SUPER GT

SGT:第2戦富士 「ナニン選手のデビュー」と「去年のリベンジ」という二つのミッションを見事クリア (Arnage)

 第二戦富士ラウンドは500kmという長丁場、Arnage Racingが第三ドライバーとして迎えたのはNanin Indra-Payoong (ナニン・インドラパユング)選手。タイからやってきた弱冠19 歳の若武者である。昨年のFormula3Nクラスで総合2位の好成績を収めたNanin選手だが、SUPER GTはこれがデビュー戦となる。またチームとしては、昨シーズンは7Lap にして無念のリタイヤという苦い思い出の富士ラウンドであるが、前戦の岡山ではトラブルを乗り越えて幸先のいい完走を果たし、なんとかこの富士500kmレースをいい思い出に塗り替えたいところ。いろいろな意味で期待を胸に臨んだレースウィークとなった。

■公式予選
  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ
  • 気温:Q1 開始時22℃→終了時23℃ / 路面温度:開始時35℃→終了時35℃
  • 入場者;32,200人

 例年各地からの大勢の観客でにぎわう富士500kmレースだが、この日はゴールデンウィーク後半の四連休の初日にあたり大勢の観客が訪れた。天候にも恵まれ、からっと晴れあがった空には新緑に彩られてくっきりと富士山が映し出されている。

 レース前のガレージメンテナンスでは、前戦で現れたギアボックスのトラブルを改善し、500kmの長距離レースに備えて細かい箇所を入念にチェック修正。また、和光ケミカル様のご協力により富士に向けてのオイルが調合され、車両は万全を期して富士に持ち込まれた。その甲斐あってか、この日の9 時から行われた公式練習でも車両は順調なところを見せる。加納・安岡両選手はもちろん、3月に行われた岡山公式テストではトラブルのために十分な走行をすることができなかったNanin選手も、持ち時間をフルに使って20周ほどを走り、ツーリングカーの特性とドライビングを存分に確認することができた。ベストラップは12Lap 目に安岡選手が出した1'40.197(17位)

 午後になってもドライコンディションは変わらず、予選は定刻14時にスタート。すっかりQ1担当が板についた感じの安岡選手が車両をコースに進めた。しかし、ただでさえ強敵揃いのGT300クラスのなか、ストレートを得意としないアストンマーチンは、ロングストレートの富士のコースを前に苦戦を強いられる。トップは1分37秒台、以下9位までの車両が1分38秒台を記録するなどQ2進出をかけた戦いは厳しく、安岡選手は3Lap目に1'39.692 の好タイムでベストを記録したが、Q2に進出するには及ばず明日の決勝は19番手からのスタートとなった。しかし500km 110周を戦い抜くためにはタイムだけが重要ではないことを熟知しているクルーたちは、遅くまで車両のチェックとメンテナンスに勤しんだ。また和光ケミカル様がこの日のオイルデータをラボまで持ち帰り、明日の決勝に向けてさらに有効なオイルが調合された。なお300クラス予選の結果は下記のとおり。

  • P1 #3 B-MAX NDDP GT-RNISSAN GT-R NISMO GT3 星野 一樹 / ルーカス・オルドネス (1'37.841)
  • P2 #61 SUBARU BRZ R&D SPORT 佐々木 孝太 / 井口 卓人 (1'38.034)
  • P3 #55 ARTA CR-Z GT 高木真一 / 小林崇志 (1'38.188)
  • P19#50 WAKO’S Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒 / N.インドラ・パユーング(1'39.692)
■決勝レース
  • 天候:晴れ 路面状況:ドライ 気温:20℃→22℃ / 路面温度:32℃→34℃
  • 入場者:57,200人

 予選日に続きこの日も雲一つなく晴れあがり、朝早くから大勢の観客が詰めかける。昨日に続き車両のコンディションは非常に良好、8時30分から開始されたフリー走行の30分とその後のサーキットサファリの時間をいっぱいに使って、ドライバー3人が練習走行を行い、Nanin選手はNEWタイヤの感触を確認したほか、ドライバーチェンジの練習も行われて充実したメニューをこなすことができた。この日のレースの模様は、Nanin選手の故郷タイに建設中で第7戦が行われる予定のブリラムサーキットのウェブサイトにて生中継されることになっており、またピット裏では僅かな空き時間にも加納・安岡両選手がNanin選手に熱心にドライビングをレクチャーする姿が見られ、Nanin選手もそれに応えるように練習走行で1分40秒台を出すなど、チーム一丸となってテンションが上がっていく。

 5万7千人を超える観客が見守る中、レース開始は定刻の14時、Arnage Racingは500kmのレースを安岡選手のドライビングで19 番手からスタートさせた。ところが荒れたレース展開を予感させるように、レース開始後間もなく88号車が大きくクラッシュするアクシデントが発生、さらにその直後15Lapで500クラスの車両が出火してセーフティーカーランとなる。300クラスの車両数台がこれを好機とばかりに給油ピットインするが、燃費の悪いアストンマーチンは残り周回数の計算上ここでのピットインはできない。しかも、このSC導入となる前の13Lapのあたりで、安岡選手の無線からエンジンの不調を訴える連絡があり、車両はパワーダウンにより、レース開始直後に16位まで上げた順位を20位まで落としてしまった。(*のちに車両保管後の車両からデータを抜いたところ、安岡選手が訴えたエンジンのばらつきとパワーダウンがデータ上にも表れており、エンジンの右バンクに異変が起きていたことが判明した。)

 チームは一時車両をピットに戻すことも考えたが、その後パワー感が戻ってきたため様子を見守りながら走行を続けることになり、安岡選手は1分41秒台を中心に走行を続行。不安を抱えながらも40LapでNanin選手にドライバーチェンジするまで冷静に走行を続けた。タイヤ交換後Nanin選手の手でコースに戻された車両はエンジンの調子が戻り、Nanin選手はデビュー戦とは思えない堂々たるドライビングを披露。終始順位を落とすことなく、ドライバーチェンジ直前の71Lap 目には本レースベストとなる1'40.789をレコード、加納選手に交代するまで素晴らしいドライビングを続けた。チームのボルテージが上がる中、ドライバー交代を待つ加納選手のもとに監督が近づき告げる。「俺たち、いま失うものないよね?だから申し訳ないけどタイヤ交換なしで行きます。」こうして、74Lap目、給油のみ終えたチームはピットタイムを20秒以上短縮して加納選手に車両を委ね、17位でコースインさせた。加納選手はNanin 選手から引き継いだタイヤながら1分42秒台前半の好タイムでの走行を続け、5号車と360号車をパスして13位まで順位を上げた。残り5Lapというところで21号車の藤井選手、9号車の坂本選手に一つずつ順位を明け渡したものの、最後まで冷静なドライビングを続け、15位という成績で500kmという長丁場を見事に乗り切りチェッカーを受けた。

 チーム一丸となって勝ち得た500kmレースの完走により、Nanin選手は見事にSUPER GTデビューを果たすことができ、Arnage Racingは7Lapリタイヤに終わった昨年のリベンジを果たすことができた。

  • P1 #4 グッドスマイル 初音ミク Z4 谷口 信輝 / 片岡 龍也
  • P2 #11 GAINER DIXCEL SLS 平中 克幸 / ビヨン・ビルドハイム
  • P3#0 MUGEN CR-Z GT 中山 友貴 / 野尻 智紀
  • P15 #50 WAKO’S Exe ASTON MARTIN 加納政樹 / 安岡秀徒 / N.インドラ・パユーング
チーム代表 伊藤宗治
 今回のレースは、ナニンくんのSUPER GTデビューと完走という二つの大きなミッションがあった。レース序盤にエンジントラブルという問題は起きたものの、そのほかにはレースウィーク中、ノートラブル、ノーアクシデントで、二つのミッションを首尾よくクリアすることができた。これも、ひとえにGT-Aをはじめ、ヨコハマタイヤ様、スポンサー各位、チームのみんなのおかげに他ならないと感じている。感謝の一言に尽きます。
ドライバー 加納政樹
 ナニンくんが加わって初めてのレースだったので、どうしてもナニンくんにロングを乗ってもらって、車の感じを掴んでもらいたかったんですが、スタートからエンジンの不調かも、みたいな状況があったなかでナニンくんがいいペースで走ってくれて、その分タイヤもあまり痛めなかったので、(僕的にはどちらかというとタイヤ無交換作戦の時にあたることが多いのですが、)今回もある程度のラップで走っていけたんじゃないかと思います。アウディとポルシェに抜かれたんがね(笑)何とか死守したかったんですけど、ちょっと空回りしたかなと、どうしてもちょっとずつちょっとずつ詰まって500クラス車両の処理にうまく騙されたかなというような。ここは課題かなと思います。ただ去年は500クラスの車両と絡んで7周リタイヤだったのでどうしても完走がしたかった。そういう意味では、予選の順位よりも上がってチェッカーもきちっと受けて完走ができたので、今年も全戦完走を目指してるチームとしても、ミッションクリアでいろんな幅を広げたレースだったんじゃないかな。次戦はオートポリス、去年のああいうことも何処であるかわからないし、チームも強くなってるし、ドライバーの絆もチームとの絆も強いんでね、この調子でオーポリ向けて頑張りたいと思います。
ドライバー 安岡秀徒
 去年リタイヤしてしまったレースということで、すごく楽しみで、リベンジという気持ちでいたので、完走できたのはよかったのですが、個人的にはずっと先を見越してかなり抑えて走っていたので、SC明けでアウディを抜いてペース上げだしたところで、エンジンのパワーが下がってしまって…。よくなったり、また悪くなったり、ちょっとそっちに気を取られて、あまり僕らしい走りが出来なかったと感じています。ただ、自分が乗っているときにそういう異変があってよかったと思うし、冷静に対処 できたとも思うので、こういうレースもあるのかなっていうのが正直なところです。ナニンくんも加納さんも、すごいいい走りで、タイムも内容もよくて、結果的にフィニッシュできて本当によかったです。次に三人でやる鈴鹿に向けてはかなりよかったのかなあと。ナニンくんも変わりゆく車重とタイヤコンディションの中でかなり頑張って、掴んだ部分もあると思うので鈴鹿が楽しみですね。次はオートポリスということで、みなさん去年の表彰台の再現を期待してると思うんですけど、どうでしょうねえ(笑)そんなにうまくいくのかなあ…(笑)また天気が悪くなってくれたりするとああいうチャンスもあるかと思うんですけどね。僕はドライでは10 番くらいで走れるくらいの力はあると思ってるので、しっかりQ2 進むっていうことが目標だし、そこで加納さんにQ2 のアタックをしてもらいたいですね。オートポリスは好きなサーキットなのですごく楽しみです。
ドライバー Nanin Indra-Payoong
 今回初めてのレースで、NEWタイヤで出て最初ちょっと怖かったですけど、トラクションコントロールとかABSも効いて何も問題なかったですね。今回はいつものやったことあるレースより長く(Lap数は)33周だったので、コンスタントで走ることの大切がさがわかりました。500クラスの車がどんどん来るのもすごく貴重な、いままでにない経験でした。すごくいい経験だったと思います。タイムも最後にベストラップを出したので、今度はNEWタイヤの時ベストラップを出したいですね。今度鈴鹿で早めにいいタイムを出して、レースももっと長いので、やっぱりタイヤの使い方ですね。勉強して、もっと頑張ります。

 応援してくださったスポンサーの方々には深く感謝しますとともに、5月31日~6月1日にオートポリスサーキットで開催される次戦九州ラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。

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Arnage Racing 2014 SUPER: GT Race report


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