SUPER GT

SGT:第6戦鈴鹿 WAKO’S EXE ASTON MARTIN、チームの地元鈴鹿でポイントゲットを目標に気合を入れて臨むも、無念のリタイヤ。今季全戦完走の夢も破れる。 (Arnage)

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 台風の富士ラウンドからさらに3週間。「真夏の三連戦」と呼ばれる今シーズン中盤の連戦の最後を飾るのは、鈴鹿サーキットで行われるSUPER GT第6戦International SUZUKA 1000km。今年で43回目となる伝統の鈴鹿1000kmレースは、Arnage Racingにとってはチームのお膝下で行われる特別なレース。今季開幕から完走を続けているチームにとっては、チームポイントが二倍になるこのレースを是非とも完走して、来季への励みとしたいところである。開幕以来目覚ましい進化を続けている加納選手、鈴鹿では走りに定評のある安岡選手に加え、富士500kmレースで見事なSUPER GTデビューを飾ったNanin選手を迎えて臨む鈴鹿ラウンドに、チームは気合十分でサーキット入りした。前戦からの2週間少々のメンテナンス期間、ガレージでは長距離レースに備えてカウル類の修理、ボルト類の入念なチェックをした。また、長い間傷んだ状態を修理しながら使用してきたフロントバンパーを新調して、車両は剛性感のある状態に仕上がった。なお、今大会に向けて変更されたGT300クラスの参加条件に基づき、Aston Martin Vantage GT3は25kg加重されることとなり、前戦で軽減されていたウエイトが再び積まれた。

August 30th Qualifying
  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ
  • 気温:開始時30℃→終了時28℃ / 路面温度:開始時40℃→終了時34℃
  • 入場者:25,000人

gt_r06_arnage-2.jpg  レースウィークの三重県地方の天気は安定せず、見るたびに変わる天気予報に気をもみながら迎えた土曜日であった。しかし、幸い朝からまぶしい太陽が顔を見せ、気温はそれほど高くないが真夏の三連戦のなかでは最も夏らしい予選日となった。9時40分から行われた公式練習では、前戦に引き続いて非常に好調なマシンを、3人のドライバーが時間いっぱいドライブすることができた。SUPER GT参戦が二度目となるNanin選手を迎えるにあたっての、エンジニアの腐心のセットアップ「2014Suzukaスペシャル」が的中し、3人のドライバーはそれぞれ、車両の感覚を良い状態で掴むことができた。なかでもNanin選手は13Lapを順調に走行できたため、4か月ぶりのGTカーのドライビングの感覚を再確認することできた。

 午後になっても安定した天気は変わらず、からりと晴れたドライコンディションの中、予定通り14時から予選が行われた。満を持して安岡選手がQ2進出をかけてコースイン。4Lap目に2’01.284をレコードして更にアタックのチャンスを狙うも、まもなく提示された赤旗で気を削がれてこれ以上のタイムは出ず、12位で終了した。しかし、ようやく念願のQ2進出が叶い、今季初めて、安岡選手から加納選手にバトンが渡され、14時40分からQ2が開始。加納選手が渾身のアタックをかけ、途中の赤旗提示を挟んで最後まで粘り、2’02.392のタイムでQ2を終えた。結局、最終的な予選結果は他車両のアクシデントなどで、24台中11位となり、第4戦菅生ラウンドに次ぐ好ポジションから明日のレースをスタートできることになった。チームとしては昨シーズンの鈴鹿ラウンド以来一年ぶり、加納選手としては昨年の菅生ラウンドぶりの加納選手Q2アタックにピットは大いに沸き、翌日の決勝に備えて夜遅くまで車両のチェックに勤しんだ。予選の前夜、鈴鹿から大阪に車を走らせ加納選手宅のシミュレーターで深夜までトレーニングを行ったドライバー3人は、決勝前夜にも遅くまでミーティングを行い、加納、安岡両選手がNanin選手のドライビング習熟をサポートした。

  • P1 #61  SUBARU BRZ R&D SPORT 佐々木 孝太 / 井口 卓人 (2'00.279)
  • P2 #3  B-MAX NDDP GT-R 星野 一樹 / ルーカス・オルドネス / ウォルフガング・ライプ (2'00.398)
  • P3 # 0  MUGEN CR-Z GT 中山 友貴 / 野尻 智紀 / 道上 龍 (2'00.424)
  • P11#50 WAKO’S Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒 / ナニン・インドラパユーング (2'01.284 )
August 31/sup>st Race
  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ
  • 気温:開始時27℃→終了時28℃ / 路面温度:開始時31℃→42℃→終了時36℃
  • 入場者:36,000人

gt_r06_arnage-3.jpg  鈴鹿地方は朝方少量の降雨があったが、8時30分からのフリー走行が始まる頃には、前日同様日差しが戻った。夏休み最後の日曜日となったこともあり、鈴鹿サーキットには、早朝から多くの観客が詰めかけた。

 この日の朝も、WAKO’S Exe Aston Martinは非常に順調にフリー走行をこなし、安岡選手とNanin選手がコースに出て車両の感覚を確かめた。特に、走行時間の大半をNanin選手のために割いたおかげで、Nanin選手はさらにドライビングのブラッシュアップをすることができた。また、加納選手もそのあとのサーキットサファリの時間を使って車両の感触を確認し、1000kmレースへの準備は整った。

gt_r06_arnage-4.jpg  いよいよ定刻の12時15分、パレードランのあとフォーメーションラップへと続き、2014年SUPER GT最大の山場、鈴鹿1000kmレースの幕が切って落とされた。6時間の長丁場となるレースでは4回以上のピットインが義務付けられているが、燃費の悪いAston Martinは5回のピットインが予定されており、そのスタートを切るドライバーは安岡選手。安岡選手は長いレースの後半戦にスタミナを蓄えておくかのように、2分05秒台を中心とした余裕の走りで、淡々と序盤の1スティント目を走行。目新しい順位の変動はなく、29Lapを走行してピットインした。タイヤ交換を終え、Nanin選手にステアリングを委ねたWAKO’S Exe Aston Martinは22位でコース上に復帰、すべてのマシンがピットインを終えて順位が落ち着く54Lapあたりで順位を8位に上げていた。Nanin選手は安定したドライビングで、時々2分05秒台を出すなど、ベテランドライバーに引けを取らない走りを見せ、20Lapほどを走り終えて加納選手に交代するため、ピットインした。給油とタイヤ交換を終えてコースに戻った加納選手操るWAKO’S Exe Aston Martinは、一旦落としたポジションをすぐに再び11位まで上げ、順調に走行を始めた。このところ進化目覚ましい加納選手は、2分05秒台前半のタイムでの走行を続けて、ポジションは81Lap目に再び8位まで浮上。このまま上位を狙っていきたいチームは、かねてから3回目のピットインをタイヤ無交換でいく作戦を立てていた。85Lap目、ピットインまでのこり3Lapのタイミングで、監督が加納選手にタイヤに問題がないことを確認した直後、無線から加納選手の悲痛な声が響いた。「駆動がない!」 86Lap、スプーンカーブ1つ目のコーナー付近のコース上で、WAKO’S Exe Aston Martinはそれ以上動くこと叶わず、加納選手は車両から降りた。自走することも、牽引でピットに戻すこともできず、車両をコースに残したまま、Arnage Racingは無念にも鈴鹿ラウンドをリタイヤで終えることとなった。

  • P1 #60 TWS LM corsa BMW Z4 飯田 章 / 吉本 大樹 / 佐藤 晋也
  • P2 #31 OGT Panasonic PRIUS 新田 守男 / 嵯峨 宏紀 / 中山 雄一
  • P3 #7  Studie BMW Z4 ヨルグ・ミューラー / 荒 聖治 / アウグスト・ファルフス
  • リタイヤ #50 WAKO’S Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒 / ナニン・インドラパユーング
チーム代表 伊藤宗治
 まず、駆動系のトラブルが原因で、レース半ばでリタイヤする結果となったことにつきまして、地元のレースということで様々な面で応援やサポート頂いたスポンサー様、ファンの皆様、ヨコハマタイヤ様、その他関係各位にはお詫び申し上げたいと思います。ご期待に添えず、誠に申し訳ありませんでした。さて、この長丁場となるレースにあたり、チームとしても気合を入れていただけに、半分しか走ることができなかったことについては非常に残念に思います。しかし、エンジニア的には作戦も上手く行っておりましたし、何よりも三人のドライバーの成長が目に見えて現れていたように思われたレースでした。加納さんがどのタイヤコンディションでも自信を持って走っていたこと、安岡がこちらの意図をうまく汲んで自分のするべき仕事をしていたこと、そして、ナニンがその二人の導きのもと堂々とGTドライバーとしてレースに臨めていたこと。これらのドライバーの成長は素晴らしいものでした。しかし、その一方で、そんなドライバーに合わせて進化しなければならないはずのチーム力がついていけていないことが顕著に感じられたのも、もう一つの所感です。もっとチームの皆が緊張感を持ってレース感を磨かなければ、ドライバーの進化から置いていかれてしまう。チームもドライバーに合わせてもっと進化すべきなのです。今後、ドライバーも含めての強いチーム力を培っていくために、このリタイヤという結果を踏まえて、自分が必要だと感じたところでした。応援ありがとうございました。
加納選手のコメント
gt_r06_arnage-5.jpg  安岡くんはスタートから順位を守りつつも前を伺いながら行ってて、ナニンくんのペースもよかったですし、自分の番になって、ペースも悪くなかったんで、中盤から後半にかけてが勝負かなあっていうところで、トラブルやったんでね。残念な気持ちはあります。それと、折角ここまで来てた完走記録が途絶えちゃったんも残念ですね。ただ1000kmレースともなると、それまで車も使ってきてるし、いろんなところがひずんだり傷んだり、っていうのもあるんで仕方ないかなあと。ただまた、ここから気持ちを切り替えて、次回はタイ戦ってことで、今日一緒に乗ったナニンくんと僕で戦うわけやし、またみんな初めてのサーキットになってくるんで、それに、アストン的にも合わないことも全然ないと思うんで、そこでまたピシッと結果を出して、またちょっと流れを戻せるように、頑張りたいなと思ってます。残りあと2戦なんでね、なんとか、いい結果が出るように頑張ります。
安岡選手のコメント
 すごく楽しみにしていた鈴鹿のレースだったので、結果としてリタイヤで終わってしまったことはすごく残念です。あとは、(昨シーズンの)富士の500kmの時もそうだったんですど、結構いろいろ考えて、ペースを調整して走ってて、それで終わってしまったので、それはちょっと残念というか、無念だなあという気持ちです。鈴鹿は攻めて走るってなんぼっていうサーキットのはずなんですけど、予選もやや抑えめでしたし、決勝は、最後の方が勝負だと思っていました。140周過ぎて、気温が落ちてきて、路面がグリップ上がって、2分2秒台とかでラップする…そういうイメージで、そこに自分を温存していましたので、拍子抜けというかお預けを食らった感じですね。トラブルは、仕方がなかったですね。とりあえず3人が一回ずつ走れたのはよかったと思います。加納さんが富士で覚醒して、今回も順調に、その延長線上ですごい安定して速く走ってくれて、ナニンくんは、金曜日のシミュレーターをやった時には苦戦してたんですけど、なんとか今日の朝の段階までにかなりドライビングの修正ができていたので、二人をなんとかもう一回走らせてあげたかったです。とはいえ、二人は次のタイが待ってますので、ここでできなかった分、タイでまた、僕がいいドライビングを引き出すお手伝いができるようにしたいと思います。そしてなんとか、タイでまたポイントとれるようにしたいなと思ってます。応援ありがとうございました。
ナニン選手のコメント
 今回2戦目で30周くらい走りましたけど、前の富士よりすごくもっと自信が持てました。タイムもコンスタントでしたし、今回の車もほんとによかったです。まあ残念ですけど、たぶん車が壊れなかったら、ぜったいポイントを獲れていたと思います。次はタイです。このままいけばいい結果が出ると思います。ありがとうございました。チームにとってホームゲームともいうべき鈴鹿ラウンドで、大勢のお客様にたくさんのご支援や応援を頂き、1000kmを走りぬくことこそご恩返しと考えて万全で臨んだレースであり、開幕より続けてきた完走をこのようなかたちで終えてしまったことは痛恨の極みです。応援してくださって皆様にはお詫び申し上げます。来る10月4日~10月5日にタイブリラムサーキットにて開催される次戦タイラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。
Arnage Racing 2014 SUPER: GT Race report


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