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S-FJ日本一決定戦

鈴鹿「ファーストガレージ」密着レポート(中編)

佐々木の指導

 池澤利晃代表率いる「ファーストガレージ」は5名のドライバーを擁して鈴鹿サーキットで開催された「スーパーFJ(S-FJ)日本一決定戦」にやって来た。

前編ではチームの来歴や考え方を池澤代表に聞いたが、中編は日本一決定戦のスポーツ走行から予選までのチームの戦いぶりについてレポートする。

 「スーパーFJ日本一決定戦」のタイムテーブルは11月29日(金)からスタート。今年の「ファーストガレージ」の体制は5台という大所帯である。

 まずは今回参戦の5名のドライバーについて。いずれも今年からSーFJに参戦を始めた若手である。(文中敬称略)

 22号車「ファーストガレージKK-SII」の酒井翔太は今年2月の鈴鹿クラブマンレースでデビューした16歳。レーシングカート出身で今年は筑波/富士にフル参戦してシリーズ4位、他にもてぎSUGOシリーズに第3戦から参戦しシリーズ4位、さらに鈴鹿/岡山シリースとオートポリスのゴールドカップにもスポット参戦と、各地で経験を積んている。またフォーミュラBeat地方選手権にもシリーズ参戦し2位を獲得している。

 51号車「ファーストガレージKK-S2」の落合蓮音もカート出身の16歳、今年6月のS-FJ鈴鹿ラウンドでレースデビュー、この時はまだ15歳だった。その次雨の富士でのレースでは20番手スタートから10番手まで順位を上げる好走で注目を浴びた。筑波/富士シリーズに後半4戦だけの出場で10位。鈴鹿シリーズは初戦19位も直前の第7戦では予選2位/決勝4位に食い込んでいる。

 52号車「ファーストガレージKK-SⅡ」の津田充輝もカートレース出身の20歳の大学生。中学から高校2年までカートを行い今年S-FJデビュー、筑波/富士シリーズに1戦を抜かしてフル参戦。デビュー戦で2位を獲得しシリース5位。

 53号車「ファーストガレージ制動屋S2」の石井大雅は今回のメンバーで唯一のSIMレース出身。筑波/富士シリーズにフル参戦し最終戦までチャンピオンの目を残していたが2位。もてぎ戦と鈴鹿戦にもスポット参戦した。今回は月曜日の練習走行でコースアウトしたとかで、気合を入れなおすためにと高校球児のような坊主頭にしてきた。石井といえばいつもレースに持参するダルマが有名で、優勝したら両目を開けると誓っている。

 54号車「ファーストガレージ10V」の中村ブンスームは現在大学生でカートレース出身。筑波/富士シリーズに第4戦から参戦を開始。他の4名がMYST KK-S2で走る中、唯一東京R&DのRD10Vをドライブし、3戦に出場してシリーズ15位。鈴鹿/岡山シリーズ最終戦にもスポット参戦している。

<ダンロップ占有スポーツ走行>

 レースウィークの公式イベントはタイヤメーカー(ダンロップ)の専有によるスポーツ走行で幕を上げた。専有走行は午後3時20分から20分間。今年は大会開催日程が変更されため、レース前のスポーツ走行の機会が少なかく、遠来のドライバーとチームにとっては僅かな走行時間でも貴重なものになる。

 ファーストガレージの5人は準備を終えて次々とコースイン。しかしスプーンコーナーでストップした車両があり、すぐに赤旗が提示。セッション中断。

 マシンが撤去されると走行が再開されるが残り時間は3分で雨も降りだし各車僅かに走っただけでチェッカー。ほぼ何もできずに終わったセッションだが、落合4番手、酒井9番手、中村10番手、石井12番手、津田14番手で終了。マシンは翌日に向けてメンテナンスに入った。

<特別スポーツ走行>

 明けて11月30日(土)本日は朝からA組、B組に分かれて20分間の特別スポーツ走行から。まずはA組が午前8時45分開始。予選前のセッションはこれだけなので、ここで感触を掴まなければならない。A組の酒井、落合、石井の3台が出走する。 残り13分、落合が2分14秒233とトップタイムを出す。2番手に酒井が17秒334で続く。残り8分、ファーストガレージのマシンがスプーン出口でスピン、止まっているのがモニターに映し出される。3台は同じKK-S2、カラーリングも似ておりモニターの画面では判別がつかないためピット内は騒然となる。やがてラップタイムが更新されたことから酒井と落合は走行を続けていると判明、止まったのが石井だと判明した。

 残り5分、落合のタイムを上回る者は現れずトップは変わらず。酒井は2分16秒171で5番手までドロップ。意外と言っては失礼だが落合の好走にピット内も明るさが戻る。とはいえ石井のストップの原因は気になるところ。

 チェッカーが振られ20分間のA組走行は終了、最終ラップに岡本大地が2分14秒467までタイムを詰めるが0.234秒差で落合がトップタイム。酒井は10番手で走行を終えた。石井はノータイムに終わった。

 続いて午前9時20分、B組の特別スポーツ走行が開始、同じく20分間だ。ファーストガレージからは津田と中村が出走する。

 残り12分、トップは2分15秒台に入りタイムアタックが本格化か。ファーストガレージ勢では津田が残り10分に16秒576で6番手に上がってくる。津田はその後15秒966まで自己ベストを短縮するが、全体的にタイムが上がったことから13番手まで順位はダウン。逆に中盤から順位を上げたのが中村で、最終的に15秒823と津田を上回り8番手に浮上。両者それぞれ9周を走り切り予選に向けたデータを得た。

●特別スポーツ走行後 池澤代表のコメント

 「落合のタイムはショートカットで出たものなので、実際のトップは岡本選手ですね。でもそれを除いでも15秒フラットくらいは出ているので、まずまずかな。酒井の方はマシントラブルで、ラジエターに穴が開いてしまっていました。石井は二人について行こうとしてコースアウトしたようですね。B組の二人はもうちょっとタイム的にいけるかなと思ったのですが、津田は鈴鹿走るのが今回初めてなので、緊張しちゃったかなと思います。昨日3周とかしかできていないので、これで緊張取れて、予選、決勝もうちょっと頑張ってくれればいいかな、と思います」

<予選>

 同日午後からいよいよ予選。それに先立つこと10分ほど前、各ドライバーは思い思いのルーチンで心と体をほぐしていく。酒井はいつも余裕の表情でまわりと談笑、落合は屈伸を繰り返し、一方石井はピット内をうろうろと歩き回る。そんな折を見て、チームのエグゼクティブアドバイザーとして選手にアドバイスを送るのが佐々木孝太である。 佐々木に「選手にどんなアドバイスをしたのか?」を聞いた。

●佐々木孝太エグゼクティブアドバイザー

 「今日はけっこう風が強いので、風に対する考え方。筑波とかだとあまり関係ないと思うのですが、鈴鹿だとすごく風に対して走り方が変わるので、それを簡単にアドバイスしたくらいです。(各選手経験を積んで落ち着いてきた?)そうですね、すごい個性的なドライバーが集まって、それがみんなで切磋琢磨してくれているので。いいところは吸収して、ダメなどころはみんなでロガー見ながら反省したりしているから。みんな雰囲気はすごいいいですよね。最終的にはライバルなので、スタートしちゃえばアレ(バトル)ですけれど」

 まずはAグループ予選が午後2時から20分間で開始。酒井、落合、石井の3台が相次いでコースインする。しかしいきなり赤旗。S字でスピンした車両がある。

止まった車両がモニターに映るとピットでは「うちのクルマか?」と緊張が走る。今回止まったのが渡会太一だとわかると安堵の声が出るが、一方、渡会ほどの名手でもスピンするコンディションの厳しさかと別の危惧が出てくる。赤旗で全車ピットに戻るが、ファーストガレージ勢の3台はじめ、かなりの台数が即座にコースインできるファストレーンに並ぶ。  しかしここで落合が何かをアピール。すぐにクルーが駆け寄り話し込むと、マシンを列から押し出してピット前に戻して作業を始める。ドライバーの頭部保護にコックピット周りに装着されているプロテクターの右サイドが外れているようで、ピット裏のトランスポーターまで走って取ってきたスペアと交換する。赤旗中断中に処置できたことはラッキーだが、再開時のコース復帰の位置は後方になってしまう。

 午後2時10分に残り時間17分5秒から予選再開。各車もういちどウォームアップからやり直しだ。

 残り時間12分、そろそろ各車ペースが上がってくるところでトップは岡本大地で早くも2分14秒台。酒井は17秒729で8番手、石井19秒724で14番手につける。落合はまだインラップで2分53秒台だ。

 ここで第1コーナーアウト側のサンドトラップに飛び出して止まっているマシンが映し出される。遠目にもわかるファーストガレージのカラーリング、落合だ。ピット内ではうめき声があがる。予選は再び赤旗中断に。さらにnippoコーナーで止まってしまったマシンもいる。今回日本一決定戦挑戦のためチームを移った角間光起だ。

 この時点で酒井は12番手、石井は18秒516で15番手だ。落合と角間のマシンが移動され、予選は午後2時25分、残り時間9分41秒から再開された。

 各車再びタイヤを温めてタイムアタックを開始。残り時間5分を切って、酒井はまだ自己ベストが更新できず14番手にポジションダウン。石井は18秒281と僅かにタイムを短縮したがこちらも17番手にドロップ。しかし続く周回で酒井は第1、第2、第3セクターで自己ベストを刻むとコントロールラインを通過し2分15秒776をマーク、一気に4番手に順位を上げる。ピットでは歓声があがる。石井も16秒701を出して9番手に上がるが、こちらは後続が次々とタイムを出して直後に13番までダウン。

 20分が経過しチェカードフラッグが振られ、各車最後のアタック。酒井はいったん6番手まで順位を落とすが、最後のラップで2分15秒396を叩き出して5番手に再浮上した。石井も15秒949と2分15秒台に入れて9番手に進出した。その後の正式結果では2番手の車両に3グリッド降格、3番手の車両にベストタイム抹消のペナルティが課されて酒井は3番手、石井が8番手にグリッドが上がった。落合も26番手から25番手に昇格。

 酒井と石井のマシンがピットに戻ってくると。クルーが駆け寄りピットガレージ内に押し戻し、そこでようやく二人はコックピットから降りる。一方グラベルストップした落合のマシンはオフィシャルの手でピットに戻され、落合は徒歩で戻ってきた。

 続いて午後2時45分、予定より10分遅れでBグループの予選が開始。津田、中村の2名が出走する。朝に比べれば気温はかなり上がっており、路面も暖まってきているようだ。

 各車アウトラップを終えていよいよ走行が本格化。しかしここで赤旗が提示される。なんと中村が第1コーナーでコースアウトだ。中村のマシンはチーム唯一のRD10Vで特徴のあるフォルムをしているので判別が容易だが、その中村のRD10Vが第1コーナーをまっすぐ行ってしまい、サンドトラップを抜けてスポンジバリアに当たって止まっている。ピットでは「あちゃ~」という悲鳴があがるが、中村がマシンを降り立つのがモニターに映し出され、とりあえずドライバーの無事が確認された。

 午後2時56分、残り時間18分48秒から予選再開。各車もういちどウォームアップからだ。

 残り12分、この段階でトップは2分15秒949。ただ1台のファーストガレージ勢となった津田は20秒496とまだタイムアタックに入っていない。

 残り9分50秒、ここで津田がいきなり2分15秒877をマークしてタイミングモニターのトップに躍り出る。ピット内は一瞬「え?」という空気になり、ワンテンポ遅れて歓声があがるが、その直後にコントロールラインを通過したマシンが次々と津田を上回り、5番手にドロップ。それでもチームの中で唯一今回が初の鈴鹿という津田の快走に、中村のストップで沈んでいたピットの雰囲気が明るくなる。

 その後津田の順位は6番手まで下がるが、残り7分30秒、2分15秒412まで自己ベストを短縮して5番手に戻す。しかしすぐに6番手、7番手へとドロップ。この辺りの順位争いは目まぐるしい。トップの豊島里空斗が2分14秒950。

 残り3分30秒津田は自己ベストが更新できず7番手変わらず。6番手とは0.028秒の差しかないが、そこが詰められない。そんな状況で再び第1コーナーでクラッシュ。アウト側にコースアウトした車両がスポンジバリヤに接触して止まっている。ただちに赤旗が提示される、この時残り時間1分58秒。

 仮に予選が再開してもタイムアタックには入れないため、Bグループ予選はここで終了となった。津田の順位は7番手のままとなった。

 津田のマシンがピットに戻ってくると同じようにピットボックス内に押し戻される。Aグループの落合同様中村のマシンも搬送待ちということになる。

●予選後のコメント

Aグループ3番手 酒井翔太 2分15秒396 トップから0.937秒差

 「今週末、練習も走れなくて、昨日の走行も赤旗や最後雨降ってきたりして(走るのを)やめちゃったので、テストができていないな、という感じで。朝のスポーツ走行もラジエターに穴が開いて水が漏れちゃって、最初の2、3周しか走れなくて、クルマのフィーリングとか確認できなかったです。でも最終的に合わせられなかったのは自分なので、ちょっと悔しい予選と思っています。最後なんとか出たタイムなので、でもそのなんとか(出したタイム)から岡本選手に1秒くらい離されているので、岡本選手速いな、って印象です。とりあえずセミファイナルで上位に食いついて行って、ファイナルで表彰台と1位が取れたらなと思います」

Aグループ8番手 石井大雅 2分15秒949 トップから1.490秒差

 「昨日のスポーツ走行も今日のスポーツ走行も自分はミスして走れなかったので、それでもトップ10に入れたのはぎりぎり及第点だと思います。途中でタイヤのウォームアップが足りなくてロックさせてしまったのはあったのですが、レースウィークでまともに走ったのはこれ(予選)が初めてだったので、そこを修正できれば、セミファイナルは行けるかなと思います」

Aグループ26番手 落合蓮音 2分53秒776 トップから39.317秒差

 「いろいろありまして(苦笑)。グラベルにはまったのは僕のミスが原因です。まず最初にピットアウトした時に右側のヘッドレストが外れてしまって。偶然赤旗になってスペアのものをつけることができたのですが。再開時に集団から遅れてピットアウトすることになってしまって。スリップストリームを使いたい作戦でいたので、1周待ってトップ集団について行こうと思っていたのですが、それで2周ゆっくり走っちゃって、タイヤが温まり切れていなくて、その結果(スリップストリームを)待っていても無理だなと思ってここから行こう、と思った1コーナーでリヤが温まっていなくてグリップしなくて(飛び出した)」

Bグループ7番手 津田充輝 2分15秒412 トップから0.462秒差

 「初めて鈴鹿の予選を走ったので、どんな感じかな、スリップストリームとか探りながらだったので。あまり(前に)引っかからずに行ける場所を探しつつ。試行錯誤でしたが(笑)、なんとか走り切れたな、と思います。赤旗で待つのはつらくはなかったですが、そのあと2周目か3周目にスピンしちゃって、そこから再スタートしなきゃならなくて、あと最後の周も(赤旗で)無くなっちゃったので、2周分損したのが痛かったかな。もうちょっとタイム出たかもしれないな、みんなのタイムの上がり方を掲示で見ていたのですが、それを見ると、ここでもっとタイム出しておきたかったな、と思います」

Bグループ順位なし 中村ブンスーム タイムなし

 「アウトラップでクルマの挙動確認しながら行ったのですが、第1コーナーで急にリヤが抜けて、そのままスピンして壁(バリア)にぶつかってしまいました。そこはちょっと攻めすぎたのかな、と反省の気持ちです。まだみんなが集中してアタックする前だったですが、さっきチームの人からセクタータイム見ると僕が速くて、コーナーでは頑張れる。初期の速さがあったと思うので、明日のセミファイナルで頑張って追い上げて、決勝に挑みます」

池澤利晃チーム代表

 「いいこと悪いことあった予選です。酒井は朝の練習でトラブルが出て、ラジエターに穴が開いて走行が少なかったでしょうから、そんな中で(4番手は)よかったのではないでしょうか。頑張ったなと思います。石井もそうですね、周回数少なかった中、なんとかひとケタまで(順位を)上げてきたのはよかったのではないでしょうか。クラッシュしちゃった二人は、気負いすぎですね、行き過ぎましたね。なにより他のみなさんに迷惑かけちゃって申し訳ないです。津田も走り込みが足りない中で頑張ったと思います」

 ともにコースアウトした落合と中村は メカニックに混じってマシンの中の砂の除去やカウルの汚れのふき取りに精を出す。酒井、石井、津田の3名もメカニックとオンボード映像での振り返りなど、それぞれ明日のセミファイナル、ファイナルに向けた準備に余念がない。

石井

石井

石井のダルマ

中村

中村

クラッシュした中村車

落合

酒井

津田

津田

Text & Photo: Junichi SEKINE


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