筑波・富士S-FJ選手権

第3戦決勝 スタート直後にマルチクラッシュ発生で赤旗中断も動ぜず、田上蒼竜、2位以下を寄せ付けずにポール・ツー・ウインの完勝

優勝は田上蒼竜(AsカンパニーZAP ED)

 2022年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第3戦決勝が5月22日(日)に筑波サーキットで開催され、前戦第2戦からわずか2週間のインターバルで行われたレースはポールポジションからスタートした田上蒼竜(AsカンパニーZAP10VED)がスタートでトップに立つと終盤の安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)からのプレッシャーに動じることなく完勝。2連勝を飾った。

 決勝のコースインは午後3時。天候は晴れたり曇ったりで、ドライコンディションでレース開始時刻を迎えて、レギュラーとも言える18台に鈴鹿から遠征の夕田大助(LAPS KKS)を加えた19台がグリッドに並ぶ。その中で予選13番手の草野裕也(TRF.CSI KK-SII ED)は予選終了間際にダンロップコーナー手前でコース脇にストップ。エンジンがいきなり止まってしまったとの事で、パドックに戻されてから各部をチェックするもインターバルの間には原因が特定できずに時間切れ。エンジンは再始動できたので、再発の不安を抱えつつ所定のグリッドについた。

1回目のスタートシーン

 レッドライトが消えてポールシッターの田上は無難にスタートするもフロントロウに並ぶ安田はまたしてもスタートをミス。セカンドロウから発進の稲葉摩人(ZAP SPEED 10VED)、白崎稜(ZAPスタッフリソースED)のZAP SPEED勢に前に出られて4位にドロップする。

クラッシュした戸谷友規(Deep-R・10V・ED)

 しかし第1ヘアピンの後方集団の中でアクシデントが発生。4台がクラッシュしてストップ。ただちに赤旗が提示されてレースは中断となる。

 クラッシュしたのは、戸谷友規(DEEP-R・10V・ED)、中澤凌(ZAP NAKs 10VED)の両ルーキーにマスターズクラスの竹沢茂(スーパーウインズ☆KKS☆ED)と本間隆史(MAT RPイマージュ10V)で、聞き込んだ情報を総合すると、第1ヘアピンに並んで進入した竹沢と戸谷のさらにイン側から本間が入って行って、本間と竹沢がまず接触。弾かれた竹沢と後方の戸谷が当り、戸谷はスピンしてアウト側のスポンジバリアにリヤから刺さり、竹沢はフロントサスを破損。さらに本間のイン側に中澤が巻き込まれたもようだ。

 スタート直後の赤旗中断ということでレースは5分前のスタート進行からやり直し。クラッシュした4台を除いてスタート時点のグリッド位置でレースを再開する。14番手の秋山健也(スーパーウインズKKS・ED)の後方15番手戸谷、16番手中澤、17番手本間、19番手竹沢のグリッドは空席となり、18番手スタートの澤井良太朗(オートルックカワモト電工10V)がポツンと間を空けてグリッドに着く。この澤井は結果的にスタート失敗で後方に出遅れたことで難を逃れた。

2回目のスタートシーン

 3周減算の15周で行われるやりなおしの決勝は午後3時35分にフォーメーションラップ開始。

 2度目のスタートでは安田が今度こそミスなくスタートを決めて、田上の後ろについて第1コーナーをクリア。稲葉~白崎~武者利仁(ゼンカイレーシング遊技闘速ED)~岩本瞬(ファーストガレージ小倉学園S2)とここまでグリッド通りの順位で続き、後方では8番手スタートの下村剛司(SウインズKENS2ED)が7番手スタートの本田千啓(オートルック☆モダン☆10V)の前に出て1周目を終了。

 2周目の第1コーナーで稲葉がアウトから安田に仕掛けるがここは安田がしのぎ切る。この攻防はトップを走る田上に利し、2周目のコントロールライン上で1.597秒のリードを築く。安田と稲葉は0.232秒差、そこから白崎は0.303秒、武者は0.393秒とほぼ等間隔で連なる。この中で勢いがあったのが武者で、続く3周目の第2ヘアピンで白崎のインを差すとオーバーテイク、4位に上がる。

 3周目、田上は安田とのギャップをさらに広げて1.843秒差。安田~稲葉は相変わらず0.295秒差だが武者と白崎の2台は0.146秒差とテール・ツー・ノーズ状態のまま稲葉に引き離され1.168秒差、逆に後方からは岩本が0.314秒差まで接近する。このままではトップグループを逃してしまうという事で白崎は武者を攻め立てて、4周目の第1ヘアピンでアウトから並びかけてS字を並走、第1ヘアピンでインから前に出て4位の座を奪い返す。

 4周目に入り安田は防戦から攻勢に転じて58秒889とここまでのファステストラップを更新、5周目6周目も田上を上回るペースで周回して、6周目で1.366秒差。ここで田上もペースを上げたか7周目に58秒888のファステストラップを出すが直後に安田が58秒779でこれを塗り替える。これでギャップは1.257秒。稲葉はこのペースについていけないのか安田に離され1.286秒差、白崎も武者との攻防の間に稲葉を逃がしてしまい1.967秒まで差が広がる。

 8周目1.269秒、9周目1.239秒と一進一退の神経戦を見せていた田上と安田だが、10周目に安田が58秒623のファステストラップをマークし0.978秒差と間合いを詰め始める。後方では稲葉~白崎~武者~岩本と変化がないが、7位下村の背後に本田が接近、ゆさぶりをかけ始める。これに動揺したか、すでにリヤタイヤのグリップが無くなりかけていたという下村は11周目の第2ヘアピンで痛恨のスピン。一気に15位まで順位を落としてしまう、これで本田7位。

 安田はさらに田上との差を削り取り11周目0.871秒、13周目0.688秒と迫るが田上もそれ以上の接近は許さず残り周回を走り切りトップでチェッカードフラッグの下を通過。

 昨年秋のデビュー以来、速さはあるがたまのミスや焦りからペナルティを貰うこともあった田上だが、2週間前の第2戦と同じく落ち着いたレース運びで、一回り成長した姿を見せての連続優勝を飾った。2位安田は0.885秒差の2位。惜しい結果だが、1回目のスタートでのミスが赤旗で帳消しになり、第3戦にしてZAP SPEED勢の牙城を崩して表彰台を勝ち取った。これで復活を遂げるか? シリーズはまだ5戦を残し、巻き返すには十分だ。3位は稲葉、安田からは2.219秒引き離されたが昨年のレースデビュー以来の4戦連続表彰台となった。次戦は富士スピードウェイ、昨年11月に衝撃的とも言えるデビューウインを飾ったコースだ。

決勝2位は安田航(Fガレージ&Sウィンズ)

決勝3位は稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED)

決勝4位は白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

決勝5位は武者利仁(ゼンカイレーシング遊戯闘速ED)

決勝6位は岩本瞬(ファーストガレージ小倉学園S2)

 マスターズクラスは1回目のスタートで2台が消えたため残り2台で争われ、夕田が総合11位で優勝、秋山健也(スーパーウインズKKS・ED)が総合13位でクラス2位となった。

■決勝後のコメント

優勝 13号車・田上蒼竜(AsカンパニーZAP10VED)

優勝した田上蒼竜(AsカンパニーZAP ED)

 「(スタートで前に出て危なげない勝利だった?)後ろの方がペースが速そうだったのと、展開に助けられた部分もある。なので速さの面で課題がある。スタートは2回とも「可もなく不可もなく」という感じだった。どちらかと言えば1回目の方が後ろのチームメイトがガツガツ来ていて自分としては怖かった。2回目も最初は(後ろで)やり合ってくれていたが、その後だんだん迫って来たので、完璧(な展開)じゃない。そこに課題が残っているので、じっくり反省して次につなげたい。次は久々の富士なので、ダンロップタイヤに慣れて(富士に合わせた)クルマ作りながら次も優勝めざして頑張る」

2位 53号車・安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)

決勝2位の安田航(Fガレージ&Sウィンズ)

 「(終盤は田上選手を追い上げていたが?)元々1~2周目が課題で、ペースも上がらなかった。スタートこそ2回目はまずまずだったが、稲葉選手が後ろから来ていて抜かれてしまうと田上選手に挑む権利が無くなってしまうと思って、とりあえず稲葉選手を押さえることに専念していた。そうしたら田上選手が離れてしまったので、あの差が痛かった。(終盤までラップタイムがよかった?)田上選手も自分も(タイヤが)ズルズルだったが、その中でも動きとしてはよくてファステストラップを取れたのでよかった。(これで優勝を狙えるようになりそう?)開幕戦ですごい苦戦して、それからファーストガレージの酒井会長はじめとしたチームの皆さんがいろいろアドバイスとかセッティング変更とかやってくれて、今年は岩本選手もいて2台体制なので話し合って、去年とは全然違う感じでできていて、やっとクルマも速くなって来たので、まだここからチャンピオン狙えると思う」

3位 14号車・稲葉摩人(ZAP SPEED 10VED)

決勝3位の稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED)

 「2回目のスタートは失敗だった。追いつけるだろうと思っていたのだが、安田選手が速かったので、どんどん離れていく感じだった。自分のペースも上がらなかったのと、ドライビングの修正はできたのだが、(コーナーで)突っ込み過ぎていたのを そうならないように意識していた。ただ逆に突っ込まないせいで、感じ取らなければいけない荷重(変化)を感じられなかったりして、良いところが探り切れなかったのが敗因だと思う。(つぎはゲンがいい富士だが?)地元なので絶対勝ちます!」

4位 26号車・白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

決勝4位の白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

 「(武者選手との攻防は?)第2ヘアピンで抜かれたのだが、どこで抜き返そうかと考えて、第1コーナーではインを閉めてくるだろうから、アウトから抜きにかかってそのまま第1ヘアピンで(4位を)取り戻した。ただ、スタート直後のペースが悪かった。(自分の方に速さがあるからじっくりいけた?)その辺りは余裕があったのでよかったのだが、スタートをミスしてしまった・・。1回目は良かったのだが赤旗で、2回目のスタートは(タイヤを)空転させてしまった」

5位 71号車・武者利仁(ゼンカイレーシング遊技闘速ED)

決勝5位の武者利仁(ゼンカイレーシング遊戯闘速ED)

 「第2ヘアピンで白崎選手のインを差して前に出たが、バックストレートから最終コーナーと後ろにつかれて、第1コーナーでアウトからまくられてしまった。(ストレートスピードに差があった?)そうかもしれないし、第2ヘアピンの自分の走り方もよくなかったかもしれない」

6位 52号車・岩本瞬(ファーストガレージ小倉学園S2)

決勝6位の岩本瞬(ファーストガレージ小倉学園S2)

 「また6位だ。(ペースが上がらなかった?)ちょっとだがクルマの調子も悪い。エンジン関係が予選からちょっと・・。もちろんドライバーにも問題がある。修正点とか見直していく」

 2022年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第4戦/第5戦は6月25日(土)、26日(日)と連戦が富士スピードウェイで開催される。今年のスーパーFJ日本一決定戦は富士で開催されるがその前のシリーズ戦はこの2レースだけである。それだけに日本一を目指すエントラントには貴重な機会になる。

表彰式

Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA


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