筑波・富士S-FJ選手権

第3戦筑波決勝 フロントロウから好スタートの角間光起がSCにも救われて優勝を飾る

優勝は角間光起(ELEVレーシング10V ED)

 2024年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第3戦決勝が5月5日(日・祝)に筑波サーキットで開催され、ポールシッターのセンドラ船戸アレックス翔太(TRS・10V・ED)がみたびスタートに失敗。隣から好スタートを切った角間光起(ELEVレーシング10VED)がトップに立つと、セーフティカー(SC)ラン明けのリスタートをうまく利用し後続との差を開きフィニッシュ。今シーズン初優勝を飾った。

 子供の日のイベントとして開催される本大会。普段のスーパーFJでは見られない数の家族連れが筑波サーキットを訪れ、メインスタンドもピット上の観戦エリアも大入り。パドックも無料開放され、子供を相手にスーパーFJについて説明する親の姿も見かけた。

 他のレースでクラッシュがあった関係で当初予定から30分ほど遅れた午後2時にコースイン開始。本日のレース開始前には歌手「RAN」による国歌独唱、ドライバーがコントロールライン上に整列しての集合写真撮影とセレモニーがあり普段と違う雰囲気。いつもであればパドックで黙々とマシンに乗り込むドライバー達だが、観客の前でマシンに乗り込む前にライバルに近寄り握手やfist bump(拳固をぶつけ合う挨拶)を交わし健闘を誓いあう姿も見られた。

 午後2時23分フォーメーションラップ開始。気温は午後2時時点で30度ちょうど、路面温度50.2度と共に本日の最高値。全長2,045メートル、2本の短いストレート以外は曲がりくねっている筑波サーキットで、ドライバーは第1コーナー進入から第2ヘアピンまでの区間では呼吸を止めて集中するそうで、これを18周続けるのはタイヤにもドライバーにも厳しい環境だ。

 レーススタート、ポールシッターのアレックスは蹴り出しこそよかったが、そこからの加速がのびず、またしてもスタートに失敗。2番手スタートの角間がスルスルと前に出てトップで第1コーナーへ。アレックスの背後3番手スタートの伊藤駿(ZAP SPEED 10VED)はアレックスに詰まった格好になる、右に左にと激しく動いてオーバーテイクする進路を求める。角間同様加速が良いのが4番手スタートの石井大雅(ファーストガレージ制動屋S2)で、角間に続いて2位で第1コーナーへ進入。3位伊藤と続きアレックスは4番手までドロップする。

 アレックスはS字で伊藤に並びかけるが、伊藤はS字出口からの加速が伸びて、第1ヘアピン進入で石井をインから仕留めて2位浮上。アウトに追いやられた格好のアレックスはいったん引いて4位キープ。後方ではグリッド降格で9番手スタートとなった津田光輝(ファーストガレージKK-SII)、津田の後ろ11番グリッドから発進の塚本凛世(F-BrainウインズS2ED)が共に出足が良く、8番手の水谷誠(HC桶川MRPYTTZAPED)、10番手の内藤大輝(RCIT RaiseUP ED)をそれぞれにかわして津田8位、塚本9位にポジションアップしている。内藤は第2ヘアピンでインから水谷をオーバーテイク。10位にポジションを戻す。

 オープニングラップを終えてトップ角間は2位伊藤に0.665秒の差をつけてコントロールラインを通過。3位石井1.167秒、4位アレックスは1.578秒の差で角間を追う。さらに5位黒川史哉(ZAP SPEED 10V)、6位マスターズクラストップの秋山健也(スーパーウィンズKKS2)とグリッド通りに続く。

 トップに出た角間だが後続を突き放すスピードはなく、2周目0.555秒、3周目0.502秒差と2位伊藤がじわじわと間合いを詰めている。3位石井と伊藤のギャップも1周目0.322秒から3周目0.767秒と広がりトップグループの中で伊藤が僅かだが速い。4位アレックスは石井に0.489秒の差でここはいったん様子見か。5位のポジションを争う黒川と秋山は2周目の第1コーナー手前で秋山が前に出る。ジェントルマンクラスのトップだ。

 4周目、伊藤は59秒151とここまでのファステストラップで角間とは0.435秒の差。0.05秒ずつとはいえ着実に角間との距離を縮めて、5周目には0.1秒詰めて0.338秒差と指呼の間に入って来る。S字から第1ヘアピン~ダンロップコーナーと続くあたりで伊藤が間合いを詰めるが、バックストレートで角間が伸びて突き放すように見える。石井は伊藤に1秒離され、アレックスもいつもの勢いがなく石井と0.396秒の差をキープする。5位秋山はこの4台から遅れてトップから3.687秒の差がついている。

 6周目、伊藤はさらに角間とのギャップを削り取り0.230秒の差。ヘアピンではテール・ツー・ノーズ状態でオーバーテイクは時間の問題か。3位石井と4位アレックスは0.561秒の差。そして7周目、伊藤は勝負所とみたか第1コーナーから角間をロックオン、S字でも左右に揺さぶりをかけると第1ヘアピンへのブレーキングではブレーキをロックアップ、タイヤスモークを出しながら角間を攻め立てる。しかし角間は落ちついてタイトにコーナーを抜けるとバックストレートでは伊藤との間合いを僅かだがひろげ、伊藤に決定的なチャンスは与えない。

 レースは9周目に突入。ここで9位を走っていた津田光輝(ファーストガレージKK-SII)が第1コーナーでスピン。アウト側で半分コースに車体が残った状態で停止してしまう。津田によるとコーナー進入でリヤタイヤをロックさせてしまって、そこでミッションが壊れてしまったようだとのこと。その間に伊藤はバックストレートで角間に食い下がり、最終コーナーでアウト側からサイド・バイ・サイドに持ち込こんでメインストレートに戻ってくる。僅かに角間のノーズが前で0.096秒差でコントロールラインを通過。しかし第1コーナーはイエローフラッグが出ているのでここは伊藤が身を引くがペースは明らかに伊藤に分があり、角間のトップの座は風前の灯火に見えながら18周のレースは後半戦に入る。

 しかしここでSCランが宣言される。第1コーナーで止まった津田が動けない状態のためだ。これで全車スローダウンしトップ争いはいったん水入りに。この時点でのトップ6台は角間~伊藤~石井~アレックス~秋山~黒川の順だ。このSCランは10周目から14周目まで及び、15周目に入るところでグリーンフラッグが振られ、残り4周でレースは再開される。

 トップ角間はリスタートをうまくコントロール、ポジションの利を生かして最終コーナーから加速を開始、そのまま2位伊藤につけ入るスキを見せずに0.326秒の差をつけて15周目を終了。3位石井もうまくスピードを乗せて第1コーナーで伊藤に迫り0.448秒差で続き、4位アレックスは石井に0.552秒の遅れで16周目に入る。リスタートをうまく使ったのが6位黒川で、最終コーナーからの加速で前を行く秋山に近寄ると並びかけた状態でコントロールラインを通過。そのままストレートを並走すると、インから第1コーナーへ飛び込みオーバーテイク。5位のポジションを奪い取る。黒川は予選終了後長い時間スタッフと話し込んでいて、マシンの仕上がりに不満があった様子だがようやく復調したか。

 16周目、角間は58秒905とファステストラップを更新、伊藤との差を0.506秒までひろげる。角間によると前半トップを守りながらもタイヤを温存していたそうで、そのアドバンテージがここで活きたようだ。逆に伊藤は第1ヘアピンへのブレーキングでタイヤをロックさせるなど苦しそうで、石井から0.39秒差とプレッシャーをかけられている。

 それでも伊藤は17周目には最終コーナーからアウト側四脱ぎりぎりのコーナリングを見せて0.391秒まで角間とのギャップを削り取りファイナルラップへ突入する。

 しかしながら角間は最後まで伊藤にチャンスを与えずに、終わってみれば一度もトップを譲らない完勝でレースをフィニッシュ、優勝を飾った。昨年終盤戦2勝をあげ、今年は勝負の年と言いながら第1戦ではアレックスに3.3秒の差をつけられて3位に終わり、本人いわく「初心に帰るために頭をまるめた」そうで、確かに昨年見せたスキのない走りがよみがえった感がある。

 2位伊藤は第2戦富士に続いての2位フィニッシュ、前戦では好バトルの末の2位で満足したような表情だったが、今回ははっきりと悔しさをにじませて表彰台に上がった。

 3位石井はデビューイヤーの第1戦7位、第2戦4位と順位を上げて初の表彰台だ。アレックスは前戦までの勢いが見られず4位、5位はリスタートで秋山を仕留めた黒川、秋山は6位でマスターズクラス優勝となった。

 筑波/富士スーパーFJ選手権第4戦は 3週間と短いインターバルで5月26日(日)に筑波で開催される。昨年は小村明生が一人勝ちのシリーズ前半だったが、今年は群雄割拠な予感が漂う。

Ranさんの国歌独唱

スタート前の集合写真

決勝のスタートシーン

角間光起と伊藤駿の争い

スピンする津田充輝(ファーストガレージKK-SII)

決勝2位は伊藤駿(ZAP SPEED 10V ED)

決勝3位は石井大雅(ファーストガレージ制動屋S2)

決勝4位はセンドラ瀬戸アレックス翔太(TRS・10V・ED)

決勝5位は黒川史哉(ZAP SPEED 10V)

決勝6位は秋山健也(スーパーウィンズKKS2)

表彰式

マスタークラスの表彰式

Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA


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