カテゴリー

ニュース内検索

S-FJ日本一決定戦

鈴鹿「ファーストガレージ」密着レポート(後編)

レース後のドライバーたち

 池澤利晃代表率いる「ファーストガレージ」は5名のドライバーを擁して鈴鹿サーキットで開催された「スーパーFJ日本一決定戦」にやって来た。

 前編ではチームの来歴や考え方を池澤代表に聞き、中編ではスポーツ走行、予選の様子を書いたが、後編は日本一決定戦のセミファイナル、ファイナルでのチームの戦いぶりについてレポートする。

<セミファイナル>

 明けて12月1日(日)決戦の日は朝から晴れ渡り、絶好のレース日和が予想される。前日に行われたA/Bグループの予選結果に従って、それぞれのグループのセミファイナルが6周で行われる。今年の日本一決定戦は実に53台ものエントリーを集めた。一方で決勝であるファイナルに出場可能なのは50台。つまり3台はファイナルに進出できないことになる。Aグループは27台、Bグループは26台の出走が予定されている。

 まずはAグループのセミファイナルが午前8時から開始。気温8度で路面は冷え切っている。予選でコースイン直後に止まってタイムが出ていない渡会太一も出走が認められ27台がグリッドに並んだ。酒井3番手、石井8番手、落合25番手から6周のレースに挑む。

 午前8時10分フォーメーションラップ開始。少しでもタイヤに熱をいれようと各車左右にウィービングを繰り返すが、逆バンクの手前で石井がコースオフ。すぐにコースに復帰するが後続はぎりぎりのブレーキンでこれを回避した。27台全車がグリッドについてレーススタート。

 各車クリーンスタートを切ったが酒井は第1コーナーで後続に差されて4位にポジションダウン。8番グリッドに戻ってスタートした石井もオーバーテイクを許して9位にダウン。一方25番手からスタートの落合はスタート直後の混戦をかいくぐって大きく順位を上げ、14位でオープニングラップを終えた。ここでフォーメーションラップでコースアウトした石井にドライブスルーペナルティが提示される。

 2周目に入ると酒井はさらにオーバーテイクを許し6位にダウン。予選の際のペナルティで後方からスタートした速い選手が次々とポジションを挽回して襲い掛かってくるのに対して防戦に追われている。トップは岡本大地だ。3周目に入り石井はドライブスルーペナルティを消化。最下位からの挽回を開始する。落合は13位へポジションアップ。

 わずか6周のレースは早くも後半戦。酒井はトップから8.19秒差の6位。5位グループ3台が0.5秒以内で順位を争う中に取り込まれてしまう。落合はまたも順位を上げて12位。5周目に酒井は第1コーナーで大外刈りから5位に順位を上げるが、メインストレートでは2台の先行を許し7位にダウン。日本一を争う上位ランカーは一瞬のミスも見逃してはくれない。落合はさらに順位を上げて10位。石井は22位。

 ファイナルラップ、トップはゆるがず岡本。5位グループ3台は連なって走り目が離せない。7位酒井は西ストレートで前を行く宮園のスリップストリームから抜け出し並びかけるが130Rでインを守られてオーバーテイクは不発に終わり7位フィニッシュ。怒涛の追い上げを見せた落合はファイナルラップにも前を仕留めて順位を上げてシングルの9位フィニッシュ。最下位から追い上げた石井は21位まで順位を上げて、それぞれファイナルへの出場権を獲得した。

 続いてBグループのセミファイナル、午前8時50分コースイン。ファーストガレージ勢は7番グリッドに津田、最下位24番グリッドに中村がつける。グリッドへの試走で6番グリッドの松井がスプーンカーブ出口でクラッシュしてストップ。再スタートができずここでレースを終えてしまい、津田の右前方に穴があいた状態でレースが始まる。

 スタートの蹴り出しがよかったのが津田で、スタート直後に前の空席を埋めるように6位に上がるとS字の出口で先行車のインに並びかけて加速、デグナーカーブ手前でオーバーテイクに成功。5位にポジションを上げる。ピットではどよめきがひろがる。津田の勢いはよく、4位の伊藤の背後につけてプレッシャーをかける。西ストレートでは3位グループ3台がテール・ツー・ノーズ状態。最後尾が津田だ。オープニングラップを終えて津田はトップから3.066秒差の5位、中村も18位までポジションを上げている。ここで3位のを走る豊島にドライブスルーペナルティが掲示される。

 2周目も津田は前を行くマシンを追いかけ、3位を走っていた豊島がドライブスルーペナルティでピットへ向かったため4位にポジションアップ。 続く3周目も4位のポジションを守る。中村も16位まで浮上していたが、ここでその中村がヘアピンでストップしてしまう。ただちにセーフティカー(SC)投入が宣言される。

 SCランは4周目、5周目と続きレースは残り1周で再開。この段階で津田は4位。リスタートでは3位とやや間をあけて加速する。後方から5位のマシンが接近するが、そこに6位のマシンも近づき5位争いを開始。そのバトルのおかげで津田はやや間合いを拡げてそのままフィニッシュ。4位のポジションを守り切った。

 途中SCが入ったことでBグループトップの小田のフィニッシュタイムは17分25秒593、Aグループトップの岡本は13分29秒575。これによりファイナルの奇数グリッドはAグループ、偶数グリッドにBグループがつけることになる。ファーストガレージ勢のグリッドは8番グリッドに津田、11番手酒井、15番手落合、41番手石井という順になり、Bグループでリタイヤした中村は請願書で出走が認められてピットスタートする3台の2番目からレースに参加する。

●セミファイナル後のコメント

Aグループ7位 酒井翔太

 「タイヤを暖められず、新品をうまく使えなくて終わっちゃいましたね。黄旗区間で抜かれたりしていてそれがどうなるかわかりませんが、6番ぐらいになるんじゃないかなと思います。クルマの感触は昨日と変わっていないので、そこそこ、ですが、まだ自分で合わせられる余地が残っているので、ファイナルはしっかり合わせ込められたらな、と思っています」

Aグループ9位 落合蓮音

 「スタートがけっこううまく決まって、そこがよかった点ですね。あと前方でクラッシュとかスピンとかがある中で、そこはけっこううまく切り抜けてこられました。決勝は18番ぐらいからなので、そこからまたジャンプアップして、表彰台まで行きたいと思います」

Aグループ21位 石井大雅

 「フォーメーションラップでタイヤ暖めていたら、ちょっとリヤが出てしまいました。自分が焦っていたのかわからないですが、そこが反省です。ファイナルは追い上げるしかないので、去年椎橋さんジャンプアップ賞とりましたが、それを目指して頑張ります」

Bグループ4位 津田充輝

 「初めてのスタートで緊張しましたが、なんとかちゃんと加速に持っていけてよかったです。この朝の冷えた路面で、攻め切ることが自分の中でどうしてもできなくて、あまり攻めて走るという感じじゃなくなったのが、もったいなかったなというところでもあるのですが。セミファイナルということで、順位をキープしようかな、という意識が働いてしまいました」

Bグループ23位(リタイヤ)中村ブンスーム

 「ヘアピンでシフトアップしようとしたら、ギアが急に固くなって、入らなくなりました。ブレーキングしながらダウンシフトしようとしたら、そこで何か金属音がして、ニュートラルの状態からどこもギアが入らなくなったので、スローダウンして終わってしまいました。接触とかはなくて、マシントラブルです。ファイナルはまた追い上げのレースになってしまいますが、また気合入れて頑張ります」

 
池澤利晃チーム代表

 「微妙、としかいいようがないですね。フォーメションでの石井のコースアウトはよくなかったし、その前にダミーグリッドに向かう時には二人回っているので、それもよくないですね。セミファイナル自体でいうと、酒井はちょっとニュータイヤが暖まらなかったみたいですね。津田は頑張りました。7番手スタートから4位なので、練習通りの力を発揮できたのかな。あとは落合が最後尾あたりからひとケタまで上がったので、そこはよかったですね。本人も珍しく落ち着いて走っていたようで」

<ファイナル>

 いよいよ今年の集大成、日本一決定戦のファイナルだ。セミファイナルでのA/Bグループのそれぞれトップのフィニッシュタイムによって、A組が奇数列、B組が偶数列のグリッドにつくことになり、ファーストガレージ勢のグリッドは、津田8番手、酒井11番手、落合15番手、石井41番手ということになった。セミファイナルでリタイヤした中村は、他の2台とともにピットスタートとなり、2番目から出走する。ミッショントラブルは修復済みだ。

 コースイン直前、各ドライバーは意外とリラックスした表情でそれぞれマシンに乗り込んだ。ここまで来たらあとは頼れるのは自分のみ、という心境か。津田を除く4名はユーズドタイヤを選択。10周のスプリントでウオームアップの早さを選んだか。一方津田はニュータイヤを装着。12月とはいえ気温は13度まで上昇、日差しもあり路面は暖まりつつあり、すぐに性能を発揮できると踏んだようだ。グリッドへの試走で予選3番手と7番手のマシンが接触、クラッシュ。レース開始前に上位のグリッドが二つ空席ということになった。

 午後1時25分フォーメーションラップ開始、2台を欠いた45台が6キロのコースを1周してグリッドに整列。いよいよスタートかとピット内でも緊張が高まる中、グリッド後方でエンジンストールした車両が。なんと41番グリッドの石井だ。これによってスタート進行はフォーメーションラップからやり直し、レースは1周減算され、9周で行われることになる。石井は最後尾スタートに回され、ピット内ではちょっとだが弛緩した空気が漂う。

 仕切り直しのエキストラフォーメーションラップを終えて全車グリッドに整列。ピット内でも再び緊張感が高まり、レーススタート。

 ファーストガレージ勢も各車クリーンスタート。前2台が消えた8番グリッドの津田だったが後方の元山に第1コーナーでインからオーバーテイクを許し7番手でターンイン。一方11番グリッドの酒井は1台を仕留めて8位でオープニングを終えた。15番グリッドの落合は公約どおり10位までポジションアップ。それ以上にジャンプアップしたのが最後尾スタートに回された石井で、混戦をかいくぐって32位まで上昇。13台を抜いた計算だ。ピットスタートの中村は43位まで順位を上げている。

 2周目に入り津田は一度前に出した元山を抜き返して6位にアップ。トップとは5.997秒の差、さらに3周目には筑波富士チャンピオンの伊藤をオーバーテイクして5位に浮上、ニュータイヤ投入の効果が出始めてきたか。そして引き続き元気がいいのが落合で9位に浮上、前を行く酒井とはコントロールライン上で0.117秒差とテール・ツー・ノーズ状態だ。石井30位、中村39位とこちらも順位を上げている。

 酒井と落合のチームメイト同士のバトルは勢いのある落合が優勢で、4周目にポジションが入れ替わると落合はさらに前を行く元山も仕留めて7位まで順位を上げる。酒井は9位だ。続く5周目には酒井も元山を攻略して8位へあがってレースは後半戦へ。

 落合の勢いはとどまることを知らず、6周目、今度は伊藤と津田を抜いて5位まで浮上。ラップタイムも2分14秒797とトップ3台に劣らないスピードで走っている。ピットでも「蓮音速いな」と声がかかる。津田6位、酒井8位と続き、石井27位、中村36位とこの二人もじわじわ順位を上げている。

 一方津田はニュータイヤのピークが過ぎたかペースが上がらず、一度抜いた伊藤に7周目に逆転を許し7位にドロップ。後方からは酒井が0.478秒の差で接近している。後方ではここまで順調に順位を上げてきていた石井が36位にダウン、逆に中村は33位にアップ。

 8周目に津田と酒井の間合いは0.149秒とテール・ツー・ノーズ状態となりファイナルラップに突入すると、サイド・バイ・サイドで第1コーナーに進入すると酒井が前に出て7位、津田8位と入れ替わる。

 チェカードフラッグが振られ濃密な9周のレースが終了、優勝は岡本大地。悲願ともいえる初の日本一だ。その岡本から12.444秒の差で落合が5位。最後は伊藤に追い詰められたが0.142秒の差で振り切った。ファイナルラップのチームメイト対決を制して酒井が7位、津田は0.215秒届かずの8位と、ファーストガレージの3台がトップ10でフィニッシュした。ピットスタートから着実に順位を上げた中村が21個ポジションを上げて28位。7周目に順位を落とした石井だが、再度挽回して33位フィニッシュ。5台全車が完走した。

●ファイナル後のコメント

5位 落合蓮音

 「予選、今日のセミファイナルとからずっと追い上げるレースばかりだった感じで、タイムアタック失敗しなかったらここぐらいにいたかなというポジションに戻ってきた、という感じではあります。あと2ポジション上げられたらもっと楽しかったですが(笑)。追い上げのレース、S-FJでこういう経験少ないので、楽しかったです」

7位 酒井翔太

 「どっちのタイヤでいくか悩んで旧ロットで行ったのですが、僕のフィーリングは新ロットの方が乗りやすかったかな、というイメージで。周りがタイム上がっていく中で僕は上がっていけなかったので、そこは自分のよくないところだったとは思います。チームメイトとのバトルは途中ついていくのが精いっぱいで、とりあえず抜けるチャンスがあったら抜こうと思っていたので。前の津田君がちょっとミスして、それでうまく抜けたのかなと思います。レースウィーク全体を通しては、よくはなかったですね。昨日の予選から比べたら順位も下がってしまっているので、それはちょっと悔しいですね」

8位 津田充輝

 「前のセッションで乗った時の挙動に似ていて、タイヤも新しかったので、いい感じに上がっていったのですが、後半から自分の集中力の問題か、もしくはクルマの問題がわからないのですが、思ったように動かせなくなって。それでミスが続いて、呑まれちゃう、という展開でした。鈴鹿初レースなので、どんな展開になるかもわからないところもありながら、しっかり完走できたので、自分の中ではホっとしているところです」

28位 中村ブンスーム

 「ペースも徐々にアップして、前とのバトルも調子よく抜けて、自分の走りができて。他の選手のクラッシュとかもあって28番手。ぼくの想像した以上に順位が上がって、うれしかったです。今までオーバーテイクされる側だったので、こんなにオーバーテイクしたことはなかったので、自分にとってそれがすごく練習になりましたし、ほんとに楽しめましたし、今後の自分の自信につながって、楽しめました」

33位 石井大雅

 「ほんとに悔しい結果になりましたが、いい教訓になったかな、と思います。終盤に順位落としたのは逆バンクでスピンしてしまったからです。クルマは前を抜けるくらいのポテンシャルはあったので、ほとんど自分のせいだと思います。ほぼ自分のミスで今の順位になってしまったので、来年の富士(の日本一決定戦)に出られるなら、ちゃんと準備をして、臨みたいです」

 
佐々木孝太アドバイザー

 「まず(落合)蓮音は予選での失敗をきっちりと取り返したな、と。元々スピードがあったので、ちゃんと走り切って結果に繋げろよ、というふうには言ったのですが、その通りちゃんと結果として出してくれたので。これでひとつ、自信を持ってくれるといいと思います。(酒井)翔太は7位、うまいですし、すごくまわりを見ているのだけど、見えすぎちゃって、ベテランのようなレースになっているから、もうちょっと抑えるところは抑えるとか、そういうことができればあいつのスピードがもっと活きるんじゃないかな、とは思うのですよ。津田はホントに鈴鹿の経験少ないなかで、一番頑張っていたと思うのですが、残りの数周が、気持ちの問題なのか、クルマの問題なのかわからないけれど、ちょっと落ちちゃったのがもったいなかったな、と思います。でも決勝までの流れというのはよかったんじゃないかな。(中村)ブンちゃんは、いっぱい抜いたし、セミファイナルはトラブルでリタイヤしちゃったのが、かわいそうだったですが、20台以上抜いているので、ちょっと(全体の)流れが悪かったけれど、これもレースなので。きっと自信を持って帰ってくるじゃないかなと思います。石井は、いやー、ちょっとメンタルがね。原因わからないけれど、フォーメーションラップでスピンしたのか何かあったのは間違いないなくて、レース中にももう一回何かがあって、ということだから、技術というよりはその時のメンタルとか、気持ちの焦りなのか。何もそんなに追い込まれる状況でもないのに、そうなっているところはもうちょっと、気持ちも負けないようにトレーニングしていかないといけないし、いけたらね、他のドライバーと変わらないスピードがあるので、そのへんの悔しさは、しっかりと感じてもらって、来年以降に繋げてもらえたらいいなと思います」

池澤利晃チーム代表

 「まずは岡本君におめでとうを言わなければ、ですね。今回の大会は岡本選手につきますね。出始めた時から速くて、ずっと注目して見てきましたが、ようやく取れて、おめでとう、に尽きると思います。うちのチームもみんな頑張りました。落合は予選の失敗が悔やまれるところで、あれがなかったらもっと上まで行けたかな、と思います。酒井は上がったり下がったりで。津田も上がったり下がったり、もうちょっと耐えきれるかな、と思ったのですが。チームとしては参戦1年目のドライバーだけだったので、そこで経験の差が出たかな、と。裏をかえせば来年楽しみで、全員もう一回練習して、日本一取れるように。今までの中ではファーストガレージとしては一番いい成績ではありますが、まだまだこれで満足せずに、日本一取れるように全員で頑張っていこうと思います」

 こうしてファーストガレージの日本一決定戦への挑戦は過去最高のリザルトを残したものの、個々の選手の速さを見ると惜しかった部分も多々ある結果となった。池澤代表の視線はすでに来年富士スピードウエイで行われる大会に向いている。

A組セミファイナル前

石井セミファイナル

中村セミファイナル

セミファイナル前に中村にアドバイスする佐々木アドバイザー

セミファイナルで津田にアドバイスする佐々木アドバイザー

ファイナル前

ファイナル_ピットスタートを待つ中村

酒井セミファイナル

酒井ファイナル

落合ファイナル

津田ファイナル

ファイナルを見つめる池澤代表と佐々木アドバイザー

Text & Photo: Junichi SEKINE


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

検索

最新ニュース