FORMULA REGIONAL JAPANESE CHAMPIONSHIP

FIA-FR:童夢F111/3がアルファロメオエンジンを採用した深い理由

270馬力を発生するインタークーラーターボ付きアルファロメオ1750ccエンジン
写真提供:フォーミュラリージョナル事務局(FRJ)

新型コロナウイルスの影響で2か月遅れで開幕を迎え、2大会6戦を終えたフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ選手権。現在のところ台数的には活況を呈しているとは言い難いが、トップグループは毎戦かなり高次元なバトルを展開している。

このシリーズでは、新たに開発された童夢製マシンF111/3にインタークーラーターボ付アルファロメオ1750ccエンジンという国内レースでは珍しいエンジンを搭載している。

なぜ、トヨタ、ホンダではないのかという声がある。FIAの定めた世界標準のプライスキャップ(規定価格)の制約があったためとも言われているが、それだけではないドライバーに寄り添った思惑があったことはあまり知られていない。

リージョナルカテゴリーの立ち上げから関わり、世界のシリーズを統括する世界自動車連盟(FIA)との折衝からカスタマーサポートまで広く担当する株式会社童夢の有松義紀氏に聞いた。

リージョナルレースの狙いは?
国内レースにおいては、各メーカーのスクールなどで育った、いわゆる“メーカー系ドライバー”でないと、ステップアップしづらいというエントラントの声を聞いていました。フォーミュラ・リージョナルは、メーカー系もそうでないドライバーも道具としての平等なレーシングカーで戦い、ドライバーはもとよりエンジニアやチームも含めて、アピールの一助となるカテゴリーにしたいと思っていました。
直接的には開幕までの時間の制約が原因ですが、結果としてニュートラルなアルファロメオエンジンを採用することになりました。これによってメーカー系ドライバーに対する「あいつのエンジンは違う」などという根拠のない憶測も排除することができます。また、このカテゴリーからヨーロッパへ飛び立ってほしいという願いもあり、ハード面でそれがしやすい環境を整えました。
ヨーロッパを目指しやすいハード面の環境とは?
ヨーロッパでは、リージョナルの上位規格の車両、さらにはフェラーリ系エンジンを含むとF1まですべてマレリー社のデータロギングシステムを採用しています。
最初は簡単に移行できるのでFIA-F4規格の童夢F110と同じデータロギングシステムにしようとも思いましたが、リージョナルに乗るドライバーの可能性を広げたいと思い、アルファロメオ+マレリーという組み合わせにしました。制御とロギングシステムの習得にはそれなりに時間がかかりますので、ヨーロッパに行って一から勉強していたらそこでチャンスを逃してしまうこともあります。リージョナル・ヨーロッパ選手権に参戦するなら、シャシーは違っても(注:ヨーロッパはタトゥース製シャシーを使用)エンジンと制御系は同じパッケージであり、このシステムを使えるエンジニアと一緒に向こうへ行けば、その面ではハンデなしでパフォーマンスを発揮することができます。特にスタートや、スピンした時のとっさに対応において、身構える必要がありません。

走行後のデータ確認、分析にも同じデータロギングシステムを使うメリットは大きい
写真提供:フォーミュラリージョナル事務局(FRJ)

今シーズンは、コロナの影響で予定していたカレンダーの変更を余儀なくされ、SUGO大会は鈴鹿のスーパーGTと日程が重なってしまった。このため、一部のドライバーやメインテナンスガレージが日程的に難しく、参戦を断念せざるを得なかったチームもあった。また、参戦を予定していた外国人ドライバーが出入国制限で参戦できない不運もあり、現時点ではやや盛り上がりに欠けている感は否めない。

しかし、童夢では今シーズン予定していた16台のデリバリーは滞りなく終了し、20年後期デリバリー車両も若干数生産予定という。また富士大会とSUGO大会を見ての引き合い、海外からの問い合わせも多く、9月からは来シーズンの受注も開始する予定とのこと。

我慢のときを経て、フォーミュラ・リージョナルが盛り上がりを見せる日もそう遠くないはずだ。

まとめ: Shigeru KITAMICHI
Photo:フォーミュラリージョナル事務局(FRJ)


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