Japanese F3

ANABUKIレーシングチーム リリース Rd.4-1

            ANABUKIレーシング・チーム
     1995年 全日本F3選手権シリーズ第4戦 レースレポート
            「本山選手が3位になったワケ」
 大会名:F3000 MINE ALL STAR
 日時・場所:1995年5月7日(予選6日) 山口県 MINEサーキット(3.238km)
 天候:曇り(予選・快晴)
 気温:23℃
 コースコンディション:ドライ
 観客数:39,600人(決勝日)
 5月7日、山口県のMINEサーキットで開催された全日本F3選手権シリーズ第4戦において、ANABUKIレーシングチームの本山 哲選手(ダラーラ395/無限)は予選3番手からのロケット・スタートをきめてトップに躍り出ました。
 しかしながら、2周目の1コーナーで予選フロント・ロウのライバルのデ・ラ・ロサ選手と加藤寛規選手に抜き返されて3番手にドロップ・ダウン。結局、そのままの順位で28周レースは終了し、本山選手は3位でチェッカーを受けました。
<公式予選>
 開幕戦2位、そして第3戦の優勝と、順調にシーズンを突っ走っる本山 哲選手と童夢チーム。前回もぎ取ったF3初勝利で最大のライバル、デ・ラ・ロサ選手とシリーズ・ポイントで並んだ本山選手としても、このレースでロサ選手を倒してさらに弾みをつけたいところです。
 そのためには予選でガツンと一発!ライバル達に先制パンチをお見舞いする必要があります。
 特にここMINEサーキットは日本でも屈指のテクニカルコース。前回のクネクネ筑波サーキットとはまた違い、長い直線(高速)に細かいコーナーが連続するインフィールド区間(低速)という両極端の性格を合わせ持つ、セッティングが難しいコース・レイアウトとなっています。抜き所も少なく、予選順位がそのまんま決勝結果になることさえめずらしくありません。
 というわけで、本山選手は木曜日の練習走行が始まってからというもの、ああでもないこうでもないと、マシンのセットアップにはいつになくナーバスになっていました。
 しかし、いじればいじるほど、ややこしくなるのは世の常。
 どこをどうしても「アンダーステアの症状が消えない」と悩む本山選手に、松本恵二監督はじめチームは、マシンをまったくの基本セッティングに戻すことにしました。
 アンダーステアというのは、簡単に説明すると、コーナリングでハンドルを切った際に前輪が外側へ逃げてしまう症状をいいます。ドライバーには前輪のグリップが足りないように感じられるのですね。
 本山選手の言う「左コーナーでのアンダーが出る」原因はいくつか考えられ、その対策もいろいろあるのですが、アンダーを消す方向へマシンをいじって走行を重ねているうちに、マシンの前後左右のバランスが狂い、逆にオーバーステアリング(後輪が前輪より先にグリップを失う)になってしまったというわけです。
 基本セッティングに戻したマシンで、一回目の公式予選は始まりました。
 相変わらず本山選手はアンダー、アンダーと繰り返しますが、チームは聞く耳もたず。 グリップを高めるためタイヤの内圧などの最低限の調整はしますが、「要はアンダーにならない走りをドライバーがすればいい」という見解です。
 そんなことできるの?と思ってしまいますが、コーナーを立ち上がる時のアクセル・オンの微妙なタイミングやハンドリングで、アンダー症状はカバーできるのです。
 曲がらなければ曲げていく、くらいの気持ちでかからないと、とてもF1を目指すドライバーは勤まりません。
 結局、本山選手のタイムは1分25秒922で3番手。宿敵デ・ラ・ロサ選手は1分25秒624でトップに立ち、コンマ1秒半前の2番手には加藤寛規選手がいます。
 二回目の予選が始まった午後2時半。気温が25度近くまで上がったコンディションでのタイムアップは、正直なところ無理そうでした。
 しかし、前にロサ選手と加藤選手がいる限り、コンディションがいいの悪いのなんて、言ってられません。
 一回目の予選に失敗したもうひとりの強敵、道上 龍選手がいの一番にコースへ向かい、なんとかタイムアップを図ろうと懸命なアタックを繰り返し、僅かずつですがタイムを上げていきます。
 そんな道上選手の様子を見ているうちに、本山選手の「負けられない」気持ちに火がついたのでしょう。
 ラスト10分、マシンに乗り込んだ本山選手は息もつかない勢いでアタックを重ね、最後の1周で道上選手を逆転するセッションのトップ・タイム、1分26秒084をマークしました。
 30度をこえる路面温度と、午前から走り続けたタイヤの消耗度を考えると、結局ポールポジションとなったロサ選手の午前中のタイムに劣らない、好タイムです。
「この気持ちで午前中も走ってりゃなぁ..」と嘆息するのは松本恵二監督。
「セッティングは午前と何も変えてない。それなのにこんなタイムが出た。
 何が違うかっていうと”集中力”やな。これしかない、ここしかないっていう気持ちやねんな、結局は。アンダーもへったくれもあるかいな」
 そんなチーム首脳の考えも何とやら。
 本山選手の頭から、まだ”アンダー”の文字が消えないのでした。
その2へ続く


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