5月4日に行われた、スーパーGT第2戦決勝後の優勝会見での質疑応答において、58周目に発生したアクシデントに関連し、今後同様の事故を起こさないために必要なことは何か、という質問がなされた。それに対する各ドライバーの回答は下記のとおりだ。
GT500クラス No. 8 ARTA NSX-GT
- 野尻智紀(ARTA)
-
「サーキットで今日起きたこととは別に考えてもらいたいんですけど、皆さんもクルマを運転されると思います。公道で走る上で、安全運転ってなんだと思いますか? ってことを僕はよく考えるんです。法定速度内で走る。逆にゆっくり走る。法定速度より飛ばす。速度に対する考え方はいろいろあると思います。一時停止をちゃんとする、しない。そういうのって自分の安全も当然ありますが、周りを安全にさせられるかが僕は一番大事なんじゃないかなと思っているんです。サーキットも例外ではないと思います。なので、もう一度皆さんに安全について考えてもらえると、日々の自分の危険を遠ざけることができるんじゃないかなと思いました」
- 福住仁嶺(ARTA)
- 「今日のあの事故について、誰が悪いかなんてわかんないと思います。いろんな意見があるでしょうし。でもやっぱりレギュレーション以外の部分でもマナーって必要だと思うんです。GTを3年、4年出場させていただいてますけど、本当にそういうマナーができてないというか、自分勝手なことしか考えてないなという人はやっぱりいますね。39号車の選手の動きも、ギリギリで避けてて、後ろの選手が見えないという動きもああいう事故につながったと思うんです。レギュレーションに書いてないとしても、そういうマナー的な面でももっと考えていかないと。レースはみんなでやってることだと思うんで、周りのことを考えながらレースしていないと、やっぱりまた同じことが起きると思います」
GT300クラス No. 10 TANAX GAINER GT-R
- 富田竜一郎(GAINER)
-
「僕もその場にいたわけではないので、大きなことを言うつもりはありません。ただ個人的に思うこととして、スロー走行車両が見えない位置にいたということですが、ホームストレート上であればピットに入ることができたんじゃないのかな、ということです。その上でバトル中のクルマが270,280(km/h)で走るところをスローで走るというのがどれだけ危険なことかは、レーシングドライバーなら誰でもわかっていると思います」
「もちろん自分たちのレースを完走したいという気持ちはわかるし、チームとして最低限のタスクだと思うので、それを遂行したいという気持ちはわかるんですが、赤旗あけの難しいシチュエーションの中でああいうバトルが行われていることをチーム側もインフォメーションするべきだったんじゃないかなというのと、ドライバーとしても仮にサインガード側まで避けていたとしても、そこはコース上なので大きな速度差が生まれた時にどうなるかということを、あのチームだけでなくみんなが考えていかないと」
「日本のモータースポーツがこれからどうなっていくのか、という過渡期に今あると僕は思っているんですけど、そういう中でお客さんがたくさん入ってくれて、これだけ多くのトップドライバーがいる中で、プロスポーツとして見せていくという観点で、そういう意識を全員が持つことが、今一番大事なんじゃないかなということが、今レースを終えて、あの事故を見て思ったことの全てです」
- 大草りき(GAINER)
- 「デビューイヤーが何言ってんだと思われるとあれなので、大きなことは言えないんですけど、今回こういうことが起きてしまったということは、多少なりともそれぞれの意識に油断ではないですけど、そういう意識があったと思うので、自分をはじめとして、次大会に向けて、しっかりとそれぞれのルールだったりとかを意識していかなきゃいけないな、ということを再認識したレースでした」
- 塩津佑介(GAINER)
- 「まだまだルーキーなんで、周りをしっかり見ることと、状況の判断を一瞬でも間違えると大きなことになりかねないことをしていると思うんで、日頃から意識してレースしないといけないな、ということを改めて感じることのできたレースでした」
※ 今回の原因の一つと考えられる50号車のスロー走行だが、Arnage Racingの公式SNSによると、あの時点で50号車はシフトが入り難い症状に繰り返し見舞われており、最終コーナーを立ち上がって一旦症状が収まっあと、もう一度再発した時にはすでにピット入口を過ぎてしまったため、車体をイン側に寄せて走行せざるを得なかったという。
その上で責任は自社のメンテナンスと的確なタイミングで判断ができなかったことにあるとし、今後は再発防止に努めていくとしている。
また39号車を走らせるTGR TEAM SARDも、5月6日付で近藤尚史代表、脇阪寿一監督が連名で謝罪文を出す異例の事態となっている。
しかし今回の件は参戦しているチーム、ドライバーのいずれもが最善を尽くして戦っている中で起きた所謂レーシングアクシデントの一つであり、本来は誰かが責めを負うことでも、誰かに謝罪するべきことでもないと筆者は考える。
Text:Kazuhisa SUEHIRO