スーパーライセンス代表 国井正巳氏インタビュー
スーパーライセンスは、早くからアジアのレースに目を向け、ドライバー育成を目的に2011年からフォーミュラ・マスターズ・チャイナに参戦を開始。2018年からは新たにスタートしたアジアF3(リージョナル規格)に戦いの場を移して活動してきた(現在は新型コロナの影響で活動休止中)。
その陣頭指揮をとってきた国井氏は、国内ではARTAのレース活動、特にドライバーの育成プログラムに長く携わってきた。
昨年スタートしたフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ選手権(FRJ)にチームとして参戦したのも、このカテゴリーが掲げる若手育成という部分に魅力を感じてのようだ。
しかし、現在のFRJに対する国井氏の評価はかなり厳しい。それでも歯に衣着せぬ言葉の裏にはこのシリーズをより良いものにしなければという思いが垣間見えた。
- 日本のレース全体を統括するところがない
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「まず言いたいのは、日本のレース界のあり方に問題があると感じています。全体的に統括するところがない。本来はJAF(日本自動車連盟)がその役割を果たすべきかもしれませんがJAFにその力はない。トップにはスーパーGTを統括するGTアソシエイション(GTA)とスーパーフォーミュラを統括する日本レースプロモーション(JRP)がありますが双方の考え方は違います。そこが大きな問題と捉えています」
「国内フォーミュラに限ってもヒエラルキーがはっきりしていません。原因の一つは、みんなが自分の都合、ビジネス面だけ考えてレースカテゴリーを立ち上げてしまうことだと思っています。そこにはユーザーの視点が欠けています」
「その結果、FIA-F4の上に、FRJとスーパー・フォーミュラ・ライツ(SFL)が存在し、この2つはライバル関係のようになってしまっています」
- 国内レースの方向性を示すことが重要
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「世界基準でいくのか日本独自でいくのか、それを決めて指針を示さないとダメだと思います。日本全体のレースをどうするかという指針です。ただ現状ではそれを示す人がいません。JAFでは無理ですから、GTAとJRPが一緒になって日本のレースを考えてほしいと思います。リーダーとなって日本のレースを引っ張っていける人が必要です」
「若手の育成に関しては自動車メーカーがドライバーを抱えるようになってから歪(いびつ)になったように感じています。若いドライバーもメーカーの担当者の顔色を窺うようになっていて、結果を出すというよりも、気に入られたいという考えが優先してしまっているように感じます」
「日本でプロドライバーになるにはメーカーと契約することが必須のように思われていますが、それはメーカーお抱えのドライバーであって本当のプロではないと思っています」
- SFLとFRJはどちらかあればいい
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「参加者として言うと、僕はアジアF3でリージョナルマシンを走らせていて興味があったからFRJに参戦しましたが、次のステップをどうするかというと非常に難しい。このFRJの曖昧さが台数が集まらない要因だと思います。ステップアップするならFIA-F4からSFLを目指せばいい、となると、FRJは必要のないカテゴリーとなってしまいます。ただSFLも台数は伸び悩んでいるという現状があります」
「SF行くのにSFLを経ないとダメだと言う人がいますが、それは違うと思っています。FRJは今は台数が少ないですが、多くなればレベルも上がりますし、ここからSFにも上がれるはずです。海外ならこのレースからF1に行くドライバーもいます」
「流れさえ作れば若いドライバーは育っていきます。今はそういう場がSFLだからそこを経なければと言われているだけです。SFLとFRJはどちらかでいい。そう思っています」
- FRJは立ち上げで躓いた
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「FRJを始めるとき、うちはアジアでリージョナルをやっていたから協力しましたが、僕は童夢製マシンでやるのは今はタイミングが悪い、日本でやるならアジア、ヨーロッパでも使われているタトゥースでやった方がいいと主張しました」
「それは、当時アジアのオーガナイザーが、日本、アジア、ヨーロッパでタトゥースを使うならリージョナルの統一戦をマカオでやろうと言っていて、マカオ政府からも良い感触を得ていた、ということもあります」
「まずはタトゥースで始めて、次の世代のときに日本とアジアのシリーズで童夢製のマシンを使えば良いと考えていました。でも童夢は自分のところでクルマを造ろうとしていてそこは譲りませんでした。コンストラクターとしては理解できますが、自分たちの事情を優先して、シリーズを盛り上げるため、ユーザーのためにはどうすれば良いか、という視点が十分ではなかったように思います」
- アジアに目を向けないと取り残される
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「今は経済情勢が良くないので、皆が目先のことばかり考えてパイを奪い合っていますが、もっとユーザー目線で世の中全体の動きなどを考えないといけないと感じています」
「FRJを始めるときにアジアF3に参戦しているヨーロッパの関係者に声をかけましたが、日本ではやりたくない、日本でやっても何もいいことはないと言われました。金もかかるし商売にもならない、言葉の問題もある、と」
「日本はアジアのレースを下に見る傾向があります。自分たちはレベルの高いことをやっていると思い込んでいますが、向こうからは相手にされていません。アジアのシリーズと同じ目線にならないといけないと思います」
「GTAの坂東代表とスーパーGTのアジア開催を一緒にやったときにもそんな話をしました。坂東代表は理解していると思います。だから、スーパーGTはアジアとの交流を図っていますし、FIA-F4も成功しているのだと思います」
「SFも日本だけでやるんじゃなく、アジアに目を向けていかないといずれマーケットとしても成り立たなくなると思います」
- FRJはこのままではなくなる、アジアとの交流を
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「FRJはマシンは皆良いと言っていますが、レース自体の魅力がありません。今のままではFRJは終わると思います。来年はマスタークラスだけになって、さらに翌年は5~6台になって……そんな感じがします」
「やはりアジアF3とFRJは連携をとって行くべきだと思います。ただ、タトゥースと童夢のマシンが一緒に走るのは難しいと思いますので、アジアではタトゥースを使って、日本では童夢を使って交流戦をやる方法を模索するしかないかもしれません」
「アジアF3は25台位いて盛り上がっていますから、今は向こうは日本との交流戦はやりたくないかもしれないですけどね」
「レーススケジュールも今年は外的な要因はありましたが変則すぎます。ドライバーのことを考えて5~10月でコンスタントに組んでほしい。10月にはシリーズが終わってくれないと翌年のスポンサー交渉もできません」
「若手育成を目的にするなら、テストにはリミットをかけて、その代わりレース前にテストをしっかり組むという方向にすべきと思います」
Photo: Kazuhiro NOINE
Shigeru KITAMICHI
(1)プロローグ|(2)FRJ事務局 小林氏|(3)SuperLicence 国井氏|(4)B-MAX 組田氏|(5)エピローグ