F4 JAPANESE CHAMPIONSHIP (FIA-F4)

FIA-F4:第5,9,10戦富士 シリーズ初の3レース開催には、悲喜こもごものドラマが……。第10戦で平木湧也が、悲願の初優勝を飾る! (Le Beausset)

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 ル・ボーセ モータースポーツが挑むカテゴリーのひとつ、FIA-F4選手権シリーズの第5大会が8月6日(土)、7日(日)に富士スピードウェイ(静岡県)で開催された。ドライバー育成を最大の主旨とし、さらなる盛り上がりが期待されるシリーズに、川合孝汰、平木玲次、平木湧也の3人を走らせる。

 オートポリスで行われるはずだった第3大会が中止になったことにより、代替レースとして第5戦が今大会に組み込まれることとなった。スケジュールとしては、土曜日に予選を1回、決勝を1回、そして日曜日に決勝を2回実施する、3レース開催はFIA-F4としてはもちろん初めて。ドライバーにとっては、なかなか得がたい経験となるのは間違いなく、大量得点が可能な一方で、逆に大量の差をつけられる可能性もあることから、シリーズの天王山となる可能性は十分にある。

 国内最長のストレートを持つ富士は、激しいスリップストリーム合戦が繰り広げられることで知られ、オーバーテイクの機会は他のサーキット以上に多いが、抜きやすい事ばかりをイメージするのは禁物だ。むしろ、抜かれやすいサーキットでもある。どのタイミングで前に出れば、先にチェッカーを受けられるか、逆にここで抜かれても、再逆転は可能である、といった、駆け引きの重要性も大いに問われる。

予選 8月6日(土)天候/晴れ コース状況/ドライ

 同じ富士が舞台であっても、第2大会が行われた5月であれば爽やかに映る青空であるが、8月ともなると日差しが強烈すぎて、むしろ猛暑が最大のライバルともなっていた。

 専有走行が行われる木曜日から、3人のドライバーは走行開始。セッションごと、それぞれ着実にタイムを縮め、興味深かったのは3人のタイムが程よく揃っていたことだ。

 そして迎えた土曜日の予選。3レース行われるが、予選は通常どおり1回だけの計測で、第5戦(第1レース)はベストタイムの、第9戦(第2レース)はセカンドベストタイムの順でグリッドが決まる。そして、第10戦(第3レース)は、第5戦決勝のベストタイム順で決められることになっており、なおかつタイヤも通常より1セット多く使用することが可能とされている。

 もちろん、川合も玲次も湧也も予選で使用するのは1セットのみ。計測開始後ピットで3分間待機し、ピットを離れていく。ターゲットとする1分46秒台への突入が最も早かったのは川合ながら、その後の伸びを欠いてしまう。やはり経験の違いか、コンスタントにタイムを刻んでくるのは湧也だったが、予選の前に唯一スプリングを変更していたことが、どうやら裏目に出てしまい、3人の中でベストタイムでは湧也が速かったものの、セカンドベストタイムでは玲次の方が上回った。だが、玲次は黄旗提示区間の減速義務違反があり、ベストタイムを削除されてしまう。

 その結果、湧也は第5戦で11番手、第9戦で13番手からのスタートとなり、川合は16番手と17番手、玲次は17番手と16番手と、レースごとポジションをシェアすることとなった。

決勝第5戦 8月6日(土)天候/晴れ コース状況/ドライ

 照りつける太陽は、最初の決勝を迎える頃になっても容赦なく降り注ぐ。3人のドライバーが装着していたのは、2セット目のニュータイヤ。もちろん、第10戦で少しでも上位のグリッドを得ようという狙いによるものだ。

 それぞれスタートはまずまず。湧也が13番手、玲次が15番手、川合が18番手でオープニングラップをクリアする。バトルを重ねつつ、着実に順位を上げていった湧也が10位でフィニッシュした一方で、川合は5周目のコカコーラコーナーで、接触を回避しようとしてスピン。その後の挽回もなかなかままならず、14位でゴールするのが精いっぱいだった。そして玲次は12位でゴールしたが、ストレートでのオーバーテイク時に走路外走行があったと判定され、ペナルティによるタイム加算で32位にまで降格を余儀なくされることになった。

 しかし、そんな状況の中において、湧也はベストラップ2番手を獲得し、第10戦にはフロントローから挑むことが決定した。

決勝第9戦 8月7日(日)天候/晴れ コース状況/ドライ

 ゴールデンウィークの第2大会に比べれば少ないとはいえ、今回も日曜日のサーキットには33,500人もの大観衆が詰め寄せていた。 連日の猛暑ではあったが、そんな過酷な条件であっても、ドライバーに集中力を欠くことは許されない。スタートを決めて、2ポジションアップとしていたのが川合だった。後方からのチャージもしのぎ続けて、その後も周回を重ねるうちに、やがて玲次も近づいてくることに。編隊を築いて順位を上げてくることが期待されるも、8周目のダンロップコーナーで玲次は押し出される格好となってスピン。それから間もなく、川合もプリウスコーナーでのオーバーランがあり、順位を落とす。一方、湧也はスタートに出遅れたこともあり、フロントローから挑む第10戦に照準を当て、ドライビングやクルマの操り方を大きくアジャスト。これが新たな方向性の発見となるとともに、終盤のペースも上がっていく。その結果、いったんは大きく順位を落としていたが、着実に順位を上げる要素となり、最終ラップには川合の背後でフィニッシュすることに。

 上位陣にペナルティに課せられ、降格もあったことから川合は13位、湧也は14位、そして玲次は23位となった。

決勝第10戦 8月7日(日)天候/晴れ コース状況/ドライ

 最後の決勝は、スーパーGTの決勝終了直後に行われた。すでに日は傾いており、やや気温は下がっているとはいえ、ようやく普通の暑さになったという印象だ。それより強烈な西日と、GTカーのラバーがしっかり乗った路面は少なからぬ気がかりになったが、コンディションの大幅な変化に、どうドライバーが対応してくるか注目された。湧也は2番手、玲次は16番手、川合は19番手からのスタートとなる。

 そしてレッドシグナルが消えて、レースが開始。好スタートを切った湧也は1コーナーにインから飛び込み、トップ浮上を狙うが、しっかりガードを固められて、ここでの逆転はならない。だが、その後方では逆転もあれば、接触も!2台がコース上に止まったこともあり、即座にセーフティカー導入を示すSCボードが300Rから提示される。だが、血気盛んなドライバーたちの多くに、それは目に留まらなかったようでセクター3で相次ぐ追い越し、そして接触。その餌食に玲次がなってしまい、13コーナーで後続車両に追突されてダメージを負い、力なくピットに戻ってきてリタイアを余儀なくされる。一方、中団に沈んでいたことが、ある意味幸いし、川合は混乱を回避できて14番手に順位を上げる。

 5周目でSCランは終了、リスタートも完璧に決めた湧也はトップに続いて、逆転のチャンスを待つ。しかし、そこにポイントリーダーが急接近。湧也は8周目の1コーナーで順位を変えるも、ベストラップをマークし続け、激しく前車を追い上げた13周目のコカコーラコーナーで2番手に再浮上し、今季最上位でのフィニッシュを果たすこととなった。

 一方、川合も激しいバトルを繰り広げつつ順位を上げて、10周目には9番手に立つが、最終ラップのヘアピンで接触があってコース脇にストップ。完走扱いとはなったものの、入賞の機会を逸することとなった。

 久々の表彰台に立ち、満面の笑みを浮かべていた湧也。しかしながら、結果表が正式はおろか、暫定すら一向に出ない。SCラン中の追い越し、接触の審議に時間がかかっていたためだ。そして、午後10時近くになって、ようやく出された正式結果には追い越し違反でトップの降格が! その結果、湧也が繰り上がって優勝。自身だけでなく、チームにとってもFIA-F4での初優勝を獲得した。

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チーム監督 坪松唯夫(Tadao Tsubomatsu)COMMENT
 3人とも出入りの激しいレースだったが、大きくセッティングを変えた最終レースでは、クルマ本来のポテンシャルが引き出せ、チームと湧也にとって初優勝を勝ち取ることが出来た。ただ、ライバルと同じ土俵に上るには、更にドライバーを含めたチーム力を上げる必要があると考えている。もっと強いクルマを作り、もっと貪欲に戦わなければならない。
Driver 川合孝汰(Kohta Kawaai)COMMENT
 走り始めの練習走行から歯車がうまく噛み合わず、どうしたらいいんだろうな、と思っているうちに本番を迎えることになってしまって……。それでも第1レース、第2レースともにスタートは悪くなくて順位は上げられたのですが、予選順位が悪かったせいで普段は戦わない相手とバトルしていたせいか、第1レースでは幅寄せされてスピン。第2レースでは飛び出したりしていました。それでも第3レースではまたスタートも決まり、SCラン後にも順位を上げることができ、シン グルあたりまで行っていたんです。ところが、最後の最後に接触があって、巻き込んだところを後ろのクルマに突っ込まれて終わってしまいました。第3レースに関しては、感触も良くて追い上げていけたので、非常に悔しいです。この悪い流れを断ち切れるように、次の鈴鹿に向けてしっかり準備していきます。
Driver 平木玲次(Reiji Hiraki)COMMENT
 第1レースはストレートで抜く時に走路外走行だったということで、ペナルティを受けてしまい、12位ゴールだったんですが、大きく順位を落としてしまいました。内容的には良かったレースだと思います。第2レースはペースもよかったんですが、中盤に相手を抜く時、押し出されてスピンして。それで後方からの追い上げで、25位という結果になってしまいました。第3レースは、SCランの最中に追突されてしまいマシンのダメージが大きくリタイアと、今週はまともにレースができず、本当に悔しいです。このあとは再来週の鈴鹿に向けて、自分がどれだけいい準備ができるかどうかだと思うので、絶対に完璧な状態にして行きます。
Driver 平木湧也(Yuya Hiraki)COMMENT
 チーム、監督のおかげです。第3レースの前に大幅なセット変更をして、クルマの状態も良かったですし、レースもちゃんと組み立てられましたし、クリーンなバトルもできました。もちろん僕にとって2位も最上位ですから嬉しかったんですが、優勝となると、もっともっと純粋に嬉しいです。正直、今週の始まりは10番手に入るのはやっとという状況で、決して調子は良くなかったんですが、今回は3レース制ということで、唯一チャンスがあるのは第3レースだろうと。そこで勝てるよう、レースウィークを予選から組み立てていき、第1レースでニュータイヤを入れて、良いポジションが得られたことがすべてだったと思います。第2レースを、第3レースに対するセットの調整というか、データ取りで行って、中団に埋もれはしましたが、その状況でクルマの動きを確認できて、大胆なセット変更をしたのが本当に効きました。ラッキーでしたが、こういう位置にいないとチャンスは巡ってこないことを改めて感じたので、もうこの位置から離れないようにします!
Le Beausset Motorsports


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