筑波・富士S-FJ選手権

S-FJ:第7戦富士予選 驚速ルーキーの稲葉摩人が大差のトップタイムもペナルティでグリッド降格 鈴鹿から遠征の佐藤巧望がポールポジションを獲得

 2021年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権最終第7戦予選が11月20日(土)に富士スピードウェイで開催され、スポット参戦の佐藤巧望(MYST.KK-SII.制動屋)がポールポジションを獲得した。

 今シーズン、オリンピックの影響で今回だけの開催となってしまった富士スピードウェイでのスーパーFJレースだが、シリーズを追って筑波からやって来た選手に加えて鈴鹿シリーズの上位ランカー、さらにスポット参戦の選手を加えて今期最多の17台がエントリーした。

 4ポイント差でシリーズチャンピオンの座を争う野島遼葵(Deep-R・10V・ED)と安田航(Fガレージ&Sウィンズ SII)の戦いがまずは焦点で、予選を前に意気込みを聞いた。

野島遼葵(Deep-R・10V・ED)シリーズ1位 87ポイント

チャンピオンを争う野島遼葵(Deep-R・10V・ED)

 「2日間練習できて(安田選手は1日)その分アドバンテージがあるかなとは思うが、昨日は同じようなタイムだった。1分53秒8ぐらいで、トップは53秒1とかなので、そこはもっと(タイムを)削らないと。(初めての富士スピードウェイの印象は?)スピード感があってすごく楽しい」

安田航(Fガレージ&Sウィンズ SII)シリーズ2位 83ポイント

チャンピオンを争う安田航(Fガレージ&SウインズSII)

 「(出身地が近いので)ここ富士スピードウェイで勝ちたい。チャンピオン以前にまずレースで勝ちたい。昨日初めてコースを走ったがシミュレータで練習した甲斐があって、思ったより感触がよく、うまく走れれば上位に食い込めるかなと思う。(スピードレンジの違いは?)筑波とは違う難しさはあるが、それはあまり課題ではない。(富士は)レースでスリップストリームが効くが、そこは筑波では経験できないことなので、そこは考えて、レースの方に集中していきたい」

 シリーズを通じて常にトップ争いを演じて来た両者だが、今回はここに激戦区の鈴鹿シリーズで上位を争ってきた選手が参戦してきたことで、レースの展開は想像のつかないものになった。

 鈴鹿で勝ち星こそないものの、シリーズ全戦表彰台獲得でランキング2位の佐藤、シリーズ最終戦で王者岡本大地に真っ向勝負で土をつけて周囲を驚かせた冨田自然(とみたあるが)(MYST KKS-I)、同じく1勝をあげてシリーズ5位の森山冬星(MYST)といった有力選手が上位に絡んでくると予想され予断を許さない状況だ。

 そしてもう一人、今回ZAP SPEEDからレースデビューした稲葉摩人(いなばまひと)(ZAP SPEED 10VED)。カート出身で現役高校生である稲葉だが、前日までの練習走行ではトップクラスのタイムを出していたという事で、他のチームからマークされていて、事実このレースの台風の目となった。

ポールポジションは佐藤巧望(MYST.KK-SII.制動屋) 予選2位は森山冬星(MYST) 予選3位は予選5位は冨田自然(MYST KK-SⅡ) 予選4位は野島遼葵(Deep-R・10V・ED) 予選5位は冨田自然(MYST KK-SⅡ) 予選6位は稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED) 予選7位は田上蒼竜(ZAP SPEED 10V ED) 予選8位は板野貴毅(ZAPムトウ・サービス10V)

 20分間の予選は午前8時15分コースオープン。初冬の富士スピードウェイは抜けるような青空だが気温、路面温度共に低く、野島を先頭にコースインした各車は左右にマシンを振りながら走行してタイヤの発動を待つ。

 残り時間12分を切ったあたりからようやく本格的なタイムアタックが開始。まずは富田が1分53秒640でトップに立ち、続いて稲葉が53秒793、0.153秒差で2番手、佐藤が53秒884で3番手につける。野島と安田はまだ1分55秒台で6番手、7番手に並んでいる。

 次の周回で、稲葉が1分53秒166をマークして首位に立つ。初レースの稲葉だが噂通りの速さを見せる。富田は53秒607で2番手。しかし富田はイエローフラッグ下での追い越しが審議対象と表示される。また稲葉はじめ複数の車両がコースイン時のピットレーン速度違反で審議対象に。

 残り6分、稲葉はさらにタイムを縮め1分53秒008、富田、佐藤の順位は変わらず、森山が54秒178で4番手に進出。野島も54秒209で5番手へ。

 残り4分、佐藤が1分53秒374の自己ベストで2番手へ、稲葉とは0.366秒差。富田を挟んで前戦筑波でのデビューレースで3位を獲得して非凡さを見せた田上蒼竜(ZAP SPEED 10VED)が53秒612で4番手へ。以下森山、松田大輝(MYST KK-SII)と鈴鹿組が続き野島は7番手、安田9番手と中団に埋もれている。

 残り2分、野島が1分54秒を切って53秒975で6番手へ浮上すると、安田も次の周回で53秒937をマークして野島を逆転。

 勢いに乗る稲葉はついに1分52秒559とただ一人52秒台に入れる。富田も53秒080までタイムを削り2番手へ上がるが稲葉とは0.521秒の差がついている。佐藤は3番手へドロップ。

 20分が経過しチェッカードフラッグが振られる中、各車最後のタイムアタックを行う。ここで田上は1分53秒284で佐藤を上回り3番手へ。佐藤は4番手。森山5番手。安田、野島、坂野貴毅(ZAPムトウ・サービス10V)と続いた。

 コンマ1秒を争う予選で2番手に0.5秒以上の大差をつけた新人稲葉の速さに周囲は驚かされた。しかしその後、稲葉はピットレーン速度違反があり3グリッド、また複数回の走路外走行があったと判定されて3グリッド、計6グリッドの降格がジャッジされた。

 また、富田はやはりイエローフラッグ下の追い越しで4グリッド降格。田上も走路外走行複数回で4グリッド降格と、なんとトップ3台が揃って降格の憂き目に遭い。ポールポジションは4番手タイムの佐藤のものに。5番手タイムの森山が2番グリッド獲得。安田、野島がセカンドロウに並んだ。

 圧倒的なスピードを見せた稲葉は7番手スタートとなる所を田上の降格に助けられて6番グリッド、富田がその前5番グリッドからスタートする事になった。

■予選後のコメント(富田、稲葉以外は走行直後のもの)

ポールポジション 佐藤巧望(MYST.KK-SII.制動屋)1分53秒374 トップと0.815秒差(4番手タイムからグリッド昇格)

ポールポジションの佐藤巧望(MYST.KK-SII.制動屋)

 「富士スピードウェイは今回が初めて、昨日が初走行だった。鈴鹿とはコースの特徴も走り方も全然違う。昨日はそれに慣れることに重点を置いていた。(タイムは目標通り?)昨日の練習の方がタイムがよかった。ユーズドタイヤで53秒0くらい出て、走れば走るほどタイム向上していて、今日は52秒台で行けるのかな? と思っていたので、このタイムは想定外だ。(決勝に向けては?)逃げられるレースになるとは思っていないので、抜きつ抜かれつになる中でうまく展開を読んで、最終的にトップで帰って来られるように頑張る」

2位 森山冬星(MYST) 1分53秒453 トップと0.894秒差(5番手タイムからグリッド昇格)

予選2位の森山冬星(MYST)

 「狙っていたタイムより全然遅い。今回(JAF-F4と)ダブルエントリーで、練習は1回しかできなかったが、自分としてはもうちょい行けるかなと思っていた。しかしタイムが伸びなくて苦しんでいて、最後の方で(ようやく)慣れてきたのだが、あと一歩足りなかった。(ダブルエントリーは大変?)大変ではあるが、こういうチャンスを与えてもらえることは感謝しかない。富士のレースは初めてでコース走るのも昨日が初めてなので、そこは結構苦労した」

3位 安田航(Fガレージ&Sウィンズ SII) 1分53秒937 トップと1.378秒差(6番手タイムからグリッド昇格)

予選3位の安田航(Fガレージ&SウインズSII)

 「正直野島選手の前にいるのがびっくりするくらいだ。(序盤に)Aコーナーでスピンして、最初は他車のスリップが使えるいい位置だったのに単独走行になってしまった。それで(タイム出すのは)厳しいかな、と思っていたが、単独走行を頑張って6番だから、スリップが効けばバトルでバシバシ行けそうな気がするので、野島選手を離して、チャンピオンを取りたい」

4位 野島遼葵(Deep-R・10V ED) 1分53秒975 トップと1.416秒差(7番手タイムからグリッド昇格)

予選4位の野島遼葵(Deep-R・10V・ED)

 「スリップを取ろうとしてうまくいかなくて、それで走りがまとまらなかった。昨日のユーズドタイヤよりタイムが出なかったので、気持ちも焦ってしまった。(安田選手とは並んでいるが?)どうしても前にいかなきゃなと思う。セッティングうんぬんではなく自分の問題なので」

5位 冨田自然(MYST KKS-I) 1分53秒080 トップと0.521秒差(2番手タイムから3グリッド降格)

予選5位の冨田自然(MYST KK-SⅡ)

 「(富士スピードウェイを)スーパーFJで走ったのは昨日が初めてで、経験がなかったが自己ベストタイムを更新できた。昨日2回走って、その後に(走りを)考えて今日試したことがうまく嵌まった。色々発見があって自分の中で成長できた予選だった。(タイムが速いのでスタートが決まればいい勝負になる?)なんとか上がって行って、元の位置(2番手)以上に行きたい」

6位 稲葉摩人(ZAP SPEED 10VED) 1分52秒559(トップタイムから計5グリッド降格)

予選6位の稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED)

 「(ピットに戻るやまずはチーム関係者に謝罪した後で)グリッド降格になってしまった。初めてのレースで自分の速さやコースを(いかに)走るかばっかりを意識していたので、ツメの甘さが出てしまった。タイム的には目標よりコンマ2秒くらい速かった。セクター3の坂を上っていきながら、これはタイムが出るなという感覚はあったので、そこはイメージ通りだった」

7位 田上蒼竜(ZAP SPEED 10VED) 1分53秒284 トップと0.725秒差(3番手タイムから4グリッド降格)

予選7位の田上蒼竜(ZAP SPEED 10V ED)

 「52秒台を狙っていたので自分の中では及第点を与えられない。ミスがあったというより攻めきれなかったという感じだ。今日は新品タイヤを履いてみて、そこでマシンの違いに適応できなかった。決勝に向けてはセッティング含めてもうちょっと考えたい。それでも思ったよりは前の方だったので優勝狙って頑張る」

8位 坂野貴毅(ZAPムトウ・サービス10V) 1分54秒094 トップと1.535秒差

予選8位の板野貴毅(ZAPムトウ・サービス10V)

 「練習では54秒半ばしか出ていなかったので自己ベストタイムではある。ストレートで(車速の)伸びが無かったのでスリップストリームありきでの走りになったのだが、うまくスリップを使えなかったし前に引っかかってしまった。後半は前がいなくてクリアラップで行くしかなくなったのだが、やはりタイムが伸びなかった。そこが反省点だ。(富士はスリップ効くので中団スタートでも戦える?)決勝はコーナーもチャンスあれば行くが、基本はストレースで前に出られるように頑張る」

 決勝は13時5分開始予定。2番手以下を0.5秒以上引き離した稲葉の速さについては各選手驚きを隠さず、彼が6番手からスタートする事でレースは一段と激しいものになるだろうと予想している。

 また、チャンピオンを争う野島と安田にとっては、セカンドロウからのスタートで相手を出し抜けるかがカギになりそうだ。

Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA


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