筑波・富士S-FJ選手権

第6戦筑波決勝 ポールスタートの安田航がミスを挽回してトップを奪還、シーズン初優勝を飾る

優勝は安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)

 2022年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第6戦が7月31日(日)に筑波サーキットで開催され、18周の決勝レースをポールポジションからスタートした安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)が、スタートで順位を落としたもののリカバリーに成功し、昨年第5戦以来の優勝を飾った。

 第6戦決勝は午後0時55分コースイン開始。真夏の太陽が照りつけるコースは靴底からでも路面の熱が伝わるような酷暑で、各チームはグリッドについたドライバーを少しでも冷やそうとモバイル扇風機などで風を送りこむ。

 予選でクラッシュ、リヤセクションを大破した澤井良太朗(オートルック ニシオ設備10V)は直後から懸命のリペアが行われた。エンジンやミッションは無事だったがリヤウイングはステーが大きくゆがみ、サスペンションアームも折れ曲がっており要交換。幸いなのは所属するオートルックのガレージがサーキットの正面にあり、必要なパーツがすぐに確保できることで、それでも修復作業は時間を要し、マシンに火が入ったのはコースイン10分前の0時45分頃だった。予選結果は10番手。

 もう1台予選中に最終コーナーでグラベルに飛び出した草野裕也(TRF.CSI KK-SⅡED)の方はフロントウイングが曲がった程度ですみ、補修の後はカウルの中に入り込んだグラベルの砂利掃除に精を出していた。こちらは予選8番手。

 午後1時5分フォーメーションラップ開始。第1コーナー側のカメラがとらえたモニター画面の中では陽炎がゆらめいている。

決勝レースのスタートシーン

 18台がグリッドに整列してレーススタート。ポールシッターの安田の加速がややにぶく、セカンドロウ3番手スタートの岡本大地(FTK・レヴレーシングガレージ)が出足鋭く安田をかわしトップを奪う。2番手スタートの田上蒼竜(A'sカンパニー ZAP ED)も第1コーナー進入までに安田の前に出ると、その勢いのまま第1コーナーで岡本にアウトから並びかけるとS字で前に立ちトップに躍り出る。安田は3位にドロップするがすぐに岡本に接近し、第1ヘアピンの進入で岡本のラインがややワイドにはらむとインに飛び込む、しかし立ち上がりで岡本が抑えて2位を守ってダンロップコーナーへ進入。第2ヘアピンでは4番手スタートの稲葉摩人(ZAP SPEED 10VED)が安田のインを窺うがオーバーテイクには至らない。

田上蒼竜、岡本大地。安田航。序盤のトップ争い

 そのまま1周目を終えてトップは田上、0.388秒の差で岡本、0.461秒差で安田、0.157秒差で稲葉、さらに白崎稜(ZAPスタッフリソースED)、岩本瞬(小倉学園ファーストガレージSⅡ)と続き、8番グリッドからスタートした草野が内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)をかわして7位に浮上。さらに12番手スタートの山下友基(ELEVレーシングHRF10v)も9位にジャンプアップ。

 岡本はコーナー毎に田上にゆさぶりをかけて2周目は0.264秒差。しかし田上も屈せず3周目には59秒671と岡本を上回るペースで走り0.365秒差とするが4周目は岡本が59秒630のファステストラップを出して0.214秒差に戻すと、5周目には0.196秒差と「いつでも行ける」姿を田上のミラーに映し出す。田上は早くもタイヤが苦しくなってきたのか最終コーナー立ち上がりでアウト側の縁石までリヤタイヤを滑らせているようで、ここで岡本に詰められている。

 一方この2台のバトルを見つつ間合いを詰めていたのが3位の安田で、田上、岡本よりコンマ2から3秒速いペースで、4周目に1.09秒まで開いた岡本とのギャップを5周目には0.491秒、6周目に0.203秒と一気に削り取り、1位から3位までがワンパックの集団になる。そこから1.5秒ほど遅れて4位稲葉と5位白崎のZAP勢同士も0.424秒差と接近戦をくり広げる。また、この周まで6位を走行していた岩本のペースが落ちて、そのままピットイン、リタイヤとなった。ミッショントラブルで4速が使えなくなったとのこと。岩本に代わって草野が6位浮上。

 クラッシュから復活した澤井はスタート直後からポジションを落として12位。その澤井と9番手スタートだった本田千啓(オートルック ☆モダン☆10V)をかわして10位につけたのがマスターズクラスのトップ、秋山健也(スーパーウィンズKKS・ED)、マスターズクラスの2位は総合15位で上吹越哲也(KKS-2)が続いている。

 7周目、1コーナーのアウトから安田が岡本に仕掛けると出口でオーバーテイクに成功、2位に進出する。この周だけで0.405秒差、8周目に0.509秒差と岡本を引き離し、トップ田上に対しては0.603秒差→0.331秒差と詰め寄っていく。ここから数周は田上も踏ん張り0.3秒以内に安田を寄せ付けずにいたが、11周目のバックストレートで安田が間合いを詰めると最終コーナーのアウト側から田上に襲いかかりついにトップの座が交代する、序盤から最終コーナー出口が苦しそうに見えた田上はここで踏みとどまれなかったか。

クラッシュする本田千啓(オートルック☆モダン☆10V)

 この間9周目の第1コーナーで本田のマシンが単独コースアウト、スポンジバリアにクラッシュする。本人の弁によるとドライビングミスとのこと。

 トップに立った安田は11周目0.146秒の差を12周目0.549秒、13周目1.029秒まで拡大し、田上を突き放しにかかる。田上と3位岡本は0.3秒の差をキープ、田上は2位に落ちても気の抜けない状況が続く。稲葉~白崎と続き、6位の座は内藤が草野を仕留めて浮上、草野7位。

 いったんは1秒以上に開いた安田と田上のギャップだが続く14周目、安田はどこかでミスがあった模様でそれまでより0.8秒近くラップタイムが落ち、田上は0.581秒差まで接近する。しかしその後安田は再びペースを戻し、15周目0.881秒、16周目1.050秒と差をひろげ、最後はややペースを落として、0.771秒差のトップでチェッカードフラッグを受けた。2位田上はスタートから最後まで終始背後からプレッシャーをかけられる展開だったが屈することなくポジションを守り切った。遠来の岡本は3位、59秒630のファステストラップを出した。

 4位は稲葉「ゴールすれば必ず表彰台」という記録は途絶えたがそれでもしっかり4位の座を守りきった。5位白崎、6位争いは終盤内藤対草野のバトルに山下も加わり、16周目に山下が草野をオーバーテイク、その間に内藤が逃げ切り6位、山下は12位スタートから5台抜きの7位として前田代表を喜ばせた。草野は8位。で9位にマスターズクラス優勝の秋山が入った。マスターズクラス2位は総合13位の上吹越、同15位の竹沢がクラス3位となった。

決勝2位は田上蒼竜(AsカンパニーZAP ED)

決勝3位は岡本大地(FTK・レヴレーシングガレージ)

決勝4位は稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED)

決勝5位は白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

決勝6位は内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)

■決勝後のコメント

優勝 53号車・安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)

優勝した安田航(ファーストガレージ&Sウィンズ)

 「(スタートで出遅れるもすぐ挽回したが?)クルマがいいのは自分でもわかっていたので。スタートでミスはしたのですけど、それでも勝てる自信はまだあって、もうどこでも抜けそうなポテンシャルはあったので、無理に抜いていかずに、岡本選手は(第1コーナーの)イン側をブロックしていたのでアウト側からまくれたのですけど、田上選手に関してはあまり追い詰めると、岡本選手も後ろから来る可能性があったので、かなり慎重に行きたかったのですけど、最終コーナーでアウト側から行けた、それくらいマシンがよかったですし、チームの皆さんに感謝です」

2位 13号車・田上蒼竜(AsカンパニーZAP10VED)

決勝2位の田上蒼竜(AsカンパニーZAP ED)

 「この抜けない筑波で順位を1コ落としたというのは自分の中で課題かな、と思います。リヤタイヤがきつくてトラクションがかからなくて。1コーナーは最終コーナーのボトム落とせば後ろが詰まるのでいいのですが、第2ヘアピンがどうしてもトラクションがあっち(岡本選手)の方がかかっていて、バックストレートの方がスリップも効きやすいので、そこを抑えるのが苦しかったですね。(前を追いかけるより後続を抑える方に集中してた?)後ろを抑えるので精一杯で、安田選手もちょくちょくミスはしてくれていて、近づいた時もあったのですが、ちょっと射程圏内には遠かったですね」

3位 8号車・岡本大地(FTK・レヴレーシングガレージ)

決勝3位の岡本大地(FTK・レヴレーシングガレージ)

 「スタートで安田選手がミスして、田上選手と(自分が)ワン・ツーだったのですけど、田上選手のペースがあまり上がらなくて、そのペースに付き合わさせられた感じでした。ペースはこっちの方がよかったのですけれど、抜き切るまでのペース(速さ)は持っていなくて。それで後ろで付き合うことになったのですけど、安田選手がものすごい勢いで取り返して来てて、ペースもあの3台の中で安田選手が一番良さそうだったから、彼を前に行かせて、安田選手と田上選手でやりあう所を突けたらな、というレースでした。安田選手は簡単に田上選手を抜き切れるペースがあったっという感じですね。(終盤まで田上選手を追いかけてましたけど?)エンジンに補正が入っちゃって、水温が96度以上になってストレートがキツくて、ダメでした。(暑かったですものね)2番手3番手で前にクルマが居た状態だったので、全然風が当らなくて、ずっと水温がキツかったです」

4位 14号車・稲葉摩人(ZAP SPEED 10VED)

決勝4位の稲葉摩人(ZAP SPEED 10V ED)

 「(コントロールタワー呼ばれていたが?)走路外走行で厳重注意でした。最終コーナーで3、4回やったようで。(3位から離れてしまったが?)シフトミスがずっとあって、昨日一昨日から2速→3速が1コーナー立ち上がりでギアが入らないことが何回かあって、レース中はないだろうなと思っていたのですが、またやってしまって、トップ集団と差がついてしまいました。あまり普段シフトミスとかしないのですけど、何かが変わったのか、自分の何が変わったのかというのが今は解っていないのですけど、そのマシンに一日二日で対応しきれなかったというのは悔しいなと思います。ライバルどうこうより、自分との闘いに負けた感じがして、ちょっと悔しいですね。チャンピオンシップもだいぶ危なくなってきたので、頑張ります」

5位 26号車・白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

決勝5位の白崎稜(ZAPスタッフリソースED)

 「セッティングを変えて、序盤(前に)ついて行けるなと思ったのですけど、意外と後半にタイヤのタレがあって、それに自分が適応できなかったのが敗因で、ついて行けなかったです。(タイヤは早い時期からグリップが落ちた?)意外と序盤は(路面を)喰っていて、3周4周目あたりまでよかったのですけど、その後ガクンという感じでタイヤがズルズルの状態になって、そこで前の集団と離れました。(ミスはなかった?)シフトミスは何度か、僕も稲葉選手もちょっと(ミス)していて、少し争っていたのですけどそこでミスがあったので今後の課題です」

6位 22号車・内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)

決勝6位の内藤大輝(RCIT RaiseUP MT)

 「スタートでミスってしまって、草野選手に前に行かれてしまって、そこから、筑波なので中々抜けないっていう状態が長く続いてしまったな、というふうに思っています。ペース的にはそんなに悪くなかったですけど、草野選手と争っている間にタイヤもどんどんヒートしてしまって、後半どんどんつらくなってくる展開に自分でしてしまったという感じでした」

 2022年JAF筑波/富士スーパーFJ選手権シリーズ地方選手権第7戦は9月18日に筑波サーキットで開催される。後2戦を残してランキングトップの田上は82点、2位稲葉66点、今回の優勝で安田61点で3位とタイトルの行方はまだ見えてこない。

表彰式

マスタークラスの表彰式

Text: Junichi SEKINE
Photo: Kazuhiro NOINE
Asako SHIMA


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