全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同・ルーキーテスト(3日目)が、12月12日、三重県・鈴鹿サーキットで行われた。ウーゴ・ウグチュクウ(VANTELIN TOM'S SF23)が、最後に格の違いを見せる驚愕のトップタイムで、3日間のテストを締めくくった。
テスト3日目はルーキーのみが走ることができるルーキーディ。すでに2日目から走っているルーキーもいるが、この日から走行を始める選手のなかで、注目はトムスの車両に乗るウグチュクウとフレディ・スレイター(VANTELIN TOM'S SF23)の二人。
ウグチュクウは、アメリカ国籍の18歳。カート時代にマクラーレンF1チームと契約をした逸材。昨年のマカオGP勝者でもある。フレディ・スレイターは、英国籍の17歳。激戦のフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権(FRECA)でチャンピオンを獲得。今年のマカオGPでトップ争いを繰り広げたことは記憶に新しい。
そして、今年SFライツにフル参戦したザック・デビッド(San-Ei Gen with B-Max SF23)も、注目株の一人だ。B-Maxから参戦し、野村勇斗の影に隠れた感はあるが、チームの評価は高い。
Session5
午前10時から始まったセッションは、風があり路面温度が下がっていたこともあって、開始早々に鈴木斗輝哉(Kids com KCMG Elyse SF23)がシケインで、梅垣清(docomo business ROOKIE SF23)がヘアピンでスピンを喫し、いきなり赤旗が出されてしまった。
さらに、クラッシュ続きのジャック・ドゥーハン(REALIZE Corporation KONDO SF23)が、またしてもデグナーで3日連続のクラッシュを演じ、序盤は中断ばかりになってしまった。
しかし、そんななかでもずば抜けた速さを見せたのが注目のウグチュクウだ。開始まもなく1分40秒台をマークすると、その30分後には1分39秒台に上げ、セッション最後のアタックでは、何と1分37秒770まで削ってきた。
このタイムは、2日目までの総合結果と比較しても、10位に相当するタイムだ。それを僅か1時間しか走っていないSF初体験、鈴鹿初体験のドライバーが叩き出してしまうのだから恐ろしい。
ただ、ウグチュクウはベストタイムを出したあとにスピンをして、他の選手のアタックを妨げてしまった。これはいただけなかった。2位以下の選手は、鈴木を除いて、最後のアタックができずに終わってしまったが、昨日から速さを見せているルーク・ブラウニング(REALIZE Corporation KONDO SF23)、同じく2日目となる荒尾創大(ThreeBond SF23)と鈴木。そして今日が初走行のデビッドまでが1分38秒台をマークした。
Session6
このセッションも、開始早々荒尾がシケインでスピンしてしまい、赤旗から始まった。
再開後も梅垣清(docomo business ROOKIE SF23)がスプーンでコースアウトして、早くもセッション二度目の赤旗となった。
ここまでの順位は、小林利徠斗(KDDI TGMGP TGR-DC SF23)、ブラウニング、スレイター、チャーリー・ブルツ(TEAM GOH)、デビッドと、ここまでが1分38秒台。
動きが出てきたのは、開始40分過ぎ。ブラウニングが1分37秒570でトップタイムを塗り替えたのを皮切りに、荒尾1分37秒791、鈴木1分37秒633、ウグチュクウ1分37秒526、スレイター1分37秒480、小林1分37秒665と、軒並み37秒台にタイムを上げた。
残り30分を切ったところで、デビッドからステアリングを引き継いだ清水康弘(San-Ei Gen with B-Max SF23)が、アウトラップのS字でコントロールを失いクラッシュ。このセッション三度目の赤旗が提示される。
そして、再開後、最後のアタック合戦が始まるが、ここでの主役はやはりウグチュクウだった。他の選手が1分37秒台に留まるなか、3日間のテストで誰もマークしていない1分36秒862という、異次元のタイムを記録した。すでに煮詰まっている坪井車、追い風のコンディションにも恵まれたということを差し引いても、初の鈴鹿で、殊勲の2番手タイムをマークした鈴木に、0.5秒近い差をつけてのトップは、やはり格の違いを感じざるを得ない。
2番手タイムの鈴木も、F4とリージョナルの経験だけでSFに乗り、すでにSF経験のある小林を抑えたことは、チームや関係者に対するアピールに繋がったことは間違いない。来季が楽しみだ。
4位以下は、スレイター、ブラウニング、大草りき(PONOS NAKAJIMA RACING SF23)、荒尾、卜部和久(SANKI VERTEX CERUMOINGING SF23)と続いた。
これで、今年のスーパーフォーミュラの走行は終了。次は年明け2月の開幕前テストだ。概ね今回のテストでメンバーは見えてきたとはいえ、最終的にどんな顔ぶれが揃うのか楽しみだ。
Text: Shigeru KITAMICHI Photo: Atushi BESSHO










