今シーズン、スーパーフォーミュラ(SF)における目玉ドライバーの一人と思われたテオ・プルシェール(2023年FIA-F2チャンピオン)が、第1戦を走ったのみでチームを突然離脱。以降、ITOCHU ENEX TEAM IMPULの19号車は、第2戦をベン・バーニーコート(2023年IMSAスポーツカーGTD Proクラスチャンピオン)、第3、4戦を平良響(2023年SFライツ2位)がドライバーを務めてきた。
しかし、SFシリーズの世界における注目度を上げるためにも、橋渡し役となる現役の大物ドライバーの参戦が熱望されていた。そんななか、第5戦を迎えるにあたって、TEAM IMPULから発表されたニック・デ・フリースの参戦はまさしくその思いを形にするものだった。
デ・フリースは、2019年FIA-F2チャンピオン、2020-21年フォーミュラEチャンピオン、2022-23年F1参戦、今シーズンは、TOYOTA GAZOO RacingからWECのレギュラードライバーとして、また、フォーミュラEにも参戦するオランダ出身の29歳。現在、考えられるベストともいえるドライバーの参戦が実現したといえる。
レースウィークの金曜日、そのデ・フリースが会見で初のSF参戦に対する意気込みを語った。
「トヨタとIMPULに感謝している。実はチャンスがなくて実現には至らなかったけれど、2017年からSF参戦を目指していたんだ。SFに関してはまだオンボードの映像を見ただけで、シミュレーターでの経験もなく本当にまっさらな状態だけど、明日から走れるのが楽しみだよ。日本は大好きだし、ステップ・バイ・ステップでエンジョイできればと思っている」
こう語るデ・フリース。昨日シート合わせをしたばかりで準備は十分ではないとはいえ、表情からは気負いも不安も感じられない。終始、笑顔を浮かべての会見となった。
それには、多くのSFドライバーとも顔見知りであることもあるのだろう。WECでチームメイトの小林可夢偉はもちろんのこと、「福住とは2009年にKARTで戦ったし、F3ではチームメイトだった。牧野とは一緒にトレーニングしたこともあるし、笹原とも走ったことがあるよ。岩佐もF2でよく知っているよ」と、実に多くのドライバーと関わりを持っている。
TGMクランプリから今季残り5戦に参戦することが発表された大津弘樹も、デ・フリースとともに会見に臨み、「SFに世界で活躍するドライバーが参戦することはとても良いこと」と、参戦を歓迎し、会見中も二人で言葉を交わす場面も見られた。
実力もさることながら、このフレンドリーさも、デ・フリースがトップカテゴリーに参戦し続けている所以だろう。
「当面はWECとフォーミュラEに集中することになる」というデ・フリースは、今回の第5戦、10月に富士スピードウェイで行われる第6、7戦の3レースのみの参戦だが(鈴鹿の8、9戦は平良がドライブ)、明日のフリー走行から、どんな走りを見せ、そして決勝までにどんな進歩を見せてくれるのか、大いに注目したい。
Text&Photo: Shigeru KITAMICHI