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F3000第7戦リポート(詳報)

●星野、粘りのレースで4週連続優勝
 9月2日--昨年までグランチャンピオンレースが開催されていた9月最初の日曜
日が、今年からF3000に変更になった。3週間前に大観衆を集めて恒例の真夏の
F3000レースが行われたばかりの富士。しかも夏休み明け直後ということもあっ
て観客動員が心配されていた全日本F3000選手権シリーズ第7戦、日本信販スー
パーカップシリーズ第4戦にあたる「富士インターレース」だったが、蓋を開けてみ
れば、その不安が無用なものだとわかる5万7千人の観衆が、残暑の富士スピードウ
ェイに詰めかけた。
 青く澄んだ空に浮かぶ富士山。その頂上が雲の帽子をかぶったのは、午前10時くら
いのことだった。富士山の頂上が雲に隠れると雨が降る。それは富士山麓に住む者な
らば、誰もが子供の頃から聞かされている気象庁よりも正確な天気予報である。
 その民間伝承の天気予報の通り、F3000のスタート時刻近くになると、富士ス
ピードウェイの上空は雲に覆われ、雨が降り始めた。このままいけば、天候の急変に
よるタイヤ交換のタイミングが明暗を分けた3週間前のF3000第6戦の再現とな
るか? ドライバーもピットクルーもジャーナリストたちも空を見上げた。
 しかし、その雨は、1コーナー方面のコースを濡らしはしたものの、レースに影響
を与えるほどのものではなかった。
 午後1時53分。選手紹介の後、7分間のウォーミングアップが開始。しかし、こ
こで鈴木利男のエンジンに火が入らずピットに引き戻される。電気系のトラブルのよ
うだ。さらに、今回からコナミのスポンサードを得た松田秀士がピットに。こちらも
エンジン不調。コンピューター関係のトラブルのようだ。そして、ウォームアップ終
了直前に、M.S.サラがエンジンをバラつかせてピットへ。これでダミーグリッド
に並んだのは25台となった。
 午後2時12分、25台のマシンはダミーグリッドからスタートのための正規のグ
リッドに向けてフォーメーションラップのスタート。サラはピット出口に待機し、ピ
ットスタートの構え。
 午後2時15分過ぎ、シグナルが赤から青に変わってレースがスタート。フロント
ロウ左側の星野が好スタートでポールのマルティニを押さえて第1コーナーへ。トッ
プグループが抜けた第1コーナーでは、中谷、和田、長谷見、ベルタジアが絡み、揃
ってグラベルベッドに飛び出す。そこに岡田も突っ込んだが、岡田だけはグラベルの
上を土煙を上げながら走り抜けて脱出。さらにピットからスタートしたサラまでもが、
ダートに飛び出すというオマケもついた。
 1周終了時点の順位は、星野、マルティニ、チーバー、関谷、片山、小河の順。こ
のとき黒沢は早くもピットに滑り込む。ギアトラブルが発生し、その後レースに復帰
するが20周でリタイアすることになる。
 1周目、コントロールラインをトップで通過した星野。いつもの星野パターンの復
活かと思われたが、今年のF3000は、まさに戦国時代。イタリアの若武者マルテ
ィニが、星野にくらいついて離れない。3周目、そのトップ争いのすぐ後方で、片山
が関谷をパスして3位に。
 5周目の1コーナー。マルティニは星野のスリップから抜け出してトップに躍り出
る。そしてそのまま逃げの体制に入り、一人1分19秒台に突入し、星野を引き離し
にかかる。
 そのマルティニと反対に元気がないのがチーバーだ。このレース前、チーバーは、
童夢の吉田監督から、完走することを言い渡されていた。あまりにもクラッシュが多
く、しかも、そのクラッシュがマシンを全損させるような大きなものばかりのチーバ
ーには、昨年、チャンピオン争いをしたときのような切れ味がなく、焦りばかりが目
だっていた。昨年の最終戦、鈴鹿のヘアピンで中子と接触、リタイアしたときから、
ツキがどこかに逃げてしまっていったようだ。来年2月にパパになるチーバーは、い
つもの突撃レースでなく、耐える走りに徹したためか、5周目には小河に抜かれ、6
周目にはハーバートに抜かれてジリジリと順位を落としていった。
 そのチーバーと反対に、一躍不気味な存在となってきたのが大ベテランの高橋国光。
10周目にはチーバーを抜いて7位。コンスタントに1分20秒台をマークして、ジ
リジリと順位を上げていく。
 14周目、この数戦、フィリップ・ファブレからートを取り戻した(?)ラッツケ
ンバーガーがヘアピンでクラッシュ、リタイアとなる。
 この周、星野は、ヘアピンでブレーキングをミスしたマルティニのインをついて抜
きかけるが、マルティニが必死に加速して、それをおさえる。
 16周目、星野はストレートでマルティニのスリップに入り、1コーナーで前に。
しかしオーバースピードで姿勢を崩した間にマルティニに抜き返される。その直後、
小河が関谷をとらえ4位に浮上し、ジリジリと追撃を開始した。星野が攻めて攻めて
攻めまくるタイプなら、小河はプロストのような待つタイプ。前を行くマシンの動き
を見極めながら、1台ずつ料理していく。
 21周目、小河は片山をとらえて3位に上がる。この間、タイヤの影響か、マルテ
ィニのタイムが落ち始め、星野との差が詰まっていく。さらにその背後には小河が迫
る。ワンミスで順位は簡単に入れ替わってしまう位置だ。
 マルティニは、ダンロップコーナーの立ち上がりで、しきりにマシンのリヤを滑ら
せて挙動が不安定。
 25周目の1コーナー。マルティニのスリップに潜り込んでいた星野が、ついにト
ップを奪い返した。さらに30周目には、小河が1コーナーで2位に。小河は星野を
追撃し、33周目には、その差が1秒510に。マルティニはトップの星野から3秒
492遅れ。
 34周目。そのマルティニが、ダンロップコーナー進入でスピン。エンジンをスト
ールさせてマシンから降りた。これでオーダーは星野、小河、片山、高橋、ハーバー
ト、クロスノフの順になる。
 35、36、37周……。星野と小河の二人だけが1分19秒台のラップタイムを
連発。その差は1秒台だ。39周目には、その差は1秒を切って0.879秒差に。
 40周目、後方からジリジリと順位を上げていたクロスノフがハーバートをとらえ
て6位に。昨年まではスピードスターに在籍したクロスノフは、今年はマルティニの
チームメイトになり、住まいも大阪の八尾から山梨県の甲府に移した。「カントリー
サイドの甲府は、ランニングのトレーニングをするには、とてもいい」と陽気なアメ
リカンのクロスノフ。その体力作りの効果か、このところタフなレースを見せる。
 小河が40周目に、この日のベストラップ、1分19秒196をマークして星野と
の差を詰める。その小河がストレートで星野のスリップに入り、星野をかわしたのは
41周目だった。残りは5周。ついに小河、今シーズン初優勝か? 誰もがそう思っ
た。
 だが、今年のF3000は、そんなに甘くはなかった。43周目のヘアピンで、小
河は痛恨のスピン。
 「突然、ブレーキがおかしくなった。ローターが飛んじゃったみたい」
 その小河のレース後のコメントを裏付けるように、再スタートはしたものの、小河
のローラは、コーナーの進入ごとにマシンが振られる。ブレーキが片側しか効いてい
ないようだ。そして小河は最終ラップに
 小河のスピンの間に星野がトップ、片山が2位に上がる。
 「ペースを守って走っていたら、マルティニさんが止まっていて、ラッキー! 次
には小河さんが止まっていて、ラッキー! この先に星野さんが止まってるんじゃな
いかと思って、最終ラップには、走りながら勝利者インタビューでのコメントなんか
考えてました」とレース後に語った片山だが、そこまで甘くはなかった。星野は最後
まで走り抜き、F3000で2連続優勝、8月12日の富士F3000以来、筑波の
グループA、鈴鹿1000キロに続く4週連続優勝を達成。片山は7秒084遅れの
2位。
 勝利者インタビューの席で、明るく答える片山に、「お前なんか、早くF1へいっ
ちまえよ」とジョークで返す星野。3週間前には引退説も流れた星野だが、まだまだ
日本の王者に君臨するつもりのようだ。
 3位には、まさにいぶし銀の高橋国光。「これしか用意しなかったタイヤが当たり
でした」とは、サポートを担当したヨコハマタイヤのタイヤマンの弁。夏の富士に強
いヨコハマは、前回の富士では急変する天候に、そのジンクスを破られてしまったが、
その片鱗は、残暑の残る富士で発揮された。
 4位にはアメリカンのクロスノフ。5位にはパドックの自転車少年、ハーバート。
6位には、耐える走りでチーバーが食い込んだ。
 ルーキーの金石は、前の車の脱落にも助けらて一時7位まで上がり、ポイントゲッ
トの期待を抱かせたが、中子、茂木の意地に負けて9位。しかし、今回のレースでは、
ステディなレース運びで光るものを見せた。カートからFJに転向してきたときに、
レースに慣れるためにミラージュのフレッシュマンにも挑戦し、いきなりマシンを全
損させて、おどおどしていた「少年」の面影はすでにない。
    FMOTOR4/SysOp すがやみつる(SDI00104)
(速報リポートは、あわてて書いたため、一部、間違いがありました。申し訳ありま
せんでした。速報リポートは、音響カプラーを使って公衆電話から送ったものです)


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