目に無念のドライブスルーペナルティを課されてしまう。
このペナルティにより、柳田選手は17位までポジションを落としたが、再び猛追を再開。柳田選手は摩耗に強いHタイヤで、最後までポジションアップを諦めないレースを続け、55Lap目に244号車、58Lap目に18号車と、立て続けにライバルマシンを抜き去り、最終ラップ、21号車を鮮やかなオーバーテイクでかわして14位でチェッカーを受けた。
Arnage Racingは、前戦菅生からの好感触を結果に繋げることができた。
目標としていたチームポイント3を獲得、さらに、両ドライバーの気迫のこもった激走で荒れたレース展開を走りきって、今季最高位の成績でレースを終えられたことは、次戦に弾みをつける大きな収穫となった。
Arnage Racing