2024年12月1日に三重県の鈴鹿サーキットで決勝が行われたスーパーFJ日本一決定戦は、岡本大地が優勝して幕を閉じた。岡本は2016年に同レースに初参加、その後2018、2023年は欠場したが今回、出場7度目にして初の日本一称号を手に入れた。岡本の日本一決定戦の軌跡を振り返る。
岡本は1998年6月22日、高知県でサラリーマンの家庭に生まれる。父親がシステムエンジニアだっため、家にはパソコンが余っていた。中学なると、木材をネジで組んだコクピットを自作し、レースのシミュレーターゲームを始める。
まだeスポーツと呼ばれてない時代だが、シミュレータでグローバルMX5のレースがあり、岡本も参加。タイムアタックで上位40名に入り、ファイナルへの出場を果たした。そのファイナルレースから成績優秀者が翌2015年のアメリカで行われる実車のMX5に出場するスカラシップを得るが、10位入ったドライバーが出場権を得、9位に入った岡本は残念ながらその権利を手中にすることはできなかった。これが悔しくて、岡本は実車レースに出場したいと思うようになる。
■2016年
自動車免許を取った岡本は、父親のつてで高下レーシングを紹介され、マシンを借りてスーパFJレースに参戦を始める。最初に出場したのは韓国で行われたスーパーFJ交流戦、続く岡山FJシリーズにもスポット参戦した。そしてツインリンクもてぎで行われたスーパーFJ日本一決定戦にも初出場。しかしこの年は、旧式やプロトタイプのマシンだったためめだった成績は残していない。
■2017年
この年から岡本の快進撃が始まる。岡山シリーズは開幕から第5戦までポールトゥウインで、最終戦を待たずにチャンピオンを獲得。スポット参戦した鈴鹿でもポールトゥウイン。F1のサポートレースとなったドリームカップレースでもポールトゥウインと、まさに向かうところ敵無しの成績を収める。
そして迎えた日本一決定戦鈴鹿。岡本は予選Bグループ2位につけ、セミファイナルレースに臨む。ここでも素晴らしいスタートを決め、トップで1コーナーに向かうも、ミッショントラブルでリタイア。残念ながら決勝進出はならず、最後の最後につまずいた形となった。
■2018年
スーパーFJはWEST 17Jの開発ドライバーを務める。鈴鹿のスクール(SRS-F)にも入校する。
FIA-F4にもスポット参戦。しかし、鈴鹿では、岩佐歩夢、菅波冬悟とのバトル中に1コーナーで大クラッシュする不運に見舞われた。
スーパーFJでは、開発中のマシンで奮闘するも1勝をあげるのがやっとだった。この年、もてぎで行われた日本一決定戦は出場していない。
スクールは、三宅淳詞がスカラシップを獲得。ここでも岡本は涙を飲んだ。
■2019年
この年はFIA-F4にフル参戦するも苦戦。現在に至るまでメーカー育成ドライバー以外がチャンピオンを獲得した年はなく、岡本をもってしてもプライベートチームでは厳しかった。それでも第3戦富士では3位表彰台を獲得してみせた。
この年、スーパーFJのシリーズ戦は不出場。鈴鹿で行われた日本一決定戦では、予選A組2位、第1レグ2位で、決勝は3番グリッドから。スタートでトップに立つも、セーフーティーカー中に燃料トラブルに見舞われリタイアとなった。日本一は岩佐歩夢が手にした。
この年、ネクソンタイヤの開発ドライバーとして86/BRZレースにも参戦を始める。
■2020年
スーパーFJは鈴鹿シリーズに参戦。4戦全勝でチャンピンに輝いた。
もてぎで行われた日本一決定戦では、予選B組2位、第1レグ2位で決勝を迎える。しかし、ファイナルラップのトップ争いで、宮下源都と接触して周回遅れに。日本一は元嶋成弥が手にした。
■2021年
引き続きスーパーFJ鈴鹿シリーズに参戦。5戦中3勝で2年連続チャンピオンを獲得した。
86/BRZレースでは十勝で3位に入り、NEXENタイヤでの初表彰台となった。
鈴鹿で行われた日本一決定戦では、予選A組PP、第1レグ優勝で決勝に臨む。上野大哲との激しいトップ争いを展開するも一歩及ばず、2位となった。
■2022年
スーパーFJ鈴鹿シリーズにスポット参戦。6戦中4戦出場し優勝1回、ランキングを3位で終えた。またこの年の途中からスーパー耐久ST-5クラスへの参戦を始める。
この年の日本一決定戦は冨士。予選A組PP、第1レグ優勝。決勝は、ファイナルラップまで、岡本、清水啓伸、森山冬星との三つ巴の激しい争いとなるが、ファイナルラップで接触して3位。優勝は清水だった。
■2023年
この年もスーパーFJ鈴鹿シリーズにスポット参戦。8戦中3戦に出場し、1勝を挙げる。
スーパー耐久にはST-5クラス・村上モータースのエースドライバーとしてフル参戦。年間2勝を挙げランキング3位を獲得した。
86/BRZレースでは、この年からNEXENの開発から外れたものの、BSタイヤでスポット参戦した第1戦SUGOでポールトゥウインを飾り周囲を驚かせる。この活躍が認められ、現在も86/BRZに参戦中だ。
もてぎで行われた日本一決定戦は不出場。
■2024年
引き続きスーパーFJ鈴鹿シリーズにスポット参戦。1戦のみ出場し1勝を挙げた。
スーパー耐久レースも引き続き村上モータースからST-5クラスに参戦。3勝を挙げるもののトラブルに泣かされランキング2位で終えた。
そして鈴鹿で行われた日本一決定戦に出場。勝てるときはこういうものだろう。いままでの不運や接触が嘘のように、予選A組PP、第1レグ優勝、そしてファイナルも2位以下を圧倒して優勝した。
初出場した2016年から足かけ9年、7回目のチャレンジで、ついに岡本は日本一の栄冠を手にした。
岡本は「スーパーFJはまだまだ新しい発見があるので機会があれば出場したい」という。他カテゴリーも含めて、2025年シーズンの岡本の活躍に期待したい。
スーパーFJは明日22日に4シリーズの先陣を切って鈴鹿・岡山シリーズが鈴鹿サーキットで開幕する。他3シリーズも順次開幕を迎え、日本一決定戦は12月21日に富士スピードウェイで決勝が行われる。
Text:Yoshinori OHNISHIPhoto: Atsushi BESSHO
Keiichiro TAKESHITA
Kazuhiro NOINE
Yoshinori OHNISHI