8月にしては涼しい曇り空の鈴鹿サーキットで行われたJSPC第4戦「イ ンターナショナル鈴鹿1000キロレース」は、その涼しさのせいか、例年よ りも激しい戦いになった。スタートでトップに立ったのはポールシッターのリ ース/エルグ/ウォーレス組のエッソ・トヨタ91C-V。それにラッツエン バーガー/ラファネルのデンソー・トヨタ、星野/鈴木のカルソニック・ニッ サンが続く。しかしトップのエッソ・トヨタは1回目のピットイン直後、ガソ リンがコックピットに漏れるというトラブルのために34周でリタイアとなっ た。 その直前の31周目、カルソニック・ニッサンがトップに立ち、追い上げる デンソー・トヨタと10秒差ほどの激しい攻防を展開する。しかも89周目、 129周目の3回目、4回目の燃料補給では、どちらも同じタイミングでピッ トインし、ピットクルーの戦いとなる。しかしどちらのピットクルーも素晴ら しい働きぶりで車を送り出したため、その差は保たれたままレースは終盤に突 入。フルタンク状態では、タイヤをいたわるためにペースを落としていたデン ソー・トヨタは、ピットアウト直後は20秒近くの差をつけられるが、タンク が軽くなると1周ごとに2、3秒も詰める激しい追い上げを見せた。 しかし、この攻防も最後のピットインで決着がついたかに見えた。最終5回 目のピットインは、デンソー・トヨタが146周目に行った。この直前に、ヘ ッドライトが点灯しないというトラブルに遭遇し、ヘッドライトの装着されて いるフロントカウルを交換。このためピットストップの所要タイムは1分27 秒かかってしまう。その3周後にピットインしたカルソニックニッサンはガソ リン補給とタイヤ交換だけの1分7秒でピットアウト。この時点で勝負あった と、締切の早い新聞記者たちは「カルソニック・ニッサン3勝目!」の原稿に とりかかる。 しかし、今年のJSPCは下駄を履くまでわからない。途中のコースアウト でフロントサスペンションを傷めて大きく遅れた関谷/小河のミノルタ・トヨ タが、もはやトップから6周遅れとなっていたため燃費の心配もなく、激しい 走りを見せ、162周目の1コーナーでトップのカルソニック・ニッサンを抜 く。これに幻惑されたわけではなかろうが、次の周の1コーナーで、鈴木の乗 ったカルソニック・ニッサンがコースアウト。グラベルベッドの餌食となって しまった。その横をデンソー・トヨタがかすめ去ってトップに立ち、そのまま ゴールに向けてまっしぐら。カメラのストロボが激しく浴びながら、栄光のチ ェッカーを受けたのだった。 2位には、序盤、給油の際に火災を起こし1周ほどを失ないながら、その後 粘り強く走った中谷/ワイドラーのフロムA・ニッサンが、3位には、第3戦 でマシンを全損させ、スペアのR91CPの調子が思わしくないため、昨年の R90CPをモデファイして走らせた長谷見/オロフソンのYHPニッサンが 入った。 4位には一時7位まで落ちながらも、すさまじい追い上げを見せたミノルタ ・トヨタが、5位には日石ポルシェが入り、6位にはマツダ787Bが入った。 岡田/影山の伊太利屋ニッサンは、ベイリー/アチソンのシュパン・ポルシ ェとデグナーで絡み2台ともリタイアしてしまった。 ニールセン/マルティニ/クロスノフのサンテク・ジャガーは47周目のバ ックストレートでストップし、そのままリタイアとなった。 ●ドライバーのコメント ・ラッツエンバーガー:「ずっと10秒くらいでトップのニッサンを追い続け て、ミスが許されないレースとなった。ニッサンのドライバーもそうだったろ うけどね。こんなに緊張が強いられて厳しいレースも初めてなら、こんなに嬉 しい勝利も初めてだよ」 ・ラファネル:「トヨタに加わって2シーズン目だけど、フィニッシュするの がやっとだった去年に比べるとエンジンも車も格段によくなった。燃費のこと も気にせずに全開で走り続けられるからね。エンジンを作ってくれたトヨタ、 シャシーを作ってくれたTRD、タイヤを作ってくれたブリヂストンに本当に 感謝したい」 (長坂は決勝レースでは搭乗していない) ・バイドラー:「ポルシェからニッサンに変えたことは、本当にいい決定だっ た。火災で1分以上を失ってしまったが、2位に入れてラッキーだった」 ・中谷:「本来エンジンの中で燃やすべきガソリンをほかで燃やしてもったい ないことをしてしまった。まだ、ワークス・ニッサンにはついていけない。も っと乗りこなさないと駄目だね」 ・長谷見:「同じチームのマシンのリタイアで拾った3位なので複雑な気分だ。 次の菅生からは新しいR91CPで参加するので、応援してください」 ・オロフソン:「リタイアに助けられた3位だからね。次はもっ頑張ります」 ●カルソニック・ニッサンのスピンの原因は? 優勝を目前にしながら1コーナーでスピンしてしまったカルソニック・ニッ サン。このスピン直前のストレートでは、シャシーの下から火花が散るのが目 撃されており、リアタイヤのエア漏れなどでフロントが上がり、アンダーステ アになってコースアウトしてしまったのではないかという見方も出ている。 富士の第3戦の伊太利屋ニッサン、YHPニッサンのクラッシュも、原因は リアタイヤのバーストでフロントが上がり、シャシーの下に入った空気がマシ ンを空に舞上げたのではないかと見られている。 また、23日、アメリカのロードアメリカでクラッシュしたジェフ・ブラバ ムのニッサンNPT-90も、その原因は、リアタイヤ(ソフトタイヤを使用 していた)のエア漏れが原因で、タイヤのサイドウォールに負担がかかってバ ースト。フロントが持ち上がって宙に舞い上がってしまったのではないかと、 グッドイヤーが見解を出している。 もし、これらのクラッシュ、スピンの原因が、すべて同じだとすると、ニッ サンばかりがついていないことになる。 ●和田孝夫、出場せず 伊太利屋ニッサンのエース、和田孝夫は、第3戦富士のクラッシュで骨折し た鎖骨の状態がまだ完全でなく、出場をとりやめた。 ●ベイリー、F3000に出場? 昨年、SWCニッサンで活躍し、今年の前半はロータスにも乗ったジュリア ン・ベイリーが、アチソンとともにシュパン・ポルシェで日本のレースに出場。 シューマッハが乗ったラルトでF3000にも出場する予定らしい。 FMOTOR4_SysOp すがやみつる(SDI00104)/鈴鹿