全日本GT選手権

GTインサイドレポート Rd.3/9

                    AUTOBACS CUP ALL JAPAN GT CAR CHAMPIONSHIP
                       1998  GT INSIDE REPORT
   Round 3 Hi-land GT Championship                              28 June '98
   Special Report                 特別レポート4                FMOTOR4版
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'98AUTOBACS CUP GTC第3戦 ハイランドGT選手権レース(6/27,28)
緊急特集『レースの安全性を考える』

◎GT-Aが実施したアンケートについて(続き)
■その他
「主催者、サーキット、エントラント、観客というレースを構成する4要素が互い
にバラバラであるということだ。昨年のF3の事故でも様々な立場の人が指摘した
にもかかわらず、いったい何が改善されたというのだろう。自分の立場に火の粉が
飛ばないように責任を他人に押し付け、なんら問題が解決されないのに、またレー
スを続けてしまう。私は、それぞれの立場の人間がまず真剣に反省点を見出すこと
が何より大切だと思う。すべてはそこからだ。今、それぞれの立場で即時に安全を
考えても『自分の身は自分で守れ』という極めて安易な安全対策しか見出せない。
この結論は、事故を起こした者が悪いんだという現状を何ら変えられないものとな
るだろう」(チームマネジャー)

「再発防止にはチーム関係者、主催者、ドライバーがそれぞれ力を合わせる必要が
あります。(中略)人が居ない、金が無い、設備が難しいでは済まされない問題だ
と考えます。(中略)ペースカー先導の場合はペースカー速度を明記する(例えば
DRY条件;80km/h以下、WET条件;60km/h以下)。(中略)安全訓練の義務付け~H
項9.1.2.5安全運転訓練ではF1、F3000、ITCでは予選の前に安全訓練が義務付けられ
ているが、全日本レースでも必要と考える(ル・マンで毎年行っているドライバー
の救出訓練等、安全に対する意識、技術の向上が図れる)。(中略)ピット内水タ
ンクの設置~初期処置対応。(中略)ケガ、ヤケド等に対する応急処置法について
の勉強会」(チーム監督)

「チームマネジメントに関わる者として下記内容を実施したいと思います。(中略)
火災訓練等の実施  各戦ごとにチームを選定し、火災訓練、消火設備のチェック
等を実施し、常にイベントでの安全に対する意識をチーム(含ドライバー)にもた
せる環境を作る」(チームマネジャー)

「時々、ピットをチョコチョコ歩く幼い子供を見るとドキッとします。又、ピット
ウォーク時にも同様に思うことがあり、ピットウォークの人の入れ方や人数、親の
意識(これは観客なので仕方ないと思いますが、例えば7才未満は入場不可とか)
細かな部分においても配慮すべきで、その小さな配慮が拡がって惨事を回避できる
のではないでしょうか」(広告代理店関係者)

「一番いらだちを感じたこととしては、競技長が通訳にブリーフィングの中身をす
べて英語に訳して伝えさせる時間を割くことができなかった、あるいは割きたくな
いと考えたことです。いずれにしてもそのような時間はないの一点張りでした。日
本人ドライバーの生命同様、外国人ドライバーの生命についての配慮もあってしか
るべきではないでしょうか。ちなみにあのときポールを獲っていたのは外国人ドラ
イバーだったのでは??? ブリーフィング後、新しい手順を採用することになり
ましたが、スタートを安全に行うために、その手順をまず熟知していなければなら
なかったのはポールポジションのドライバーにほかならなかったのではないでしょ
うか」(ドライバー)

「ブリーフィングに出席される日本人ドライバーの方のなかには、説明の通訳を
『ブリーフィングを長引かせる迷惑なもの』と考えている方も多いようです。確か
にJGTCは国際格式のレースではないため通訳を用意する義務はないかもしれません。
(中略)一緒にレースをする以上、外国人がブリーフィングの説明を十分に理解す
ることは外国人ドライバー本人の安全だけでなく、彼らとともに走る日本人ドライ
バーの方の安全のためにも重要なことと考えます。(中略)外国人ドライバーの参
加はドライバーの方たちにとっても刺激となるし、レースが国際化されれば観客に
とっての魅力も増す等、よい面もあるのですから、ドライバー、主催者、サーキッ
トの関係者等、全員でレースの真の国際化について考え直す必要があるのではない
でしょうか」(通訳)

「スポンサーなどのゲストが、ピット付近にいるときに危険を感じたことがありま
す。メインレース中はもちろん、むしろサポートレースなどで車両がピットロード
を走行しているときです。クルマやキャンギャルに夢中になって平気で飛び出した
り、写真を撮るなどの行動をとったりします。また、レース中ピットインし作業を
開始したクルマに近寄ることも、特に給油の際などは危険に感じます。ドライバー
もメカニックもレースに集中しているためにそこまで注意ができない状況です。ゲ
ストの中には、その危険性を知らない人も多いと思われるので、チームとしても
『気を付けてくれるだろう』ということではなく、きちんと説明なり、注意なりを
しないといけないと思う」(チームマネジャー)



◎金曜日のピットロードでの事故について
 6月26日(金曜日)のGT練習走行中、ピットロードで人身事故が発生した。事故
があったのは午後0時40分からの2回目のセッションが赤旗で中断された直後(午後
1時45分頃)。事故を起こしたのは、コースサイドに止まっているマシンを回収に
向かうため、ピットロードを走行中だったレスキューカー(小型トラック)で、この
クルマは、荷台に2~3人のメカニック、助手席に仙台ハイランドの職員1人を乗
せていた。目撃者の証言によると、赤旗が提示されたため、次々とマシンがピット
に戻るなか、このトラックはピットインして来るマシン以上に速いスピードでピッ
ト出口に向かった。その途中、自らのピットへと向かっていた#2 ZEXELスカイライ
ンの左リヤに接触。その反動でコンクリートウォール側のガードレールに接触し、
サインガード付近にいた人に突っ込んだ。この事故でもっとも重傷を負ったのはARTA
のチーフメカニック。ZEXELスカイラインを避けるかたちでピットロードをサイン
ガードのほうへ向かったところでトラックに跳ね上げられ、頭部をフロントガラス
助手席側に直撃。トラックが停止したところでピットロードの路面に落下し、意識
を失った。助手席に乗っていた仙台ハイランドの職員もムチウチとなっている。さ
らに、ブリヂストンのサービスマン1人もトラックに跳ねとばされ、肘に11針を縫
うケガを負った。
 ARTAのチーフメカニックと仙台ハイランドの職員は、直ちに救急車でメディカル
センターに運ばれたが、ここには当日、医師はおらず、急遽*911ナインテンPCJポル
シェのドライバーであり、医師でもある高橋規一氏と、ニスモのアシスタントであ
り、普段は看護婦をしている関口千秋さんが初期治療に当たった。その後、事故に
あった2人は、仙台市の救急隊によって、仙台市民病院に運ばれた(午後2時15分
頃)。ARTAのチーフメカニックは硬膜外出血と診断されたが、奇跡的に骨折などは
なく、症状は比較的軽いとのこと。3~4日の入院で、東京都内の病院への移送許
可も下りそうだと言う。また、仙台ハイランドの職員については、頭部を打撲して
いるので念のため精密検査を行ったが、頸椎捻挫と診断された。
 当日、午後4時過ぎから、宮城県警・刑事課によって現場検証が行われた。通
常、レース開催期間中の事故(レーシングアクシデント)については、警察に出動要
請をすることはない。しかし、今回の事故は特殊なケースであり、GT-Aから仙台ハ
イランド側に警察への連絡を要請。仙台ハイランドから宮城県警に出動を依頼する
連絡を行った。


◎今回の救急医療体制について
土曜日に医務室詰めの土井医師に伺ったところによると、レース期間中(土曜日と
日曜日)は医務室に2名、救急車内などに4名、合計6名の医師と、2名の看護婦
が常駐している。医務室内には蘇生処置や気道確保ができる装置、酸素等が備えら
れており、予想される範囲の事故には対応できるとのこと。病院への搬送が必要な
場合には、仙台市内の救急指定病院に連絡を取って救急車で搬送することになると
いう。


■鈴木亜久里(#2 ZEXELスカイラインドライバー、ARTAオーナー) 
(金曜日の事故について)
「状況的には、ピットロードに入ってきて、ピットに入ろうとしたら、左リヤにぶ
つけられたっていうこと。まさかピットロードでレスキューカーに追越しされたり、
追突されるなんて思ってないから、後ろは見ていなかった。ピットロードでミラー
を見ることはほとんどないよ。だから、一瞬何が起こったのかわからなかった。ボ
クのクルマ(#2 ZEXELスカイライン)はリヤのバンパーの角が少し壊れたぐらいだ
から、それほど衝撃はなかったけど、何かのクルマがぶつかったのは分かったよ。
その後、左を見たら、人がバラバラ倒れていて、ウチ(ARTA)のメカニックもそのな
かにいて、『一体何が起こったの?』って考えたんだけど、すぐにわからなかった
よね。
 でも、あれはレースの事故じゃない。サーキットの中で起こった事故だけど、普
通の交通事故と同じだし、傷害みたいなものだよね。レーシング・アクシデントと
か、レース中に不測の事態でピットロードに飛び出したメカニックが轢かれたって
いうのとは、全然違う種類のもの。だから、僕はGT選手権での事故ではないと思っ
ている。ああいう事故は、ピット裏でも起こる可能性がある。個々のモラルの問題
だよね。サーキットのオフィシャル教育の問題でもある。『勘弁してよ』って、思
うよ。今回、たまたまウチのメカニックは、死ななかったし、運良く骨折なんかも
してなかったけど、頭蓋骨陥没とか大腿骨骨折とかいうケガをして、半年も1年も
仕事に復帰できなかったら、大変なこと。でも、それはアイツがたまたま運が良かっ
ただけだから。
 ただ、今回みたいな事故で、またレース全体が危ないって言われちゃたまらない
よ」



                    スペシャル・レポートは以上です



◎先に書きましたとおり、本レポートは出典を明記していただければ、引用して
いただいてもかまいせんが、媒体掲載の際には、古屋までお知らせいただければ
ありがたいです。


☆モータースポーツの安全対策にご意見をお寄せください。
 このレポートにありますように、GT-Aではレースの安全上の問題点と今後の対策
を多くの方に聞いています。これをお読みの方でレースに携わった経験のある方の
ご意見を広く求めます。GT選手権だけに関わらず、気が付いたこと、こうした方が
良いというご意見がありましたら、下記のメールアドレスまでお寄せください。
また、ファンの方でも、こういうことがあった等の体験、目撃談や安全への提言な
どありましたら、これもぜひお寄せください。

GTC Official WebSite メール・アドレス        gtc@imfosim.co.jp
GTインサイドレポート班 古屋知幸 メール・アドレス  QYB04322


                       GTアソシエイション事務局
                         GTインサイドレポート班
                        古屋 知幸 = QYB04322 =



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