2007オートバックススーパーGT第3戦、富士GT500kmレースは、
トラブルやアクシデントの相次ぐ波乱の1戦となった。
周回数減算や赤旗中断で乱れに乱れたこのレースを制したのは、#23ザナヴィニスモZ(本山哲/リチャード・ライアン組)。
2位には#22モチュールオーテックZ(松田次生/ミハエル・クルム組)が入り、ニスモが1-2フィニッシュを成し遂げることとなった。
GT300クラスは、1ストップ作戦を敢行し、
赤旗中断のタイミングにうまくルーティンストップを合わせ込んだ#43ARTAガライヤ(新田守男/高木真一組)が優勝、
ポールシッターの#88アクティオムルシエRG-1(マルコ・アピチェラ/山西康司組)は序盤の快走が実らず、2位に終わった。
(観客動員数:54,800人)
波乱はフォーメーションラップからいきなり始まった。
2番手スタートの#1宝山トムスSCが駆動系トラブルによりコース上にストップしてしまったのだ。
これを排除するためにフォーメーションラップが1周追加されることとなり、決勝レースは、
当初予定より1周減算の109周で争われることとなった。
スタートではポールシッターの#18TAKATA童夢NSXがトップを守って1コーナーを立ち上がる。
その後方では5番手スタートの#12カルソニックインパルZが3位、7番手スタートの#32エプソンNSXが4位にジャンプアップしてきた。
#38ZENTセルモSCも6番手スタートからじわじわと順位を上げ、9周目には3位に浮上してきた。
その一方で、オープニングラップを2位で戻ってきた#8ARTA NSXはペースが上がらず、3周目には#12カルソニックZ、
4周目には#32エプソンNSXに立て続けに抜かれ、その後もじりじりと順位を落とし、最終的には9位でフィニッシュすることとなった。
4番手スタートの#17リアルNSXもペースが上がらずに順位を下げた挙句、
13周目のダンロップ手前で#24ウッドワンZに追突されてレースを終えた。
トップをひた走る#18小暮卓史を懸命に追う2位の#12ブノワ・トレルイエだったが、
16周目にスピンした隙に#38立川祐路に抜かれて3位に後退、19周目には#39デンソーサードSCにも抜かれてしまう。
20周目の最終コーナーで#39アンドレ・クートのインを突き、順位回復を図ったトレルイエだったが、立ち上がりで両者は接触。
クートはスピンを喫し、一気に12位まで後退してしまう。
これで一旦は3位に戻ったトレルイエ。
しかし29周目の300Rで落ちていたパーツを踏んで右フロントタイヤをパンクさせて緊急ピットイン。
その後も74周目に#3イエローハットZと接触して右フロントの足回りを破損した上、
このアクシデントに対する10秒ペナルティを課せられるなど、散々な結果で10位フニッシュとなった。
こうして2位以下がトラブルやアクシデントに翻弄される中、 トップのTAKATA童夢NSXは2位に10秒以上のリードを築き上げ悠々と勝利に向かってひた走っていた。
ところが53周目、4位を走行していた#32エプソンNSXと周回遅れの#118ポルシェがネッツコーナーで接触。 これにより給油口周りを大きく破損したエプソンはリヤバルクヘッド付近から出火という事態に発展。 両車ともコースを塞ぐ形でストップしていたためここで赤旗が提示され、トップが54周を消化した時点で中断となってしまう。
これにより#18小暮卓史の築き上げた大量リードは一気に消失。
その背後にはなんと13番手スタートの#22モチュールZが迫ってきた。
上位陣が相次いでトラブルやアクシデントに見舞われる中、#22モチュール、
#23ザナヴィのニスモ勢は安定したペースで順位を上げてきていたのだ。
車両の排除やコースの修復などにより24分間の中断の後、午後4時4分にレースは再開された。
リスタート直後の1コーナーではトップのTAKATA童夢NSXに2位のモチュールZ、3位のZENT SCが襲い掛かるが、
TAKATA童夢を駆る道上龍はかろうじてトップを死守。逆にZENTの立川は#35バンダイSCのピーター・
ダンブレックに追突されてスピン、大きく順位を落としてしまう。
この隙に3位に進出してきたのが、6番手でレースを再開した#23ザナヴィZだ。
2台のニスモ勢の追撃を受けながらもトップを守っていたTAKATA童夢だったが、69周目に突如スローダウン。
これにより18号車は3位に後退して70周終わりでピットイン。トップのモチュールZもここで2度目のルーティーンストップを消化し、
モチュール5位、TAKATAは7位でコースに復帰する。
ここから巻き返しを図りたいTAKATA童夢NSXだったが、今度は駆動系にトラブルが出てしまい、その後もラップタイムは安定せず、 86周で再びピットイン。頭からガレージに突っ込んでレースを終えた。
これでトップに繰り上がった#23ザナヴィZは72周終わりでピットイン。
ライアンから本山に交代してモチュールZの前でコースに復帰した。
本山は冷えたタイヤを懸命にコントロールしながら周回遅れのGT300車両を交わし、
背後から迫ってくるチームメイトの#22松田次生のアタックも退けてアウトラップを走り抜ける。
この間に暫定トップに立った#3イエローハットZが73周終わりでピットに入ったため、ザナヴィZはここで再びトップに立つこととなった。
その後も本山は終始安定したペースで残り周回数を走りきり、昨年のオートポリス戦以来4戦ぶりの勝利をチームにもたらすこととなった。
GT300は、 ポールの#88アクティオムルシエRG-1が序盤から快調に飛ばしていく一方で、2位以下は#33ハンコック、 #26ユンケルの2台のポルシェを中心にめまぐるしく順位が入れ替わる展開となった。
ラップタイムは伸び悩むもののストレートスピードに勝るポルシェ勢の攻略に手を焼く#43ガライヤ、#2紫電、#101MR-S。
これら後方集団の混乱をよそに88号車は2位以下に実に20秒以上もの大量リードを築き上げたが、 彼らの大半が1ストップだったのに対して88号車は2ストップを選択したことと、 53周目(GT300にとっては50周目)に赤旗中断となったことにより、このリードは帳消しとなってしまう。
その上、66周目の1コーナーで88号車を駆る山西康司が痛恨のスピン。
結果的にはこのスピンがあだとなり、#43ガライヤの先行を許すこととなってしまった。
実は燃費に不安を抱えていたガライヤは2ストップをも想定したペース配分で走行しており、
50周目での中断は命取りになりかねない状況だったのだが、
88号車以外にも101号車のスピンや2号車のドライビングミスによる後退などがあり、
結果的にはGT復帰3戦目で勝利を挙げることとなった。
88号車は山西の猛追も届かず、ガライヤに14.3秒差まで迫ったところでレースを終えた。
次戦はセパン。6月24日決勝だ。
今回は日本とマレーシアの国交回復50年を祝う記念大会となる。
Text:Kazuhisa SUEHIRO / Photo:Keiichiro TAKESHITA