◎シュマッヒャー、冷静なマシン・コントロールでマカオに続き富士をも制す。 1stインターナショナル・F3リーグ・決勝日レポート 12月2日、ここ富士スピードウェイで1stインターナショナル・F3リーグが 行われた。少々風が吹いてはいたものの、12月の富士にしてはかなり暖かい天気に 恵まれ、F3世界一決定戦にふさわしい絶好のレース日和となった。 前日は、出場選手がA・B2組に分かれて予選が行われたが、決勝日はまずこの予 選順位に基づいて各組の決勝レースが行われる。ここで上位12台のマシンが無条件 でファイナルに進出でき、これに着外となったマシンの中で前日の予選順位が良かっ た3台のマシンを合わせて各組15台つづ、合計30台のマシンでファイナルが行わ れることになっている。 まずA組から決勝レースが行われた。グリーン・ライトから予選4番手のヴィクト ル・ロッソが素晴らしいスタートを切って1コーナーのトップに躍り出た。しかし、 後方で3台が接触してコース上にストップ。レースは赤旗・再スタートとなってしまっ た。このアクシデントの影響で、A組決勝は周回数が15周から12周に縮小となり、 古谷 直広ら3人が2回目再スタート不能でDNSとなってしまった。 2回目のスタートでは、予選2番手のM.シューマッヒャーがトップで1コーナー をクリアしてロッソ以下へと続く。シュマッヒャーは1回目のスタートをミスしてい たが、赤旗に助けられた格好となった。3周目、スタートで大きくポジションを上げ ていた77番のP.カルカジが1コーナーでコースアウト。期待のトムス・オリジナ ルF3シャーシはレース序盤で姿を消した。4周目あたりから、中段にいた国際F3 000ドライバーのE.アービンが実力通り徐々にポジションをアップしてきた。し かし、彼は7周目あたりからエンジン・トラブルを抱えてしまったようで、リアから 白い煙を出し始め6ー7位をキープするのがやっとといったところ。その後方から、 予選9番手から浮上してきた中川隆正がアービンをハードプッシュする。 トップのシューマッヒャーは、終始安定した走りを見せ、結局A組上位はシューマッ ヒャー、ロッソ、M.マルティニの順でフィニッシュした。 続いて行われたB組。こちらもポールポジションからスタートしたL.アイエロを 先頭に激しい1コーナー争いが展開されたが、A組同様後方でマシンの接触があり3 台がコース上にストップ。こちらも赤旗、再スタートとなり、レースA組同様12周 に短縮された。またこれとは別に、1コーナー出口で期待のイギリスF3チャンピオ ン、M.ハッキネンがスピン・アウトしてしまい、再スタートできずにDNSとなっ てしまった。 2回目のスタートでは、予選2番手のS.ロバートソンがトップで1コーナーに飛 び込みレースをリード。その後ろではアイエロと和田久が激しい2位争いを展開する。 4周目、Aコーナーの突っ込みで和田がアイエロをパスして2位に浮上。影が薄くなっ ていた日本人ドライバーの中で一人気を吐く。レースが中盤にさしかかると、2ー3 位争いに加えて4ー8番手争いが白熱。その中からM.サロが4位に浮上してきた。 サロは予選順位が悪かったが、イギリスF3では高速コースを得意としており、ハッ キネンと最後までイギリスF3チャンピオンを争った実力を発揮する。そのすぐ後ろ には、予選9番手の服部がポジションを上げ、全日本F3チャンピオンの面目を見せ た。 トップのロバートソンは、A組のシュマッヒャー同様安定した走りで12周を走り きってB組の優勝を飾った。以下2位にはアイエロが、そして3位には和田が入った が、4位のサロとは僅かコンマ3秒の差だった。 各組の決勝が終了した時点で、A組優勝のシューマッヒャーがファイナル・レース のポールポジションに決定し、B組優勝のロバートソンが2位に。以下A組が奇数グ リッド、B組が偶数グリッドに並ぶことになった。 午前中の各組決勝レースだけでなく、インターバルに行われたFJ1600でも赤 旗が出た関係で、レース進行が1時間程遅れ、ファイナル・レースのスタート時刻に は太陽が西へ傾き、風も冷たく感じられるようになっていた。 ファイナル・レースのスタートで飛び出したのは3番手のロッソ。以下シューマッ ヒャー、ロバートソン、アイエロの順で1コーナーをクリアし、1周目から激しいバ トルを展開する。この中で、5番手グリッドを得ていたマルティニがマシン・トラブ ルの為にピット・スタートとなっていた。3周目、3位につけていたロバートソンが スリップ・ストリームを巧みに使い2台をパスしてトップに浮上、白熱したトップ争 いとなる。4周目、シューマッヒャーがロッソをかわして2位へ。この後ロッソは前 を行く2台に離されてしまい、トップ争いはシューマッヒャーとロバートソンの2台 に絞られた。 5周目シューマッヒャー、6周目ロバートソン、7周目シューマッヒャーと、この 2台は毎周ごとの1コーナーで首位が入れ替わり目が離せない。その7周目、8番手 につけていたE.エラリーと羽根幸浩が1コーナーでスピン、エラリーのマシンのノー ズがコースと反対方向に向いてしまった。そこへ後続車が次々と突っ込んで来るが、 皆素晴らしいハンドルさばきでこの2台をかわしていく。この後エラリーはレースに 復帰したが、羽根のマシンはグラベルベッドに捕まりリタイヤとなってしまった。羽 根のマシン処理の間、1コーナーでは黄旗が振られて、暫くの間ここでの追い越しが 不能になる。 10周目、シューマッヒャーがロバートソンをパスしてトップに立つと、そのまま 14周目あたりまでシュマッヒャーがレースをリードする。しかし両者の差は1秒ち ょっと。まだまだレースはわからない。この間に、今度は後方で激しい4位争いが繰 り広げられる。横一線に4ー5台のマシンが並んで1コーナーに突っ込む。見ている 観客にはたまらないレースとなった。この10周目、サロ、ロッソをかわして中川が 4位に浮上。だが背後からアービンなどがピタリとついている。13周目、そのアー ビンがストレートで中川にしかける。両車譲らずに1コーナーへ。サイド・バイ・サ イドのバトルだ。しかし、ここでアービンが絶妙のテクニックで中川の前へ出る。そ の中川も諦めずに再びアービンを抜きにかかろうとピタリとアービンについていた。 しかし、中川は14周目にスピンしてしまい順位を落とす。 15周目、トップのシューマッヒャとロバートソンの距離がやや詰まる。以下アイ エロ、エービンロッソ、P.アダムス、サロ、服部、和田というオーダーだ。地元日 本勢の影が薄い。やはり世界は広いのだろうか。 16周目、トップを走る2台の差がコンマ5秒に。いよいよ残りは4周だ。ところ が、18周目に入るストレートで2位にアイエロが浮上していた。ロバートソンは3 位に後退してストレートに戻ってきたが、マシンのリアから白い煙が出ていた。どう やら土壇場でエンジン・トラブルが出たようだ。しかし、後ろからはアービンが猛烈 に追い上げて来ている。ロバートソンはこのまま3位をキープできるのか? そしていよいよファイナルラップ。トップは依然シューマッヒャー。2位のアイエ ロとの差は3秒程度だ。後方では3位のロバートソンがAコーナー手前でスピン、3 位の座も失う。無情にもその前をアービンが走り去って行った。結局、レースはシュー マッヒャーが2位のアイエロに3秒の差をつけてチェッカーを受け、見事マカオGP に引き続いての連勝となった。2位は終始コンスタントな走りを見せたアイエロ。3 位にはアービンが入り、国際F3000ドライバーの面目を保った。なお、日本勢は 和田が6位に入るのがやっとで、世界との壁の厚さをまざまざと見せつけられた。 Reported by 浜田 貴志(RIJ/MHA01070)