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98JGTC第2戦事故の裁判第2回公判

98JGTC第2戦事故の裁判第2回公判

 2000年3月8日、霞ヶ関の東京地方裁判所・民事第721号法廷おいて太田哲也選
手による自動車レース中の多重衝突炎上事故(1998年5月3日、静岡県・富士ス
ピードウェイで発生)による被害に対するレース主催者ら6団体、1個人に対する
損害賠償訴訟裁判の第2回公判が行われました。
 この裁判を古屋が傍聴しましたので、その報告をお知らせします。なお、このレ
ポートの内容は、原告とも被告ともまったく無関係に行われているものです。文責
は、古屋にあるものです。

 初公判の時よりも若干傍聴者は減りましたが、それでも30人近い方が第2回公判
を傍聴しました。今回もまだケガの癒えない太田選手に代わり、篤子夫人が傍聴席
で裁判を見守りました。

 午前11時5分に大橋弘裁判長以下3人の裁判官が入廷し、この日公判が始まりま
した。初公判と同様に左手に原告代理人(太田選手の弁護士)、右手に被告代理人
(訴えられた側の弁護士)が着席しています。
 まず原告側から、この事故の現状を説明する証拠となる品が提出されました。こ
れは、2000年2月3日にテレビ朝日系列で放映された「報道Jチャンネル」内の同
事故を扱った特集を録画したビデオテープ、事故発生直後に同事故を報道した雑誌
6誌の記事コピーです。この雑誌は、レーシング・オン、オートスポーツ、ティー
ポ、カーグラフィック、ナビ、F1レーシングの各誌です。
 また、裁判官から、本件の参考となる自動車レースの競技規則の抜粋を提供して
欲しいという発言があり、被告側のJAF(日本自動車連盟)より証拠として一般
に配布されている自動車競技規則書一式を提出することとなりました。これに原告
は同意しています。

 また、この過程で6団体1個人の被告を、それぞれの関係から4つのグループと
して扱うことが了解されました。Aグループは「ビクトリーサークルクラブ(VICIC)」
「日本モーターレーシングセンター」「中村靖比古(該当レース競技長)」、Bは
「FISCOクラブ」「富士スピードウェイ」、Cは「テレビ東京」、Dを「JAF」と
しました。
 なお、初公判及び今回も被告代理人の上座(裁判官寄り)に着席し、被告の代表
格として発言されていた弁護士は、このAグループの代理人の方でした。

 次に被告が、原告の提訴に対する反論を書面で提出しました。本来ならこれらは
読み上げられるものですが、被告が複数であり、量が多くなったために読み上げた
形だけを行いました。
 これに対し、原告側からの反論を行うべきところですが、原告(弁護士)へ全て
の被告から反論が届いたのが、公判前日だったため内容を十分吟味できていないと
いうことで、これに対する反証は次回公判までに用意するということになりました。

 次回公判は、この反証のために原告側が若干長めの時間が必要として、5月22日
(月)午前10時より民事第709号法廷で行われることになりました。

 これで今回の公判は終了。約25分ほどでした。


 なお、公判終了後に原告弁護士より今回の説明と補足が行われました。

 この際に被告側からの反論書面の一部を見せていただきました。
 主催者などAグループからの書面には「先導車は規則に反していない。救助活動
も過酷な状況下でオフィシャルは最善を尽くした」と主催者側に責任の無いことを
主張。加えて「フォーメーションラップ時の降雨量は毎時5mm程度でドライバーの
前方が見えない状況ではなく、他の車両は少なくとも1周継続すると思って淡々と
走っていた。原告の車が急加速した」ことが事故の主な原因であることを示唆した
ものと思われます。
 なお、この事故は大きく分けて2つの衝突事故からなっており(これはJAF報
告書でも明記している)、太田車が関係したのは第2次の事故であるのだが、この
反論では第1の事故に関してはさほど触れられていません。
 JAFは「サッカーの選手が雨が降っているのに試合を強行したことが原因だと
主催者を責めるのは筋違い」と、他のスポーツと較べ「モータースポーツに限らず、
どんなスポーツでも競技者は競技するにあたって自己責任に徹するべきで、これで
は事故のたびに責任のなすりあいが起きて収拾がつかない」などとしていました。
 なお、この反論のより詳しい内容は後日、下記のこの裁判を報告するホームペー
ジに掲載されるということです。

 原告の弁護団は、これらの反論書面を検討し、次回公判よりなるべく早めに反証
を被告側に提示して、被告側が次回すぐに反証できるようにしたいと述べ、必要以
上に裁判に時間を掛けないように努力すると発言しました。

 また、今回の公判は書面や証拠物のやりとりだけに、特に法廷自体では論議の応
酬はありませんでした。弁護士の説明によると、しばらく(2、3回くらい)はこ
のような書面などのやりとりが続き、裁判の論点を明らかにすることになる。この
上で、重要な争点を出せば、今後それを証明するためにより微細な証拠品や証人の
喚問になるということです。
 加えて弁護士から、このような地道な公判が続くが、こういったときに多くの傍
聴人がしっかりと裁判を見つめることで被告側も、そして裁判官や原告弁護士もよ
り緊張感を持って公正な裁判ができるので、ぜひ今後も少しでも多く方に裁判を傍
聴してもらいたい、との発言がありました。
 裁判の傍聴に関しての案内は、下記のこの裁判を報告するホームページに掲載さ
れています。

 今回、前回の法廷の模様、この事故の概要、問題点他、各種資料を掲載した
「5・3富士炎上事故を考えるWebSite」というホームページか開設されていま
す。興味のある方は、こちらも合わせてご覧いただければと思います。このホー
ムページは、この裁判と事故の検証をするものことで、太田選手を支援し、日本
のモータスポーツを改善しようという有志によって作成されたものです。
アドレスは『http://www.interq.or.jp/sun/fuji9853/』です。


                   フリー・モータースポーツ・ライター
                   古屋 知幸 = QYB04322 =
                   t-furuya@first.win.ne.jp


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