池澤利晃代表率いる「ファーストガレージ」は5名のドライバーを擁して鈴鹿サーキットで開催された「スーパーFJ日本一決定戦」にやって来た。
ファーストガレージのスーパーFJ(S-FJ)参戦は2020年から始まり今年で5シーズン目。当初は安田航による1台体制で筑波シリーズに参戦。2021年には同シリーズ2位、2022年には2台体制に拡大して筑波/富士シリーズで安田3位、岩本瞬が5位。2023年にはもてぎ/SUGOシリーズにも活動を拡大。筑波/富士シリーズに小村明生を起用、小村自身7年ぶり、そしてチーム初のチャンピオンを獲得、またもてぎSUGOシリーズでは椎橋祐介が2位と結果を出した。
迎えた2024年シーズンは体制を大きく拡大。16歳の酒井翔太を起用して、筑波/富士にフル参戦の他もてぎSUGOシリーズに第3戦から参戦、さらに鈴鹿/岡山シリーズとオートポリスのゴールドカップにもスポット参戦させて経験を積ませた。筑波/富士シリーズでは酒井の他に石井大雅もフル参戦、津田光輝も第2戦以外はフル参戦させたほか、中村ブンスームを第3戦から、落合蓮音を第4戦から同シリーズに起用。石井はもてぎと鈴鹿、落合は鈴鹿ともてぎ/SUGO、中村ももてぎと鈴鹿にもそれぞれスポット参戦と、全国のS-FJレースでファーストガレージのマシンが走る姿が見られた。
S-FJ日本一決定戦には2020年もてぎ大会で初出場、安田が23位。2021年鈴鹿大会では安田が27位、2022年富士大会では安田が11位、2023年もてぎ大会では椎橋12位、小村17位とここまで実績を残せていないが、今年は必勝を期して5台体制で鈴鹿サーキットに乗り込んできた。同チームの素顔と戦いぶりをレポートする。
まずは池澤利晃社長へのインタビュー。(以下敬称略)
――ファーストガレージ(http://www.first-garage.jp/)は元々マクラーレンなどのスーパーカーの販売を行う会社だという認識だが、レース活動を始めた経緯は?
「実は私自身がファーストガレージに入ったのが去年の4月なので、それ以前の経緯はわかっていないのですが、先々代の会長(川原氏)の時代に若手に機会を与えようと始めたのだと思います」
――現在の参戦カテゴリーは?
「スーパーFJ(S-FJ、フォーミュラBeat、今年始まったF110CUP、後はKYOJYOカップにもVITAで参戦しています。後はメンテナンスだけですが、86/BRZのクラブマンレースなど、お客様のクルマを預かってメンテナンスしてレースに出す、ということもやっています。現在のメインは会社で保有しているマシンをレンタルで走らせることですね」
――日頃のマシンのメンテナンスやレースイベントの時のメカニックなどは社内で行っている?
「ほぼ、筑波のガレージに常駐しているメンバーで行って、足りないときには外部の人に手伝ってもらったりします」
――(S-FJに関しては)今シーズンからマシンの台数とドライバーの人数がかなり増えた印象だが?
「最初に酒井会長から言われたのが筑波のレースをもっと盛り上げようということで。今まではオーディションとかやっていなかったのをやってみて、ドライバーを集めて、という感じです」
――最初のドライバーが安田選手?
「S-FJではそうですね」
――ドライバーはカート出身者を重点的に起用している?
「カートから来る子もいますが、今回のレースで言うと石井はカートの経験がなくSIMレース出身です。先週もてぎで走った野々垣はヤリスカップからですね。割と色々な(キャリアの)子がいます。一般の(レース経験ない)子もきますし」
――オーディションはどのくらいのペースで?
「去年だと、10月ぐらいから始めて(オーディションに)応募があった方をテストして、他にも直接連絡があった方なども都度」
――採用の条件みたいなものはあるのか?
「一応、若い子を乗せたい、というのはありますね。特にS-FJに関しては。もちろんジェントルマンの方で練習されている方もいますし、そんなに難しいことは言わず、ある程度の基準タイムを超えられる子であれば、経験はそこまで問いませんね。最初は筑波のコース1000で走らせて、問題なければコース2000に上げる。そこで1分切るぐらいになっていないと、若い子はだめですかね」
――カテゴリー的にはフォーミュラのピラミッドの中で下から上に上げて行こうという考え方か?
「その通りですね、後はメーカーのオーディションからこぼれちゃった子たちに、もう一度レースができるようにして、そこからプロに入っていけるルートにもしたいです」
――今年S-FJをドライブしている子たちの中で、成績によってはF-Beに乗せてみようかとかいうことも考える?
「オフシーズンになって練習させてみて、出られそうかどうか見きわめたいですね」
――昨年の筑波での小村選手(2016年チャンピオン)の起用には驚いたが、ああいったカムバックもあり?
「全然ありだと思いますね。今の時代は昔と違って、ああいうパターンも面白いのかなと思います」
――現在ファーストガレージで参戦していないカテゴリーにドライバーを押し上げるようなパイプはあるのか? 「酒井会長がけっこういろんなチームと交流があるので、そういうところで紹介する、みたいなことはありますね。本人の希望と、受け入れ側の事情とかもありますが。今年若い選手が育って、これが2、3年後にどうなっているのか、楽しみだと思います」
――チームによっては「S-FJは1年、2年で卒業するカテゴリー」と考えているようだが?
「ドライバーは一人一人成長度合いが違うので、その子のペースに合わせて、S-FJが1年で卒業の子もいれば、2年3年とスキルによって時間のかかる子もいるので、そこはドライバー個々に合わせていけばいいと思います」
――今年で言うと酒井翔太選手は各地のS-FJに出て結果も出し、F-BeでJAF戦はチャンピオンとれなかったが、総得点で競うグランドチャンピオンは獲得した。そういう子には上に行ってほしいでしょうし、そういった子が次々と出てきてくれるのが理想?
「そうですね」
――酒井選手の他に落合蓮音選手も途中から大きく伸びた、ああいうブレイクスルーは何がきっかけだと思うか?
「彼のケースでいえば、レースに早めに出た(15歳でデビュー)のがよかったのだと思いますね。早く経験積めたので。富士のレース(6月)で、雨で予選がキャンセルになって、ほぼ最後尾からのスタートで3周目に10位まで追い上げながら最後にスピンしてしまって、レース後泣いていて、よほど悔しかったのだろうと思います。最後にスピンして終わってしまって悔しかったというのが、きっかけだったのかもしれません。あとは練習ですね。彼はそのあと結構たくさん練習しました」
――F-Beの方はジェントルマンを起用したり、S-FJとはレースに対する立ち位置が違う?
「予算がけっこうかかるので、なかなかフル参戦するというのは難しいですね。ジェントルマンは仕事のスケジュールがあるので」
――日本一決定戦については これまで4回出場して最上位が11位と苦労しているが、その原因は掴んでいるのか?
「今までのメンバーでいうと、この3人(安田、椎橋、小村)は練習量が足りなかった、開催されるコースでの練習量ですね。去年まではそれほど走れていなかった。今年はちょっと切り替えて、レース(鈴鹿クラブマンレース)もそうですし、練習も8月くらいから結構行いました。鈴鹿はコースもいいですし走れる量が多いので、ドライバーのスキルアップにもいいです」
――そうすると今年は期待がもてる?
「落合も酒井も練習でいいところを走っているし、いい感じですね。でも地元の速い選手がいますので、手ごわい選手ばかりです。こんなに台数があつまってよかったです」
――今後も育成がメインになる?
「メーカーのオーディションうけるためのトレーニングとか、レースに興味を持った子供がレースに出られる年齢になる前の受け皿とか、ということをメインでやっていきたいと思います」
Text & Photo: Junichi SEKINE