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CABIN:F3000第7戦富士リリース

CABIN RACING TEAM RACE INFORMATION
                            1990年9月5日
『第7戦 富士』 1-2 Formation for targets
星野4勝目で王座へ王手。片山初の2位入賞。
星野一義 予選A組1位 決勝 優勝
片山右京 予選A組3位 決勝2位
 まず星野一義が、そして片山右京が表彰台へ上がった。CABIN日本インターナ
ショナルフォーミュラ選手権レース以来2回目の、2人揃って受けて表彰である。優
勝者の星野は、傍らに立つ片山の腕をとって上げて見せた。大先輩であり、かつ同僚
でもある星野が、彼を追い掛ける頼もしい若者を祝福する。シリーズ後半に約束され
ていたキャビン・レーシングチームの総攻撃は、星野の2連勝による4勝目、片山の
初の2位入賞と、キャビンアローのワン・ツー・フィニュッシュで現実の姿を現し始
めていた。
 1990年全日本F3000選手権第7戦が、9月1日(土)、2日(日)静岡県
・富士スピードウェイで開催された。キャビン・レーシングチームはこのレースに星
野一義、片山右京の陣容で参戦した。星野、片山ともにマシンは前回第6戦における
仕様に準じたもの。ただし、星野はレース用に第6戦で優勝したシャシーを選択、菅
生で実戦投入した新しいシャシーはTカーとしている。
<体制>
キャビン・レーシングチームwithインパル
ドライバー :星野一義
監督    :金子 豊
マシン   :ローラT90-50/無限(Tカー ローラT90-50/無限)
キャビン・レーシングチームwithヒーローズ
ドライバー :片山右京
監督    :田中 弘
マシン   :ローラT90-50/DFV(Tカー レイナード89D/DFV)
<公式予選>
 残暑の富士スピードウェイで公式予選は始まった。星野、片山ともに予選A組から
の出走だ。コースクリアが遅れてセッションのためのコースオープンが5分延期され
た後、予選が開始された。星野、片山とも1セット目の予選用タイヤを装着して早々
にコースインする。
 星野と片山は並んでゆっくりとコースを1周し、ピットに戻った。星野はそのまま
タイムアタックの機会を待って待機に入ったが、片山はピットクルーと短い打ち合わ
せをした後に再びコースイン、タイムアタックに入った。ここで片山が記録したタイ
ムは1分19秒511。
 セッションの残り時間15分となった頃、星野はようやくエンジンを始動させた。
時を同じくして、1回目のタイムアタックを終えピットに戻っていた片山もコースイ
ンのために動きだしていた。片山は2セット目の予選用タイヤを装着、勝負をかける
構えだ。
 コースに飛び出した星野は、狙い定めたように1分18秒502を記録、予選A組
の首位へ躍りだした。続いて片山が1分18秒555を記録。星野に続く予選A組2
位へと進出だ。星野は、追従するライバルがいないことを確認して、2セット目の予
選用タイヤは温存したまま1回目のセッションを終えた。
 午後、空には雲が流れて日差しが弱まり気温が低下した。午前に比べると予選走行
のための条件は好転した。午前のうちに2セットの予選用タイヤを使ってしまった片
山には不利な流れだ。片山は既にタイムアタックに使用したタイヤを再び装着してコー
スインするが、タイムを更新することは難しかった。この為に関谷選手が片山の記録
を上回り、片山は予選A組3位に甘んじた。
 一方、星野は温存していた2セット目のタイヤを装着して2回目のタイムアタック
に出撃、さらにタイムを短縮してA組首位の座を安泰なものとして予選を終えた。
星野一義:1分17秒965 A組1位
 「2回目のアタックでは、17秒前半のタイムを記録するつもりだった。でも遅い
クルマにひっかかってしまったんだ。だから、マルティニ選手にポールを取られたの
は悔しいけど、仕方ない。予選の勝負どころは午後だと最初から決めていた。金曜日
の午後の天候のデータを見ても、午後の方がコンディションが良くなることが予想で
きていたんだ。いろんなデータを蓄積してきたチームの力ってやつだよね。菅生と前
回の富士の1回目の予選は、本当に悩み抜いたよ。でも、その悩みを突破しようとし
たから今の自信があるんだ。新しいシャシーの何が悪かったのか、今でもわからない。
とにかく乗りにくかった。しかもスプリングを替えようが何をしようが、その乗りに
くさが変化しなかった。思い通りに動いてくれる乗り慣れたマシンに戻っただけで、
今日のぼくは幸せだよ。今は自信満々なんだ。」
金子 豊監督
 「1セット目で首位が取れたから、安心して2セット目を午後にまわせたね。今回
も、開幕戦から使っていたシャシー。シーズン残りもこのまま使うつもりでいます。
新しいシャシーの問題は、多分モノコックの品質のバラつきだろうと思います。どう
も剛性に問題があるみたいですね。」
片山右京:1分18秒555 A組3位
 「大失敗の予選です。全部、ぼくの責任。監督にはメチャメチャに叱られました。
1セット目のタイヤで走り出したとき、100Rでハーフスピンしちゃったんです。
前の時間帯に走っていた2輪がオイルをこぼしていたみたいなんです。それに乗って、
ズルッときちゃった。その後に今度はBコーナーで遅いクルマにひっかかって、もう
駄目。あまりにもタイムが悪かったでしょ。もし午後に雷雨でもきたらどうしようも
ないから、仕方なく2セット目を使ったんです。午前のうちにそこそこのグリッドを
手に入れておく必要がありますから。このせいで条件の良くなった午後にタイムを縮
めることができなかった。でも、決勝の走りには最近絶対の自信があるんです。だか
ら決勝ではやりますよ。前回みたいにベストラップをどんどん出していくつもりでい
ます。とはいってもタイヤを消耗しては仕方ないから、序盤はタイヤに無理をかけず
に様子を見て、後半に勝負をかける。これが決勝の作戦です。」
田中 弘監督
 「1セット目のタイムでは9位でしょう。これでは我慢ができなかった。午後、気
温が上がるかもしれないし、雷雨注意報も出ていたからまた夕立でも来たらおしまい
でしょう。だから仕方なく2セット目を使った。右京はまだ予選用タイヤの使い方を
誤解している。コーナーに速く入って、そのまま速く抜けようとしている。でも、タ
イヤのグリップには限界がある。その限界を越えないような繊細さが必要なんです。
それなのに、気持ちがそういう条件を飛び越えていってしまうんだ。」
<決勝レース>
 決勝スタートを前にして、富士スピードウェイは薄曇りとなり気温は28度と予想
ほどには上がらなかった。そして切られた決勝スタート、アウト側からスルスルと加
速したのは星野だった。絶好のスタートを見せた星野はポールポジションの,アルティ
ニ選手にアウト側から並びかかり、直線が終わる手前でかぶせることに成功、首位を
奪って1コーナーを通過した。
 3列目からスタートした片山も快調で、1周を終えた2度目の第1コーナー手前で
チーバー選手に襲いかかり、4位へ進出。次の周では関谷選手を下して3位を奪うと
いう積極的なレースを見せる。
 5周目、マルティニ選手が星野にアタックして首位を奪い返すが、星野はマルティ
ニ選手の背後にピタリとつけて離れない。およそ0秒5の間隔を保ったまま、マルティ
ニ選手が1分19秒台のタイムに乗せれば、星野も1分19秒台のタイムで対抗、緊
迫した首位争いが続いた。
 14周目、マルティニ選手がヘアピンで隙を見せたところで星野が勝負をかけるが、
惜しくも順位を入れ替わるには至らなかった。しかし星野は次の周での1コーナーで
思いきり減速を遅らせてアウト側からマルティニ選手に攻めかかる。星野は力づくで
マルティニ選手を抑えこみ首位を奪回したが、わずかにオーバースピードで姿勢を崩
し、その間に再びマルティニー選手の先行を許してしまった。
 星野の闘志は衰えない。星野は周回毎にマルティニ選手との間隔を縮めていき、2
3周にはまたマルティニ選手の背後に追いついた。25周目の第1コーナー、星野は
再びマルティニ選手に襲いかかる。この時点で速さに明らかな差があったマルティニ
選手は、今度はアウト側にマシンを寄せて星野に進路を開けた。星野はその力で首位
に返り咲いたのだった。
 一方、片山は星野の背後を走りながら苦戦に陥っていた。クラッチの不調のためペー
スが上がりきらず、21周目に小河選手に3位の座を譲っていた。右京をパスした小
河選手はマルティニ選手をも捉え、星野追撃にかかった。
 星野と小河選手はほぼ同じペースで走りながら、緊張感に満ちたレースを展開した。
しかし、ストレートの伸びでわずかに優る小河選手がじわじわと星野に迫る。星野は
41周目、惜しくも小河選手にストレートで並びかけられて首位を奪われてしまった。
 しかし、星野は今シーズンよく口にする「粘り強いレース」を続けた。マシン性能
で劣る分は星野の闘志と技で補う。なにより星野の武器は「勝利への執念」である。
その執念が実るときがすぐにやってきた。43周目ヘアピンで小河選手がスピン、そ
の間に星野が4度目の首位に立ったのだ!と同時に、小河選手の脇を片山もすり抜け
ていった。片山はマルティニ選手がスピンした際に3位へ浮上しており、ここで星野
に続く2位へと進出し、キャビン・レーシングチームのワン・ツー体制が出来上がっ
たのである。
 そしてチェッカーフラッグは振られた。クーリングラップを終えて2台のキャビン
アローがグランドスタンド前に戻ってきた。後半戦、チャンピオン奪取を狙う星野、
初優勝を狙う片山、2人のキャビン戦士にとって、目標が目前にまでやってきたこと
を予感させる光景であった。
星野一義:1時間00分23秒432
 「勝ちは勝ちでも、あまり手放しに喜べないレースだ。優勝を飾れたのは素直に喜
んでいるよ。今はもう次のレースのことを考えている。次のレースはきっと、内容で
勝つ。」
金子 豊監督
 「何が原因なのか、ストレートでスピードに乗りきらなかったね。空力セッティグ
のせいなのか、エンジンに何か問題が発生していたのか、まだわからない。これから
スタッフと相談して原因を解明していかなければいけない。自分の腕ではどうしよう
もないところで苦しんで耐えなければならなかったのだから、星野にとっては勝って
もおもしろくないレースだったろうね。でも、あの状態でマルティニ選手を攻め落と
せたんだし、2位だって守っていけたのだから、原因さえわかれば次のレースは星野
らしいぶっちぎりをみせられるよ。星野自身の調子は今、完調。自信を完全に取り戻
しているから。」
片山右京:1時間00分30秒516 2位
 「17周を過ぎた頃からクラッチがおかしくなったんです。それで4速から5速が
入りにくくなって、ガチャガチャやってた。このせいでタイムがバラついてしまった
のが悔しいですね。それでも、勝負をかける前にいなくなっちゃったけれどマルティ
ニ選手は抜けたと思う。彼はもう限界で走っているのが見えていたから。ギアをガチャ
ガチャやっていたから、そのうちギアボックスもおかしな雰囲気になってきて、終盤
は頼むから壊れないでくれーって、祈りながら走ってましたよ。今日、星野さんの後
ろを走らせてもらったけれど、やっぱり星野さんはうまいや。アグレッシブでいて、
繊細なんですね。今日は星野さんの後ろにいて、とてもいいものを見せてもらったよ
うな気がします。4月の3位よりも嬉しくない内容だったけど、次はもう少し実力を
つけて、心底喜べるレースをやります。」
田中 弘監督
 「クラッチの不調はローラT90-50の持病なんだ。こちらとしても様々な対策
を加えて問題は解決していたんだが、今回また発生してしまったようだ。熱がブレー
キ系の配管に影響してしまうらしい。右京の課題は、レース中のタイムのバラつきだ
な。前のクルマにくっついていっても、コーナーでアクセルを開けるときにどうして
も踏みすぎている。それで少しづつ離されていっちゃうんだ。確かに星野、小河はソ
フトタイヤを選択して、ウチはミディアムだったんだけど。そればかりが原因ではな
い。今の右京の走り方にはミディアムの方が適しているはずだ。しかし、右京の気持
ちとクルマのコントロールがバラバラだからタイムのバラつきになる。小河選手に抜
かれたときも、サッと間隔が開いてしまったでしょう。これは、彼が緊張を持続でき
ないからです。今後はこうした気持ちの持ち方も身につける必要があるだろう。また、
今日の結果はいいところかな。急に1等賞にはなれないよ。3位の次に初めての2位
と、少しづつ上を向いているからいいでしょう。もし可能性があるなら、次の富士だ
ろうと思っている。」
 提供:CABINレーシングチーム事務局


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