待ちに待ったAUTOBACS SUPER GT 2015年シリーズの開幕。今年のGT300クラスには、マザーシャシーを使った車両や国産FIA-GT3車両となるLEXUS RCF GT3が加わってさらにバラエティに富んだラインナップとなり、28台のエントリーがシーズン直前に発表された。
チーム結成3年目となるArnage Racingは、シーズンオフの間にマシンをチェンジして2015年を戦うことを決意し、2月の半ばに新たなパートナーとしてMercedes-Benz SLS AMG GT3をガレージに迎えた。ファンの注目する中、車両名はSKT Exe SLS、ドライバーは昨シーズンと変わらず、固い絆で結ばれた加納政樹、ナニン・インドラ-パユーング、安岡秀徒の三人体制が発表された。昨季までの熱をそのままに、新たなシーズンもまた「チーム一丸」で戦いたいという一同の想いを乗せて、Arnage Racingは新たなステージに向かって走り出すことになった。
3月14日、15日の岡山公式テストは、チームとしての実質上の車両シェイクダウンだったにも関わらず、「ここ数年来で一番走れた」(監督談)というほど順調に走行した。3人のドライバーも初めてのマシンの手ごたえをしっかりと受け止め、終盤にトラブルは出たものの、大変意義の大きいテストとなった。チームは、レースまでの3週間をトラブルが出た箇所を含め、ギアの交換や細かい調整に費やし、テストのデータを踏まえてセットアップを詰めていった。
April 4th Qualifying
- 曇り/ドライ 気温:23℃→22℃ / 路面温度:28℃→28℃ 入場者;9,300人
例年強風や雹に祟られる開幕戦の岡山国際サーキットだが、今年はいつになく暖かいレースウィークとなった。しかし、天気予報は連日曇りと雨マークが並び、予選日も朝のフリー走行はウェット路面からのスタートとなった。
開幕戦を加納、安岡コンビで戦うArnage Racingは、予選日午前中の公式練習をスタート。少しでも新しいマシンに慣れておきたい両選手は、時間いっぱいを使って周回を重ねた。雨は上がったもののなかなかドライ路面にならない状況の中、時折マシンが見せる挙動の変化はつかみどころがなく、エンジニアが首をかしげる場面もあったが、両ドライバーは無事に41Lapを走行して、順調にマシンに習熟していった。*ベストラップは31Lap目に安岡選手が出した1’29.100(17位)
午後になって路面は完全にドライコンディションとなり、14時50分から予選がスタート。今シーズンも安岡選手が開幕戦のグリッドをかけて、車両をコースに進めた。しかし、安岡選手の気負いがプレッシャーとなって伝わったか、マシンは思うようにタイムを上げることができない。Q1でも上位陣の多くが1分27秒台前半のタイムを出すなか安岡選手は1’29.390と振るわず、Q2進出を許されなかった。
なお300クラス予選の結果は下記のとおり。
- P1 #10 GAINER TANAX GT-R アンドレ・クート / 千代 勝正 (1'26.532)
- P2 #11 GAINER TANAX SLS 平中 克幸 / ビヨン・ビルドハイム (1'26.828)
- P3 #55 ARTA CR-Z GT 高木真一 / 小林崇志 (1'26.837)
- P24 #50 SKT EXE SLS 加納政樹 / 安岡秀徒 (1'29.390)
April 5th Race Day
- 曇り~雨/ウェット 気温:18℃→20℃ / 路面温度:20℃→19℃ 入場者;17,000人
安岡選手にとっては非常に不本意となった予選日の夜、チームはセットアップをさらに詰めた。特に、公式練習の間に見え隠れしていた「つかみどころのなさ」の原因をさぐるべく、夜遅くまで何が効果的かを模索した。
決勝日は朝から雨模様。9時から行われたフリー走行もウェットコンディションからのスタートとなった。チームは雨レースを想定してインターミディエイトで車両をコースに出し、前夜のセットアップの確認も含めて多くのチェックを行った。時折強くなる雨にクラッシュする車両も出て赤旗が提示されるなど、コンディションは難しい。しかし、加納、安岡両ドライバーは順調に12Lapを走行し、確かな手応えを得ることができた。
午前中の走行の後半から雨は上がったが、コース上はまだまだドライコンディションには至らない。今後の雲行きは全く読めないながらも、雲が切れた空は明るくなっていた。チームは一旦、インターミディエイトタイヤでマシンをグリッドに送り出したが、エンジニアは路面が早めに乾くであろうと判断。ほとんどのチームがレインタイヤを選択する中、Arnage Racingはドライタイヤでレースを戦うことを選んでスタートの時を待った。
14時30分岡山県警の白バイとパトカー先導によるパレードラップのあとフォーメーショ ンラップと続き、いよいよ2015年のSUPER GTの幕が切って落とされた。スタートドライバーを託された安岡選手は、24位から追い上げをかけるべく300km、82Lapのレースをスタートした。スタートしてからも路面はなかなかドライコンディションとならず、安岡選手は我慢の走りを強いられる。しかし、渾身のドライブでコースにとどまり、徐々に乾いていく路面に、次第にタイムを上げていく。23Lap辺りからコンディションはさらに好転し始め、タイヤが目覚めたようにペースを上げて29Lap目にはベストラップとなる1‘36.241をレコード、追い上げが期待された。
ところが、33Lap目に差し掛かるころ再び空が暗転、雨が降り始める。これ以上安岡選手を苦しめるわけにはいかないチームは、急きょ36Lap目でマシンを呼び戻した。タイヤをインターミディエイトに交換、加納選手にドライバー交代をして22位でマシンをコースに戻した。
加納選手は、路面のコンディションにぴたりと合ったタイヤで怒涛の追撃を開始。霧雨のような雨が路面を濡らし続ける中、1分42秒から43秒という、上位車両にもまったく引けを取らない素晴らしいタイムで走行を続け、45Lap目に20位、61Lap目に19位と、少しずつ順位を上げていった。その後雨脚が強まるレース終盤になっても、加納選手の激走はとどまるところを知らず、82Lapの岡山ラウンドを見事に完走して18位でチェッカーをうけることができた。
最後まで先の読めない難しいコンディションのレースとなったが、SLS AMG GT3を新たに迎えたArnage Racingは、雨の得意な安岡選手の気力を尽くした走りと、百戦錬磨のGTドライバーに勝るとも劣らない加納選手の激走のおかげで多くのものを得、2015年のシーズンを幸先の良い完走でスタートさせることができた。
- P1 #31 TOYOTA PRIUS apr GT 嵯峨 宏紀 / 中山 雄一
- P2 #55 ARTA CR-Z GT 高木 真一 /小林 崇志
- P3 #21 Audi R8 LMS ultra リチャード・ライアン /藤井 誠暢
- P18 #50 SKT EXE SLS 加納政樹 / 安岡秀徒
- チーム代表 伊藤宗治
-
我々Arnage Racingは2015年、新しいシーズンを迎えるにあたって、車両をアストンマーチンからSLSに変更しました。スタッフ一同大変なシーズンオフを乗り越え、応援してくださる皆様のおかげで開幕戦に出走できたということは、代表として大変喜ばしいことです。心から感謝いたします。今日のレースを振り返ると、スタートをスリックで行く決断をしたものの路面がなかなか乾かずに、結果としてそこで激しく順位を落としたわけですが、安岡が渾身の走りでコースにとどまってくれ、加納が今後を期待させるような走行を見せてくれたおかげで、チームとしてのトータルを考えると悪いレースではなかったと思います。多くのスポンサーやファンの皆様のご期待に添えるほどの結果は得られませんでしたが、これに懲りず、引き続き応援のほどお願いします。
- ドライバー 加納政樹
- 車が変わって迎えた開幕戦、どんなレースになるのかなって思てたんですけど、乗り出しは良いような感触もありながら、タイヤを変えたら、どうなってんの?っていうことも起こって、みんな経験もないですから、いろんな初期的な「産みの苦しみ」みたいなものも経験しながらスタートしていくことになりました。決勝はいろんな作戦を考えたり、チャレンジあったりしながら、アルナージュらしくレースを戦えたんじゃないかな。前半スリックでスタートして、タイヤに熱が入るまで時間がかかりましたけど、安岡くんの激走もあってね。もうちょっと引っ張ってやろうと思ってたところにまさかの雨で、なかなか難しかったですね。でもまあ今の状況下から考えていけば、まずは完走をきちっとすることができたのと、車にもけっこうロングで乗れたんで、雨の状態で、特に乗りやすさみたいなのがやっと出てきた。そうやって、次に向けて、ちょっとずつSLSの知識も一つずつ上げていけたらね。前までは富士はちょっと…っていう形やったけど、SLSは直線も速いし、ブレーキも行けそうなんで、次の富士は楽しみにしてます。あとはドライの時のセッティングをもう少しみんなで詰めていけたら更にいい結果が出ると思うし。まずはきちっと完走したこと、それもチーム全員でとれたことが一番大事やし、それを続けていくことが大事やと思うんで、次戦もまず完走、欲を言えばポイントを獲れるように、頑張りたいです。
- ドライバー 安岡秀徒
-
お疲れ様でした。結果は…残念です(苦笑)やっぱり、去年岡山はポイントを獲れるレースをして取り損ねているので、今年はしっかり取りたいねと加納さんと話していただけに、そういう流れに持って行けなかったことが残念です。ただ、今日のレースというか、今日朝の走行、午後の走行(レース)に関しては、ベストを尽くしたかなと。ギャンブル的な選択をしなきゃいけなくなるのは、昨日のせいなんで、そこが悔やまれる。ただまあそういう選択をさせてくれるチームには感謝というか、う~ん、すごいなと。はい、ドライで行きたかったのは僕なんで(笑)だから、コース上ではほんとにノーミスで、たぶん速く走れてあと5秒とかいう感じだったと思うので、やれるだけのことはやったと思います。とはいえ、次に向けてやらなきゃいけないことは山積みだなという感じです。次は三人なんで、フリー走行であれこれやろうとしてもなかなか時間がないと思うので、その間に伊藤さんと打ち合わせして、なんとか短い間にいろいろ前進させられたらと思ってます。 応援ありがとうございました。
応援してくださったスポンサーの方々には深く感謝しますとともに、今シーズンも変わらぬ応援を賜りますようお願い申し上げますとともに、5月2日~3日に富士スピードウェイで開催される次戦富士ラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。
Arnag Racing TEAM RELEASE