8月10~11日にかけて恒例の軽自動車の祭典、K-4GPが富士スピードウェイで行われた。10日が5時間レース、11日が10時間レースだ。
このレースに毎年ユニークなマシンで参戦しているのが由良拓也率いるムーンクラフトだ。今年は、久しぶりにニューマシンを投入してきた。2014年から10年間参戦を続けていたフォーMira-1のモノコックと足回りを流用し、かつて富士で行われていたグラチャンシリーズを席巻したMCSシリーズを彷彿するカウルをまとうフォルムに生まれ変わった。
マシン名は「Carbonara MCS50」。そうあの卵と生クリームであえるパスタだ。もともとの語源は、炭鉱労働者が食べていた高カロリーのパスタで、炭鉱=カーボンから名付けられ(諸説あります)、カーボンモノコックのマシン名を表わしている。また、いささか苦しいが「カーボンならムーンクラフト」というダブルミーニングということらしい。MCSはご存じ「Moon Craft Special」、50はムーンクラフト50周年の記念マシンだ。
開発目標は安全性と低ドラッグマシン。ついにK4-GPにもHALOを装着したマシンが現れた。HALOは同社が開発に携わった、FIA-F4 MCS4-24と同じもので、FIA規格の数トンの圧力に耐えるものだという。外観では、フロントカウルの一灯LEDヘッドライトが特徴的で、後端には、幅の狭いリアウイングが低い位置に申し訳程度に配置されている。3Dプリンターでクレイモデルを作成し、風洞実験も行われており、前後バランスは良好で、CD値も低いとのことだ。
マシン製作は10日の5時間レースにぎりぎり間に合った。しかしスタート直後、右フロントタイヤがカウルに干渉してピットイン。修復後には、オーバーヒートでエンジンがブローしてリタイアとなった。
チームは徹夜でエンジンの修復と、オーバーヒート対策を実施。翌11日の10時間レースの朝には無事グリッドにマシンを並べた。
10時間レースはスタート直後から快走。数周でトップに立つと、そのままレースをリードした。しかし、開始7時間あたりで、クラッチトラブルのためコース脇にストップ。Carbonaraの初戦は連続リタイアで幕を閉じた。
リタイアまでは、ラップタイム、燃費とも期待通りのパフォーマンスを発揮していたという。ドライバーからは底を打つとの報告もあり、まだまだ足回りを含めて、進化の余地は多いようだ。
次回は2025年の早春に行われる7時間レース。K4-GPにはこのCarbonaraを含めユニークなマシンが大挙参戦しており、近年では参加するだけでなく、見るレースとしてのファンも徐々に増えている。パドックもピットも入場料で入れ、マシンを身近で見ることができる。興味のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。
Text & Photo: Yoshinori OHNISHI