ANABUKIレーシングチーム 1995年 全日本F3選手権シリーズ第7戦 レースレポート-2 〔公式予選 つづき〕 予選は土曜日の午前と午後の2回行われるが、真夏の太陽が照りつけるいまの時期、少しでも気温の低い午前のセッションの方が好タイムが期待できるはずなのだが、古いタイヤから新しいタイヤに履き代えたことで、本山はマシン・バランスがいっそう狂ったように感じられるのだった。 自分のイメージするライン取りで走ろうにも、マシンの動きを掴みきれずにコーナー立ち上がりでフラついてしまう。 先に行われたサポート・レースの予選の影響で、コースは全体的に滑りやすい状態になっていたのは事実だが、ライバルのロサ選手や道上選手は確実にタイムを上げて1分22秒台をマークしているのだから、路面に問題があるわけではない。 走っても走ってもいっこうにタイムが伸びないことへの焦りが、さらにミスを誘う。 まったくの悪循環だった。 結局、金曜日の練習タイムも上回れないままに予選一回目は終わり、午後から行われた2回目の予選でようやく出した1分23秒978をマーク。 総合9番手という、今季最悪の予選結果になってしまった。 〔決勝レース〕 さすがに気落ちした表情で宿舎へ帰った本山も、一晩明けて、少しは元気を取り戻していた。 いつまでも過ぎたことを悔やんでも仕方ない、そう気持ちを切り換えたのが良かったのだろう。 決勝のスタート・ランプ点灯と同時に、ドンぴしゃりのスタート・ダッシュで3台ゴボウ抜き。その後、すぐ前でスピンアウトしたマシンをうまく避け、本山は5番手でオープニングラップを終えたのである。 さらなる追い上げが期待されたのだが、いかんせん、まだ精神的に迷走状態から抜けきっていない本山は、思うようにラップタイムを上げられない。 後ろから追いついてきた早田岳史選手を辛うじて抑えることはできたものの、結局、最後まで順位は変わらず、5位のままで24周レースを終了したのであった。 よりによって、なぜここイチバンのレースの時に最悪の事態を向かえたのだろうか。 やはり「このレースで勝たなければならない」というプレッシャーが、本山の胸に重くのしかかっていたのだろうか。 ここ1、2カ月、本山は別に参戦している全日本ツーリングカー選手権でも、思うような走りが出来ずに悩んでいることも、影響しているのだろうか。 その答えを、本山自身、まだ見つけられずにいる。 だが、人間なら誰しもスランプの時期はやってくるもので、そんな自分を調整しつつ、やるべき仕事をしてこそ「プロフェッショナル」なのだ。 若い本山にとって、今回のような突然の、しかもなかなか抜けきれないスランプは、初めての経験だ。 もし、本山にとって今が一番苦しい時なら、何とかそれを乗り越えて欲しい。 そして、今の苦しさや悔しさをバネにして、ドライバーとして人間として、より大きく成長して欲しい。 残念ながら、今年のタイトルはポールトゥフィニッシュで優勝したデ・ラ・ロサ選手に決定してしまったが、今シーズンのF3選手権はあと3レース残っている。 それらのレースではぜひ、開幕当初の元気いっぱいの走りでチャンピオンのロサ選手に向かっていく本山を見たい。 そして、11月に行われるマカオGPで、世界のヤング・ドライバーを相手に果敢にチャレンジする本山の姿が見られることを、チームもF3ファンも切に願っている。 次戦は9月3日、富士スピードウェイで開催されます。