SUPER GT

第3戦鈴鹿 チームポイントは2にとどまるも次戦に向けて光明(Arnage)

 2022年のSUPER GT第3戦は、5月28日〜29日に鈴鹿サーキットで開催された「たかのこのホテル鈴鹿GT300km」。

 岡山、富士と続いた2レースは、Arnage Racingにとって、本来チームが目指していた方向性とは全く違う、不甲斐ないレース内容となってしまっていた。このことに危機感を感じたチームは、第3戦鈴鹿ラウンドを戦うにあたり、これまでのレース内容を打開するために、従来のこの車両のセットアップの延長線上からは外れ、全く逆の発想からのセットアップにチャレンジすることを決断した。

 まず、これまで問題視されていたリアの荷重不足について、リアに荷重が乗らないのではなく、リアに乗った荷重をグリップとして使えていないことが問題なのではという仮説を立て、リアの荷重をうまく利用する方向性のセットアップを入れることにした。

 ファクトリーでは、リアのバネを固め、サードダンパを新設するなど、いくつかの試みを投入、さらに童夢エンジニア陣、アドヴィックスエンジニア陣の力もお借りしてさまざまな理論上の検証を行い、現場でもサポートを仰ぐことになった。

 しかし、チームが見定めたこの方向性は本当に的を射ているのか、対策が功を奏するのか。

 鈴鹿サーキットは1周の距離が長く、MC86の得意とするサーキットでもあるため、是非とも完走ポイント3を獲得したいところである。週末の天気予報は、晴れて季節外れの暑さとなることが予想され、過酷なレースとなることは間違いなかった。

<5/28 予選日>

 予選の行われる土曜日は、朝から青空が広がり、気温の上昇は予想されるものの、湿度の低い爽やかな快晴に恵まれた。

 Rd.3鈴鹿では、レギュラードライバーの加納選手に代わって山下亮生選手がAドライバーとして登録され、阪口選手とともに、チームのお膝元である鈴鹿ラウンドを戦うことになっていた。

 午前中に行われた公式練習は、サポートレースがディレイした影響で、9:35より開始となった。まず、阪口選手がソフト目のタイヤでコースに出て、タイヤテストを行った。ファクトリーで入れた新しい試みは、4Lapを走行したところで既に効果を発揮して、阪口選手からはリアがどっしりしているとのコメントを得た。そして、その後履いてコースに出たハード目のタイヤは、ソフトタイヤに比べて決勝向きで、さらにしっかり感があるとのコメントを得た。しかし、このフィーリングの良かったハード目のタイヤは、今大会に2セットしか準備されておらず、また、翌日の決勝では季節外れの高温が予想されていたため、チームはこのタイヤを決勝用と定め、ハード目のタイヤは温存されることになった。

 その後、山下選手がソフト目のタイヤで13Lapほど慣熟走行を行い、ターゲットとしていた2分01秒台をクリアするなど、山下選手もマシンへの理解を深めていった。

 チームは公式練習の終盤、阪口選手を再度コースに送り出して、チェッカーギリギリまで、決勝を想定してのセットアップを繰り返し、300kmレースに向けてセットを煮詰めていった。

 またチームは、燃料満タンからスタートする確認も行った。これまでのレースでは燃料満タン状態でのバランスが非常に悪く、リアが動くために、ドライバーは正常な走行ができず苦しんでいたが、新しい考え方から導かれたセットアップのおかげで、燃料の荷重移動が車のバランスに及ぼす影響は抑えられ、少なくなることも確認できた。

 14:45から行われた予選で、Arnage RacingはA組から出走。今大会でもQ1を担当する阪口選手が満を辞してコースイン。ライバルマシンの状況を見計らって慎重にタイヤに熱を入れ、タイミングを図っていたが、ラスト4Lapのところで1’57.980を叩き出し、7位でQ1を突破することができた。

 岡山開幕戦から今季2度目のQ2進出に、ピットは大いに湧いた。

 ところがQ2を待つ間に、メーターが表示されないトラブルが発生。このままでは走行することが不可能なため、チームは急遽ル・マンのエンジニアにピットまで来ていただき、Q2までのわずかな時間になんとかトラブルを修復することができた。

 Q2を担当するのは、2020年もてぎラウンド以来、久しぶりの予選アタックとなる山下亮生選手で、山下選手はコースINして早々にアタックを開始。3Lap目で2’00.771をマークしてクラス13番手につけた。さらに上を目指そうと山下選手はもう一周アタックを試みたが、気持ちが逸ったか、無念のコースアウト。ポジションアップを果たすことはできなかった。しかし、Arnage Racingは地元鈴鹿での決勝を13番手からスタートすることとなり、意気上がるメカニックは暗くなるまでピット練習に励んだ。

<5/29 決勝日>

 Rd.3鈴鹿の決勝日も青空が広がり、前日にも増して気温の上昇が予想される気候となった。場内では熱中症への注意喚起が再三放送されている。

 前日の公式練習で得た好感触を決勝に繋げようと、チームはウォームアップ走行でも決勝を見越してのピットシミュレーションを行って、レースに備えた。

 鈴鹿サーキットのスタンドには大勢のモータースポーツファンが詰めかけ、上昇する気温とも相まって、大観衆の熱気がグリッドまで伝わってくるようだ。

 グリッドにつく直前、阪口選手が微弱なマシンのふらつきを訴えたため、メカニックが急遽グリッド上でチェックを行う場面もあったが、特に重大な問題は見つからずいよいよ決勝の時を迎えた。

 第3戦鈴鹿決勝は、ウォームアップ走行の際起きたアクシデントの影響で、開始が10分遅れとなり、14時40分に2周のフォーメーションラップの後始まった。気温30度、路面温度50度と真夏を思わせるコンディションの中で、2Lap目からいきなりFCYが導入され、過酷なレース展開を予感させる。

 Arnage Racingは、第1スティントを担当する阪口選手が、13番手という好グリッドからレースをスタート。マシンのバランスはこれまでになく良好で、阪口選手は2分02秒台でプッシュを続け、前方のライバルマシンを脅かす勢いを見せる。コース上ではマシントラブルによるクラッシュや、タイヤをバーストさせるアクシデントが続き、阪口選手は10Lap目にポジションアップ、さらに14Lap目には目前の2号車を抜き去り11番手に躍り出た。

 その頃になるとルーティンピットをこなすチームも出始めたため、さらに見かけ上の順位は上がって、8番手にまで浮上、阪口選手は、上位チームのペースに引けを取らない非常に良いペースで、17Lap目にベストラップとなる2’01.932をマークするなど順調にレースを続けていた。

 ところが18Lap目、潮目が変わり始める。

 阪口選手から、バックモニターのカメラを留めるステイが、リアウイングから折れてしまったらしいと無線が入った。さらにその次のLapでリア周りの異変が報告される。ピックアップの可能性も考えられることから、チームは阪口選手をコースに留めて走行を続けさせた。しかし、タイミングモニターの数字は数周前までの好ペースから、明らかにペースダウンしていることを示している。

 チームは当初、ドライバー交代のタイミングを阪口選手のMAX周回数となる34周に見定めていた。しかし、阪口選手のコメントから、そこまでスティントを引っ張ることはとても無理だと判断したチームは、予定より10Lap早い24Lapで阪口選手をピットに呼び戻した。

 メカニックが急いでタイヤを確認すると、リアタイヤはブローアウトするまでに至っている。マザーシャシーのお家芸であるタイヤ無交換作戦でピット時間を大幅に短縮することも想定に入れていたArnage Racingだったが、チームはやむ無くリアタイヤ2輪を交換、給油とドライバー交代も済ませて、第2スティントの山下選手をコースに送り出した。

 10番手でコースに復帰した山下選手だったが、阪口選手のスティント後半で、バックカメラを喪失してしまったために、バックモニターが映らなくなっており、チームは無線で山下選手をサポートしていた。

 しかし、28Lap目、更なる不運がチームを襲う。ヘアピン付近で山下選手と10号車の富田選手が接触、山下選手はスピンを喫してコース上に止まってしまった。山下選手は安全を確認してレースに復帰したが、接触の影響か「タイヤがおかしい」と訴えたため、チームは念のため山下選手を再度ピットに呼び戻してタイヤを4輪とも交換、29Lapで山下選手がコース戻った時には、ポジションは24番手にまで脱落して勝負権は遠ざかってしまった。

 その後もレースは、34周目にFCYからSCが導入されるなど、大荒れの展開を呈し続けた。山下選手は諦めずにプッシュを続けて過酷なレースを走り切り、21位でチェッカーを受けることができた。

 結局、Arnage Racingは鈴鹿ラウンドでも1Lap遅れの完走ポイント3を獲得することはできず、チームポイントは2ポイントにとどまった。

 しかし、これまで見いだすことのできなかったセットアップの方向性を捕まえたことは大きな収穫であり、チームは2ヶ月後に開催予定の450kmレースに向けての光明を見出すことができた。

Arnage Racing


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