筑波・富士S-FJ選手権

第4戦決勝 武者利仁がポール・ツー・ウインで歓喜の初優勝 板倉慎哉は痛恨のエンジンストール

優勝した武者利仁(ZAP RA corsa ED)

 2023年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第4戦決勝が6月18日(日)に富士スピードウェイで開催され、ポールポジションからスタートの武者利仁(ZAP RACorse ED)がスタートで飛び出すと2位以下を一気に引き離してそのまま12周を走り切り、キャリア初の優勝を独走で飾った。

 本日最後のレースとして行われる決勝は午後4時20分にコースイン開始。曇り空の気温は21度とこの時期としてもやや涼しい。路面温度も予選と比べてかなり下がっているようで、グリッド上でぎりぎりまでタイヤの空気圧を調整しているマシンもあった。9台のマシンがスリックタイヤでフォーメーションラップを開始。レッドライトが消灯してレースが開始された。

決勝のスタートシーン

 ポールポジションの武者は無難に発進したが、フロントロウに並んでいた板倉慎哉(AMORE TOKYO☆表参道☆KKSII)がエンジンストールで動き出せず後続車が左右に回避する波乱のスタートとなった。この混乱に乗じて順位を上げたのが4番手スタートの奥本隼人(TEAM HERO'S)で板倉を避けて一気に加速すると蹴り出しの弱かった小田部憲幸(いえらいふZAP 10VED)をかわして2位に浮上。また5番手スタートの秋山健也(スーパーウィンズKKS・ED)もTGRコーナー進入で小田部のインを差して3位にポジションアップ、小田部は秋山を避けるためにやや膨らみ気味にターンイン、6番手スタートの野村がその内側を狙うが、ここは小田部が踏ん張り4位のポジションを守る。

 最後尾から再スタートを切った板倉はさっそく追い上げを開始、まずはフェリペ昌(WRS MASA KKS-II)を仕留めて8位へ上がる。

 2位以下の混乱をよそに武者は後続を引き離し、2位奥本に1.406秒の差をつけてオープニングラップを終了する。3位秋山はそこから1.190秒とやや引き離され、第3セクターで秋山に接近した4位小田部が、0.233秒と迫っている。小田部は2周目の第1セクターで秋山をオーバーテイク。3位のポジションを取り戻す。

 2周目、武者は2位以下を1秒以上速いペースで突き放しにかかり2位奥本とのギャップを2.019秒まで拡大する。奥本に対しては3位に上がった小田部が接近。0.794秒と射程距離に入って来る。そしてトップ武者を上回るスピードで順位を挽回しているのが板倉で、第1セクターで7位大貫直実(グレード1スズバンF109)を片付けると第3セクターで本間隆史(MATRacingPJ10V)も攻略、6位まで浮上すると、3周目の第2セクターで野村を抜き去り5位へ。

 4周目、奥本を攻める小田部はTGRコーナー進入でインを突いて2位に浮上する。しかし奥本は引き下がらず小田部の背後でプレッシャーをかけ続けるとダンロップコーナー入口で再逆転、ポジションを奪い返す。今度は小田部が奥本のテールを脅かし、テール・ツー・ノーズ状態でコントロールラインを通過。5周目のTGRコーナーでは小田部が再度インから奥村を抜いて2位へ。奥本は今度はアドバンコーナーでチャンスを窺うがこの周は小田部がスキを見せず、ラインをややワイドに取って奥本を牽制する。そして板倉は秋山をオーバーテイクして4位へ上がる。

 6周目、スリップストリームを活かした奥本がTGRコーナーでインから小田部をオーバーテイク。そのまま小田部のプレッシャーをはねのけて0.346秒差でこの周を終える。小田部と奥本がやりあっている間に武者は着々とギャップを築き、4.280秒差と独走態勢となって行く。そして2位グループの背後にはファステストラップを連発している板倉が1.2秒差まで接近。さらに7周目のTGRコーナーで再び小田部が奥本とバトルを繰り広げると一気に板倉が2台に詰め寄り、3台がワンパックになってダンロップコーナーへ飛び込んでいく。3台は最終コーナー出口から加速勝負に出ると、コントロールライン上では2位奥本がやや前だが0.308秒差で小田部、0.156秒差で板倉と続き、3ワイドになって8周目のTGRコーナーへとアプローチ。板倉がブレーキング競争を制して2位に上がり小田部が3位。奥本は2台にやられた格好で4位にポジションダウンする。そこから8秒以上離されているが野村が秋山をオーバーテイク、5位に上がる。KKSに乗る秋山は苦しいレースを強いられているが諦めず、0.571秒の差で野村を追う。

 トップ武者と2位に上がった板倉の差は8周目で5.895秒。ここから板倉は追走を見せるが、武者も余力を残していたのか板倉と拮抗したタイムで残り周回を走り切り、ギャップを保ったままでチェッカードフラッグの下を通過。スタートから一度もその座を脅かされることなく独走でキャリア初優勝を飾った。2位は板倉、スピードでは武者を上回る速さを見せたが、スタートでの失敗が全てだった。その板倉から取り残された小田部と奥本の3位争いは、8周目、9周目と奥本が詰め寄るも小田部が守り切って突き放す繰り返しでファイナルラップまで続き、奥本はダンロップコーナーでアウトから、GR Supraコーナーではインからと攻め立てたが小田部は冷静に走り、0.341秒差で振り切って表彰台の一角を守り切った。奥本は4位。野村と秋山の5位争いもファイナルラップまで続き、最後のフィニッシュラインに向けたドラッグレースで野村のノーズが僅かに前に出て決着、秋山は0.031秒差で6位となった。

優勝は武者利仁(ZAP RA corsa ED)

決勝2位は板倉慎哉(AMORE TOKYO☆表参道☆KKSII)

決勝3位は小田部憲幸(いえらいふZAP 10V ED)

決勝4位は奥本隼士(TEAM HERO'S)

決勝5位は野村大樹(WRS NOMURA KK-SII)

決勝6位は秋山健也(スーパーウィンズKKS・ED)

 初優勝の武者はポディウムに戻ってくると、勝利を噛みしめるようにゆっくりとコックピットから立ち上がり、両手の人差し指で「1」を示してから、ガッツポーズと共に言葉にならない咆哮をあげた。背水の陣で挑んだ3シーズン目、勝てそうで勝てないレースが続いた後の喜びを爆発させた叫びだった。

 2023年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権は前半4戦を終えて、今回優勝の武者が62ポイント、3勝の小村が60ポイントと僅差の戦いが続く。これまでに初優勝を遂げた選手が一皮むけるのを何度も見てきたが、果たして今回の勝利が武者を強くするか? 真価が問われるのは筑波で7月30日に行われる第5戦だ。

表彰式

Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Mizue NOINE


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