今シーズンから新たに本格的なフォーミュラカーを用いることになった女性のためのシリーズ、KYOJO CUP(語源は「競争女子」)が、5月10日、富士スピードウェイで開幕し、海外ドライバーも含め、緒戦から20台のエントリーを集めた。
2017年にスタートしたKYOJO CUPは、これまでの入門用レーシングカーのVITA-01車両を使用していたが、今シーズンから、本格的なフォーミュラカーKC-MG01の採用に踏み切った。KYOJO CUPを統括する関谷正徳プロデューサー(以下、関谷P)にその目的や狙いを聞いた。
「多様性が求められる時代へと変化するなかで、自動車レースをどうしていくのか?という問いに対する答えは出ていないように思います。自分としては“スポーツ”としてとらえたい。これまでは自動車の競争という考えがベースにあり、スポーツの視点が欠けていたように感じます」と関谷Pは切り出した。
「スポーツとして考えると、他のスポーツ同様に女性の参加が必要で、今はその環境が整っていないと感じています。そこで、女性が参加できる環境を整え、スポーツとして見せることで、レースを子どもたちの憧れとなるスポーツにしたい」と、モータースポーツ全体の発展を考えて、KYOJO CUPを立ち上げたと語った。
これまで8年間、VITA車両でその土台づくりをしてきたが、今シーズンはいよいと次のステップに進むことになった。その狙いについては、「今は変革期ととらえ、ここがチャンスだと思いました。使用できる車両が身近にあったことも大きいです。世界の女性ドライバーが憧れる環境を日本で作りたいと思っています」と、新生KYOJO CUPを世界的に認められるシリーズに育てたいとの構想を披露してくれた。
つまり、レーシングカートやVITAによる女性によるレースの頂点として新生KYOJO CUPを位置づけ、ここで世界中から選ばれた女性ドライバーがしのぎを削るというわけだ。
もちろん、課題がないわけではない。現状はイコールコンディションを確保するため、保有する27台のマシンを運営側が一括管理をし、レンタルするという形をとっている。過去にもこのようなスタイルで開催されたシリーズはあったが、車両を維持できずに頓挫したという歴史もある。
また、現在は富士スピードウェイのみの開催だが、世界的に注目を集めるには、国内の他のサーキットや、アジアへの進出も視野に入れる必要がある。
その点を尋ねると「他のサーキットがウチでもぜひ開催したいといわれるように、まずは現状でシリーズをきちんと発展させることです」と、まずはスタートした新生KYOJO CUPを軌道に乗せることを考えているようだった。
それでも、関谷Pの新たな挑戦には、レース界がこれまで見落としていた視点に着目した新鮮さ、発展の可能性を感じる。新たなファンの獲得にも一役買ってくれることは間違いなさそうだ。
参加車両もKYOJO CUPらしく、カラフルで見た目も楽しい、ピットに掲げられるドライバーズボードも写真入りのおしゃれなものだ。
レースでも、上位陣はFIA-F4と同等のラップタイムで見ごたえのあるバトルを展開していた。まだ、ドライバーのレベルも揃っているとは言い難いが、KYOJO CUPのこれからに大いに期待をしたい。
Text: Shigeru KITAMICHI