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F110 CUP

F110現場責任者・童夢有松義紀氏インタビュー「このクルマはあと10年くらい走れるように作り込んである」

童夢・有松義紀氏

 F110 CUP東日本王者決定戦もてぎ大会において、コンストラクター側でこの大会を支える「童夢」の想いについて、株式会社童夢有松義紀氏に話を伺った。

 --改めてになるが、F110CUPのねらいについて

 「一番はですね、今回のエントリーリストを見ていただければ分かると思いますが、16、17歳という若い選手が来てくれたということで、まさに願っていた層の選手が出てくれたと思います。台数は、今回は日程がFIA-F4と被ったこともあって多くは集まらなかったですけれど」

 --車両は去年までFIA-F4で走っていた時のままの仕様なのか?

 「仕様は去年の車両そのままです。(使命が)終わったから自由にしていいよ、ではなくFIA規格に準拠したままです。基本的に第1世代(F110)も第2世代(今年のFIA-F4マシン)もパワー/ウェイトレシオは同じで、タイヤも一緒です。極端に言えばHALOがついているかいないかの違いだけですね。今の日本のモータースポーツというのはオペレーションコスト高騰の問題があって、第2世代の車両は去年までと比べて初年度は昨年度の倍近く(費用が)かかるのですよ。だからどうしても、メーカー育成系はかかるならかかるだけの予算を確保できるけれども、ドライバー自身や家族がスポンサー取って参戦する方々には大きすぎる額だということがあります」

 「正直レースはきれい事だけでできている訳ではなくて、現実の前には夢もないんです。現実を追いかけていってF1までたどり着ける人もいますけれど。夢物語ではない、という現実を踏まえて行く必要があると思います。夢は現実の先にある。そういう現実に向かってほしいことがあって、童夢はそういうクルマ作りを進めてきています。向こう(F1)に行く夢を追う人のためになる質のクルマを作っていく必要があるのです」

 --現在のステップアップルートだとスーパーFJの上がFIA-F4で、上がり幅が大きすぎる?

 「階段というより今の現実はスーパーFJの方が資金的にはレースに参戦しやすいです。もちろんFormula-Beat(JAF-F4)でもいいですよ、レースをすることだけであれば。ただ後に待ち受けているラダー(ステップアップ)が、FIAが作ろうとしているラダーに乗ろうと思うのであれば、こっち(F110/FIA-F4)の方がいいし、ヨーロッパを目指すためにも合理的だと思います」

 --今年は2大会4レースだったが来年はもっと拡大する?

 「それは国内のマーケットの話で、オーガナイザーが利益を出そうと思えばお金を出してくれるカテゴリーをやらなければならない訳で、例えばメーカーのワンメイクとかの方が、こういうの(フォーミュラ)より優先されるのが現実です。もっと(開催を)増やしてとか、誰が責任もってとか、そういうところが残念ながらこれからの課題です。元々レースはビジネスなので、誰かサポートしてくださる方が現れれば、そういう新しい見通しも出てくると思いますし、実際、検討してくださるところがあるので願いが叶えばいいと思うのですが」

 「童夢はコンストラクター(車づくり)なので、地道に、このクルマがあと10年は走れるくらい作り込んでありますけど、図面やパーツの精度をあげるとか、まだまだ作り込めると思いますし、実際その最中です。コンストラクターとしてはこのクルマを止めるつもりはないですし、10年を見据えたリファインをちゃんと準備しています。戦闘機でいったらF4ファントムみたいな(笑)、つい最近まで飛んでいた。日本のレース文化というのはスーパーFJもFormula-Beatも、マシンを長く使い続ける文化なので、そのような文化によりよく応えようというのは我が社が初めてのコンストラクターだと思います。ずっと同じパーツを作ってストックして、でもデバイス供給者の問題でもう(供給)できないものがありますので、互換品を探して、できるだけ安くするためにいろんなOEMパーツを探していきます。生産中止になるパーツがあるなら代替品を探す、作る、それで今の現行部品と互換で使えるように、という作業を続けています。F110のリファイン車両は、より『良くしていく、長らえる』方向での取り組みです」

 「今はエントリークラスとしてはウエストさんのクルマ作りが一つの潮流ですが、僕らは、その中にあってあくまでFIA準拠のマシンで取り組む。そうだなF110は『近代化改装』という言葉が適していますね。『近代化改装をうけたF110』というのは、今の第2世代よりも部分的にはいいもの(パーツ)もついているので、HALOがないのと、前後のクラッシャブルストラクチャーが旧基準である、以外は一緒です。可能な限り手段を見つけて、これ(F110)をこれから10年間走らせる意気込みでクルマ作りというか、ブラッシュアップをしていますし、いわゆる『持続可能』な、レーシングカーとして存在させつづけるよう心がけています」

 --今後エントラントが増えることも期待できるか?

 「マシン(F110)は100台近くあります。でもやっぱり目の前のFIAの大会を追いかける、(ライセンス)ポイントを追いかける。そっちの方の夢を追いかけることもいいですけれど、現実のお金の問題からは誰もが逃げられないので、だからなかなか難しい。でも自分の子供の可能性を信じたいという親御さんが高いレベルでレースができるんだぞ、という状況を提供できるようになればいいかな、と思います。その意味で今回参加の若手のドライバーが、カートから上がってきてすぐの子ばかりというのが、本当にうれしいですね」

 「今はマーケットの変遷のまっただ中にいるかなと思って、その中で童夢はブレずにクルマをよりよくしていく。『近代化改装』でよりよくして行く、というところで、変遷の入り口に立ったので、状況の変化に応じて頑張ればいいと思います。この値段、当時の規定販売価格532万円で、ドライバーの身の回りに入ってくる情報として98年のF1よりこっちの方がデータ量は多いですからね、532万で買えて、ある程度パーツも継続使用が可能。ヨーロッパの技術と、日本の技術を僕らは融合させたのですが、残念ながら日本のレース業界は既存技術の延長を続けてきていて、欧米の技術に追従できていない。そこはちょっと忸怩たるものがあります、でもそれは環境なのでしょうがない」

 「マーケットというか消費者の皆さんは現金ですから、今目の前にあるものを安くと思う。それは仕方ないです。それに対し、マーケットの変容に我々はついて行かなければならない。これはレースでビジネスですから、そこに夢はないです。ただ、我々が作ったプラットフォームを活かして、うまく使っていただく。その先には、マカオ、ヨーロッパがある。その過程で我々はビジネスをしますので、選ぶのはお客さんです」

 --今後F110から上のカテゴリーに上がっていく子供が増えてくるといいですね

 「増えていただけるといいなと思います。与えられた環境で最大限チャレンジして行くのは、いいことだと思います。そして、均質な性能を持つF110だからこそ、そのチャレンジの内容が第三者に類推できる。そこがF110CUPの最大のメリットです。『え、F110で鈴鹿でいきなり2分8秒台?速いじゃん!』とか」

 --今後が楽しみ?

 「そうであってほしいですね、だけど我々の努力だけでは足りないので、やっぱりオーガナイザーさんであったり、プロモーターさんであったり、できる限りのことをしていただいて、現状、これが今我々のできるベストだと思います。それを理解していただいた上で、これは有意義だと思った皆さんに参加してほしいです。今、カートレースをやられている人たちに声が届けばいいかなと思います」

クランクのトロフィー

Text: Junichi SEKINE
Photo: Junichi SEKINE
Asako SHIMA


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