全日本F3000

童夢インサイドレポート vol.1(上)

◆童夢インサイド・レポート '95  vol.1◆
「'95 開幕戦 ミリオンカードカップレース ラウンド1 鈴鹿
               新生・童夢をどうぞよろしく、の巻(上)」
1995年、年明け早々の大震災は、幾万の人生を揺さぶり或いは無理やり幕を下ろさ
せ、人々の生活を混乱の坩堝に投げ込みました。
 皆さまご承知の通り、日本を代表するタイヤ・メーカーの日本ダンロップ社が今回
の地震で被災され、長年のパートナーシップを築いてまいりました童夢チームの国内
F3000レース活動も、一時は存続の危機にさらされました。
 しかし、童夢は第一線の舞台に戻ってきました。
 もちろんそれは、童夢だけの力ではありません。
 タイヤの横浜ゴム株式会社、エンジンの株式会社 無限をはじめ、昨年までライバ
ルとして闘ってきたスピードスター・レーシングチームなど、多くの人々のご協力を
得られたからこそ '95シーズンの開幕を向かえることができたのです。
 そして今また、エイベックス・ディー・ディー株式会社(AVEX D.D.INC. )という
急進目覚ましい音楽産業を主体とする企業のサポートを受けることとなりました。
 エイベックス社について少し説明しますと、今を時めくtrfやm.c.A・T、
hitomi等のアーチストを擁する業界注目の会社です。
 エイベックス社のスポンサードが決定したのは、開幕ギリギリの3月14日。
 真っ白だったマシンにも、エイベックス社のマスコット「ベックスちゃん」のキュ
ートな姿が描かれ、昨年までとはガラッと変わるイメージに仕上がりました。
 新体制のもとで発進した今シーズン、童夢チームの方針も昨年までとはちょっと違
っています。
 どう違っているのか、何を目指しているのかは、この一年間の活動を通して皆さま
にアピールしていくことになるでしょう。
 新生・エイベックス童夢レーシングチームの闘いは、いま始まったのです。
<予選一回目>
 3月18日(土)、例年通りに鈴鹿サーキットで開催された全日本F3000選手
権の開幕戦には12チーム、18台のF3000マシンが集結しました。
 この日の鈴鹿はどんよりした雲に覆われ、気温は10度。前日の雨がコースに残り、
レーシング・マシンが全力疾走するには、ちょっと厳しいコンディションです。
 今季から童夢のステアリングを握る23歳の若手ドライバー、中野信治は少し緊張し
た面持ちでマシンに乗り込みました。
 昨年の全日本F3選手権で、無限エンジン・ユーザーとしてはただ一人勝ち星をあ
げ、ランキング3位の実力を持つ中野は、ヨーロッパでの武者修行から帰国したばか
りの1992年にF3000をひとシーズン闘った経験があります。また昨年はF3の選
手を代表して、シーズン終盤の2戦だけF3000を闘っています。
 が、そのいづれも他チームからのエントリーでしたし、何といっても今年は94年の
チャンピオン・チームで闘うのです。初めてのマシンにタイヤ、人々に囲まれて闘う
プレッシャーは、周囲が想像する以上なのでしょう。
 また、”初めて”という言葉は、童夢チーム全体にもあてはまります。
 童夢が自社で開発したマシンF104と無限エンジンのパッケージは、チャンピオ
ンを獲得した昨年と変わりませんが、何といってもタイヤが違うのです。
 現在の国内F3000を闘う上で、タイヤの重要性はマシンやドライバー以上のも
のがあります。
 いくら完璧なマシン・セッティングに仕上げても、ドライバーがコースを飛びだす
寸前の激しいドライビングで頑張っても、途中でタイヤを傷めてしまったらレースに
勝つことはできません。
 そうならないために大切なのが、タイヤ・テストで得る各種のデータなのですが、
いかんせんダンロップから横浜ゴムに移行したことで、過去に積み上げてきた膨大な
データは有効でなくなったのです。しかも、参戦決定が遅れたために、横浜タイヤで
の走行データはほとんどありません。
 ひらたく言えば、タイヤに関する限り「イチからやり直し」なのです。
 もうこれは、チーム、ドライバー、タイヤ・メーカーの三者が、がっちりスクラム
を組んで、これからのレースやテストで挽回するしかないのです。
 さて、土曜日午前に行われた一回目予選では、チームは中野にタイム・アタックを
させず、本番用のマシン・セッティングの煮詰めに専念しました。天気予報では、二
回目の予選が行われる翌日曜日の方がコースのコンディションが良さそうです。コー
スの状態が悪いといくら頑張ってもタイム・アップしませんし、F3000レースで
は予選・決勝を通じて3セット、12本のタイヤしか使えない規定なのですから、こ
こはタイヤを温存して、マシンの最終調整をしたほうが良いと判断したのでした。
 他チームも同様の考えらしく、誰も激しいタイム・アタックはしません。ヒーロー
ズ・レーシングチームの金石勝智選手が1分44秒079で暫定ポールポジションと
なりましたが、二回目の予選でそのタイムが覆されることは明らかです。
 決勝を想定し、ガソリンを重くしたマシンで中野が出したタイムは1分47秒ジャ
スト。松本恵二監督はじめチーム首脳陣が予想した通りのまずまずのタイムに、中野
も緊張もすこしとけたようでした。
                     (下)へ続く


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