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SGT:第8戦富士 17ポジションアップの11位でゴール、今季ベストリザルトで最終戦に有終の美を飾る (Arnage)

 前戦もてぎで惜しくも完走ポイント3を逃してしまったArnage Racingは、来季のBシードに残留するために、この富士ラウンドで3ポイントを獲得することと、なるべく高いポジションでチェッカー受けることが必須だった。チームは最終戦のBドライバーとして、再度チームとゆかりの深い安岡秀徒選手を起用、さらに、何らかのリスクを冒しても賭けに出る必要があった。起爆剤となるものは何か?

 2013年の特別戦以来の初冬の富士ラウンドでの最終戦に、チームの命運がかかっていた。

□QUALIFYING DAY November 28th□

 予選日は朝から快晴に恵まれていたが、早朝の冷え込みは強く、路面温度16℃というコンディションで、9時に公式練習がスタートした。

 チームは前戦もてぎラウンドでタイヤチョイスを誤ったために不甲斐ない結果となってしまったことへの反省を踏まえて、この最終戦にMH(ミディアムハード)タイヤを選択していた。練習開始と同時に、加納選手と安岡選手が交互にコースに出て、フィーリングをチェクし、MHのセットと耐久性を確認した。

 その結果、気温、路温ともに低いコンディションのもと、MH装着である程度満足のいくタイムが出ることを確認できた。ただ、時間いっぱい43周を走行して公式練習を終了したあと、フロント左タイヤが完全に摩耗していることが判明した。

 その後すぐにFCYテストが予定されており、チームはやむなく、前戦もてぎからのキープタイヤとして保管していたSH(スーパーハード)タイヤでFCYテストに臨むことにした。ところが、コースに出た加納選手は難なく1分39秒台をマーク。富士スピードウェイでは、この時期においてもSHが高いパフォーマンスを発揮することがわかった。SHを選択すればロングスティントを持ち堪えて、タイヤ無交換作戦に打って出る事も不可能ではない。

 怪我の功名とも言える結果だったが、ドライバー、エンジニア、メカニックが頭を寄せて白熱した話し合いが行われ、SHでのタイヤ無交換作戦で決勝を戦うことに方向性を定めて午後の予選に臨むことになった。

 13時15分から行われた予選では、Q1突破を目指して安岡選手がコースに出た。慎重にタイヤに熱を入れてタイミングを図っていた安岡選手は、時間ギリギリまで果敢にアタックを重ね、最終6Lap目で1'38.204のタイムをマークした。ライバルマシンが驚異的な速さでQ1を突破する中でQ2進出は叶わなかったが、気温13℃、路面温度17℃という厳しいコンディションの中、SHタイヤでのナイスアタックに、チームは拍手で安岡選手を迎えた。Arnage Racingは、最終戦決勝を28番手から追い上げることとなり、メカニックは暗くなってもドライバーチェンジの練習を行って、タイヤ無交換作戦に備えた。

□RACE DAY November 29th□

 決勝日は朝から雲の多い空模様で気温も低く、前日のFCYテストで想定外のパフォーマンスを発揮したSHタイヤが、本当に発動するかが懸念されるようなコンディション。

 空模様を眺めて若干の迷いが生じていたチームだったが、レース前のウォームアップ走行で加納選手がコースに出てタイヤの発動を確認。ドライバーとエンジニアが再度協議して、チームは改めて決勝をSHで戦う方向性を決めた。

 決勝は定刻13時にスタート。スタート時の路面温度は17℃と低く、2周に予定されていたフォーメーションラップは3周に引き延ばされた。28番手から追い上げを開始した加納選手は、序盤、慎重に周回を重ねていく。

 厳しいコンディションに、コントロールが難しいかと懸念されたSHタイヤも、フォーメーションラップが3周となったおかげで着実に発動を見せる。アクシデントで脱落していくマシンが出る中、加納選手は着々と周回を重ねて、スティントの半ばには1分39秒台を連発する果敢な攻めを展開。加納選手は10Lap目に48号車をテイクオーバーし、13Lap目には21番手にまで浮上していた。

 Arnage Racingは加納選手の無線でタイヤが保っていることを確認、作戦実行に出ることにした。タイヤ無交換が成立すればピット作業時間は最短で済み、レース展開を有利に運ぶことができる。

 チームはSC介入のタイミングで不利になることを嫌ってピットインが可能になる18Lapで、どのチームより早く、加納選手をピットに呼び戻した。ドライバー交代と給油だけの非常に迅速なピット作業で、第2スティント担当の安岡選手をコースに送り出した。

 安岡選手は25番手でレースを再開すると、好ペースで追撃を始めた。ピットインのタイミングが早かったArnage Racingは全車がルーティンピットを終えた39Lap目には12番手まで順位を上げ、さらに47Lapで11番手に躍り出た。安岡選手は残り10Lapを切る51Lap目には決勝ベストとなる1'39.796をマーク。さらに余力のあるSHタイヤでプッシュを続けた。今季初のポイント圏内がもう目前まで来ていた。4ポイントを獲得できれば来季のBシード残留の可能性が濃厚となる。安岡選手は最後まで力を振り絞って攻め続けた。しかし一歩及ばず、11位のまま、60Lap目にチェッカー。

 さらに惜しくも最終ラップで500クラスの先頭車両にオーバーテイクされ、チームポイント3も逃してしまった。

 しかし、28番手から17ポジションアップして、今季ベストのリザルトを達成することができ、チーム一丸となって立ち向かった2020年の最終戦に、有終の美を飾ることができた。

<一年を振り返って>

 チーム結成から8年目と2020年は、コロナ禍の中で7月からシーズンがスタートし、例年とは違う変則的なスケジュールとなりました。

 過密なレース日程の中、さらにコロナの影響により海外からのパーツ供給が正常ではなかったことから、大きなアクシデントがあれば数戦を落とす可能性もあり、毎戦が薄氷を履むような苦しいシーズンでした。

 シーズンの前半はお客様にサーキットに応援に来て頂くことができず、後半になっても制限の多い中、いつも暖かくチームを見守り応援してくださるスポンサーの皆様、ファンの皆様のエールを常に背中に感じながら、最終戦までシリーズを戦うことができました。

 チーム一同、心より感謝いたします。

 2020年のArnage Racingは2018年から3シーズン目となるMercedes AMG GT3でシーズンに臨み、Aドライバーにチーム結成当初から苦楽を共にしてきた加納政樹選手、Bドライバーに2019 年から引き続いての山下亮生選手、さらにCドライバーにはルーキーの廣田築選手を起用しました。しかしシーズン半ば、山下選手がコロナ禍のため戦列を離れなければならない事態となり、シリーズ後半は、廣田選手と、チーム結成から2018年まで6年間加納選手とペアを組んできた安岡秀徒選手が交互にBドライバーとしてステアリングを握るという、変則的な布陣で展開されました。

 資金力のある強豪チームがひしめき合う現状のSUPER GTで生き残ることは難しく、数少ないプライベーターチームの中でも最も力の弱いチームであるArnage Racingは結局シード権争いに敗れ、Bグループから転落することとなってしまいました。

 とはいえ、今シーズンは不用意なミスによる取りこぼしをしないレースを目標に、「トップと同一周回または一周遅れの完走」の3ポイント獲得を目指して戦ってきた結果、シーズンを通して天候が安定していたこともあり、8戦中5戦を3 ポイント、残りのレースももう少しで3ポイントに手の届くところで戦い、全戦完走を以てシーズンを終了することができました。

Arnage Racing 2020 SUPER GT Race report


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