全日本F3000

CABIN:F3000最終戦プレスリリース

1991年全日本F3000選手権             1991年12月4日
RACE INFORMATION                   キャビン・レーシングチーム事務局
    第8戦「日本信販スーパーカップRd.4 富士インターレース」
         (悪天候のため9/8開催予定が順延)
        Ukyo get the Champion
     片山右京、1991年度全日本F3000チャンピオンを決める
         星野一義 予選A組1位 決勝リタイヤ
         片山右京 予選B組1位 決勝2位
 ウイニングランを終えてグランドスタンド前に帰ってきた片山右京を数え切
れないほどの人々が取り囲んだ。第1コーナー寄りにあったピットから走って
駆けつけた田中弘監督ですら、マシンを降りた右京に近寄れないほどだ。押し
寄せる報道陣に囲まれた右京は、ヘルメットをとらずに高ぶる感情を抑えてい
る。そこへようやく人垣をかきわけて田中監督が近づいた。「おい」と田中監
督は言葉少なに声をかけ、右京の肩を抱き寄せた。ふたりの2年計画が、2年
目最後のレースで完結した瞬間であった。
 台風15号の影響の降雨のため、9月8日に開催予定であった1991年全
日本F3000選手権・第8戦「日本信販スーパーカップ Rd.4 富士インタ
ー」決勝の代替レースが11月30日(土)静岡県・富士スピードウェイで開
催された。今シーズン最後のF3000選手権となるこのレースにキャビン・レー
シングチームは、星野一義、片山右京の陣容で参戦した。
<体制>
 キャビン・レーシングチームwithインパル
  ドライバー:星野一義
  監督   :金子豊
  マシン  :ローラT91-50/無限(Tカー ローラT90-50/無限)
 キャビン・レーシングチームwithヒーローズ
  ドライバー:片山右京
  監督   :田中弘
  マシン  :ローラT90-50/DFV(Tカー ローラT91-50/DFV)
<マシン>
 規則により、今回のレースには公式予選に出走する際に登録されていた車両
を用いなければならない。星野は予選に出走したローラT90-50/無限に
代わって、Tカーとして登録されていたローラT91-50/無限を使用する。
一方、片山は予選と変わらずローラT90-50/DFVを用いる。高速コー
スである富士スピードウェイに向けて、両者とも低ドラッグ仕様のウィングを
取り付けているほか、片山車には空力面でのリファインが施されている。
<決勝レース>
 9月7日に行なわれた公式予選の結果、星野一義が1分17秒442を記録
してA組の首位となり、併せてポールポジションを獲得した。片山は1分17
秒520でB組の首位。したがって星野と片山は、フロントローに並んで3カ
月後の決勝レースに臨むことになる。
 土曜日の朝、星野と片山はパドックに置かれたストーブを挟んで談笑した。
前回のレースで、惜しくもチャンピオン争いから脱落してしまった星野は「ぜ
ひチャンピオンを取るよう頑張れ」と右京を激励。ただし「でも今日のレース
に勝つのはぼくだよ」とつけ加えることも忘れなかった。
 前回は気負いすぎてリズムを崩した、と反省する片山は大事な決勝レースの
スタートを見事なダッシュで飾った。片山はポールポジションの星野をかわし
て、首位で第1コーナーへ飛び込む。片山と王座を争うライバル、チーバー選
手も1コーナーで星野を抑え、2位に進出。激しいバトルが始まった。
 まず絶好調の星野が、チーバー選手に襲いかかった。2周目のストレートエ
ンドでチーバー選手のイン側に飛び込み、ブレーキング競争となる。しかしチ
ーバー選手も引かず、結局2台は1コーナー進入で接触、コースアウトしてし
まう。星野はこのアクシデントで必勝を期していたレースを落とすことになっ
たが、チーバー選手もレースから脱落したため、あっけなく王座争いに決着が
ついてしまった。最後の最後で、ようやく片山が念願の全日本F3000選手権チ
ャンピオンの座を手にいれたのである。
 しかし、片山のレースはこれで終わりではなかった。チャンピオン決定を優
勝で飾る仕事が残っている。片山は突進した。しかし、後方からマルティニ選
手が片山に攻め寄り、5周目の1コーナーであっさりと首位を奪い取ってしま
う。片山の背後では黒沢選手と、追い上げていた鈴木利男選手が激しい3位争
いが展開されていた。だが、11周目の1コーナーで2台は接触、互いに順位
を大きく落とした。これで、片山の順位を脅かすのは3位のバイドラー選手へ
変わった。17周目に片山は、そのバイドラー選手にかわされ3位へ落ちる。
シリーズ最終戦にふさわしい激しいバトルの中で、片山は2シーズンを共にし
た愛機ローラT90-50/DFVと一緒に戦っていたのだ。
 序盤ペースが上がらなかった片山は、中盤以降ペースアップ。1分19秒台の
前半から、時には1分18秒台に入り、2位に落ちていたマルティニ選手を追走。
そして36周目の1コーナーで、片山はマルティニ選手をとらえる。2位に上
がった片山の後方からは、カルカッシ選手が追い上げてきた。だが、片山はこ
れを逃げきり、結局そのままチェッカーを受けた。片山はピットウォールで彼
を迎えるクルーに向かってコクピットから腕を振り上げて応えた。片山がキャ
ビン・レーシングチームwithヒーローズに加入した2年前、田中弘監督は「1
年目は勉強の年。2年目がチャンピオンを取る年」と言い切った。その公約通
り、片山はとうとう王座を手にいれた。そして彼は世界へと旅立つこととなっ
たのである。
星野 一義:決勝リタイヤ
「右京はよくやったと思うよ。苦しかっただろうね。おめでとう。朝のウォー
ムアップで、マシンはタイヤ、エンジンともに絶好調であることがわかってい
た。でもスタートをしくじってしまった。前回のレースのこともあるし、少々
慎重になりすぎたんだ。今シーズン最後のレースだったから、チャンピオンは
取れなかったけれど、チームのみんなのためにぜひとも優勝して終わりたかっ
た。そして、それができるはずだったんだ。このくやしさをバネに来年はチャ
ンピオンを絶対に取り戻す。約束するよ」
金子監督
「最後のレースだから優勝で締めくくりたかった。今年は、自分達のガレージ
を作って初めて迎えたシーズンだった。1年目なのだから、それなりに頑張っ
たと思います。だけど来年はいいわけはできない。今年のレースをいい反省材
料にして力いっぱい頑張りますよ」
片山 右京:決勝 59分33秒076 2位(シリーズチャンピオン)
「優勝でチャンピオンを決めたかった。それがみんなに対する恩返しだと思っ
ていました。とにかくシーズン後半はよれよれになってしまいました。ここま
でチャンピオンを決めることができなかったことが恥ずかしいです。チームが
せっかくそれだけの準備を整えてくれていたのに、それに応えられなかったん
ですから。本人は気負ってはいないつもりなんだけど、プレッシャーなのか寝
つけない夜が続いてました。ゴールするまで忘れていたんだけれど、表彰台の
そばまで来たら日本一になったということが実感できて、感情が高ぶってしま
いました。でも、今は泣くのを我慢して、家に帰ってから夜布団の中で泣きま
すよ」
田中弘監督
「気持ちよくF1に行かせてやりたかった。優勝できればよかったんだが、リ
タイヤじゃなくて2位入賞したんだから格好はついたでしょう。男の花道には
なったね。このシーズン、右京はラッキーだった。今日のレースもチーバーが
ああいう形でいなくなってしまったからラッキーだった。でも、右京はこうい
う運命を引き込む星を持った男なんだよ。今日は前回のレースよりも気楽でい
られたよ。ぼく自身にとってのシリーズは前回の鈴鹿で終わった、と右京にも
きつい言い方をしていた。でもチャンピオンがとれたことは嬉しいよ。ほっと
している。長い長いシーズンでしたね」
 キャビン・レーシングチームは、これで全日本F3000選手権全日程を消化し
た(第10戦富士は台風で中止)。結果は星野がシリーズ4位、片山がチャンピ
オンを獲得した。長いシーズンの間、ご声援いただいたファンの方々と関係各
位へ深くお礼と感謝の意を述べたい。
**CABIN Racing Team Office/寺倉茂雄**


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