全日本F3000

童夢インサイド・レポート vol.1(下)

◆童夢インサイド・レポート '95  vol.1◆
「'95 開幕戦 ミリオンカードカップレース ラウンド1 鈴鹿
            新生・童夢をどうぞよろしく、の巻(下)」
<予選二回目>
 あけて日曜日。天気予報は大当たりで空は快晴。絶好のレース日和です。
 朝9時から40分間の予選が行われ、その4時間後の午後2時に決勝レースがスタ
ートします。もし予選でマシンをクラッシュさせると、決勝レースに出場できなくな
る危険もありますが、だからといって中途半端な走りは許されません。
 18台のマシンが次々とコースへ向かい、タイム・アタックが始まりました。
 中野も、今日は予選用にガソリンを軽くしたマシンでコース・イン。
 昨日履いていたタイヤをつけて、コース・チェックの5周。1分45秒300をマ
ークしていったんピットに戻り、タイヤの左右を交換。マシン・バランスも微調整し
てもう一度コースへ。今度は1分45秒859と少し落ちましたが、タイヤが限界に
きている状態でのタイムですから問題はありません。
 なかなかの感触を得て再びピットに帰ってきた中野は、今度はまっさらのタイヤに
履き代え、コース上が空くタイミングを図ります。
 予選終了10分前、松本監督からGOサインが出されて、いよいよタイム・アタック
開始です。
 目標タイムは1分43秒台800。前に邪魔な車がおらず、コース上に異変がなけ
れば十分に狙えるタイムです。
 ゆっくりと1周走ってタイヤを温めた後、中野はいよいよアクセルを全開。
 1コーナーからS字、デグナー・カーブからヘアピンを立ち上がり、スプーン・コ
ーナーを回って6速全開でバックストレッチを駆け抜け、最終コーナーから再びメイ
ンスタンド前へ。
 タイムは1分44秒428。目標タイムまでコンマ6秒。次の周回に期待がかかり
ます。
 ところがちょうど中野が2周目のアタック・ラップに入った頃、鈴鹿の最難所とい
われる130Rで一台のマシンがコースアウトし、オフィシャルから黄旗が激しく振
られました。コース上にいたドライバーは全員、アクセルを緩めるしかありません。
 また、1周目のアタックでタイヤの一番良いグリップを使ってしまったために、中
野のその後のラップ・タイムはなかなか上がりません。
 結局1分44秒428が最速タイムとなり、中野は予選15番手から決勝レースを
スタートすることとなりました。
<決勝レース>
 ドライバーの中野にとっても、またチームにとっても、決して満足のいく予選結果
ではありませんが、レースは予選ではなく決勝の結果が勝負です。
 さいわい、決勝用はまず納得できるセッティングを得ていましたので、レース中の
ポジションアップが充分に期待できます。
 午後2時。1周のフォーメーションラップをおえて、全車グリッドに着き、いよい
よシグナル・グリーンが点灯しました。
 中野は見事にスタート・ダッシュを決めて、前にいた何台かをかわして1コーナー
に進入。予選より5つ順位を上げた10番手でオープニングラップは終了です。
 予選2番手スタートの服部尚貴選手が、4周目にポールポジションからスタートし
たA・G・スコット選手をかわしてトップに立ったあと、レースは全体的な膠着状態
に入ってます。ドライバー全員が、ライバルの動きを見ながらどこでチャンスを掴も
うかと必死で考えているのですが、ガソリン・タンクがまだまだ重いレース序盤の無
理は禁物です。35周の争いの中盤に差しかかる15周目くらいになって、ガソリン
がかなり減ってマシンが軽くなれば勝負時ですから、それまでの間に、前を行くライ
バルの弱点を探し出さねばなりません。
 スタート時の大チャンスを掴んでジャンプアップした中野もまた、次のチャンスを
窺いながら周回を重ねていました。
 ラップタイムも1分49秒台から48秒台、さらに47秒台とテンポ良く上がって
います。この分だと、昨日の予選で試していた<レース中盤セッティング>が功を奏
して、もっと上のポジションも狙えそうな気配です。
 そう、ピットに陣取った首脳陣の希望が膨らみ始めたとき、中野のタイムがガクッ
と落ちました。
 いったい何があったのかとテレビ・モニターに目を向けしますと、ちょうどカーナ
ンバー8番が映りました。明らかに他車よりペースが遅くなっています。何らかのマ
シン・トラブルが発生したのです。
 それでも何とか走ろうと、中野が懸命のドライブを続けているのが画面からも伝わ
ってきますが、トラブルの原因がわからない首脳陣は、とにかくピットインを中野に
指示しました。
 ゆるゆるとピット・ロードを下ってきたマシンがピット前で止まり、メカニックや
報道陣が囲みます。カウルが外されて点検が始まりましたが、ドライバーの中野はち
ょっとためらった後、コックピットから立ち上がり、潔くマシンを離れました。
 4速と5速のミッションが壊れてしまったのです。
 トラブルの原因は、工場に戻ってから部品を分解・点検してみないとわかりません
が、スタートでジャンプアップし、予選結果を挽回しようと張り切っていただけに、
中野の心は不完全燃焼状態ですが、この悔しさは、4月9日に行われる第2戦富士に
ぶつけるしかありません。
 富士スピードウェイは、昨年、中野がF3で優勝したコースでもあります。
 3月23日から二日間行われるタイヤ・テストで、マシンとタイヤの調整も進むで
しょう。
 次なる闘いへ、チーム全体の気持ちは高まっています!
                       第1戦レポート(了)


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