
コンストラクターの(株)イケヤフォーミュラ、およびZAP SPEEDは新たなフォーミュラマシン「IFZ-02」を開発。モビリティリゾートもてぎで開催のもてぎチャンピオンカップレース第5戦において純白のマシンがデモ走行を行った。
「IFZ-02」は入門フォーミュラカテゴリーとして4年をかけて企画、設計、開発された純国産マシンで、オリジナルのアルミ製ツインチューブモノコックにオリジナルカウルを装着。
- 全長4410ミリ
- 全幅1685ミリ
- 全高990ミリ
- ホイールベース2695ミリ
- 車両重量500~515㎏
と、現行のスーパーFJよりやや長く、車重は50キロほど重い。ホンダのバイク「ホーネット」用をベースとした「SC89」リッターエンジンを搭載、現在の出力は112KW(152PS)/11,000rpm、トルク104Nm(10.8kg)/9,000rpm 程度ということで、P/Wレシオ的には0.32kg/PSと現行S-FJをわずかに上回る。最大の特徴は4気筒エンジンを横置きにして、チェーンで駆動力をデフに伝達している点だ。タイヤは市販のラジアルタイヤを装着している。
純国産のものづくり、そして廃棄が難しいカーボン素材を使わないことで環境負荷を減らすといった点にも配慮されている。
車両を製作した(株)イケヤフォーミュラの池谷代表に、開発の経緯等を伺った。
――どのような経緯で開発されたマシンなのか?
「もてぎさんと、ZAP SPEEDの笹川さんと3者で入門用のクルマを立ち上げようということで、できるだけ低価格でフォーミュラカーを、と。上に乗せるための手段というのもあるのですが、それだけではない、ホビーで楽しめるというところも視野にいれて、ある程度体の大きい人が乗車したりとか、チャンスを与えられないかな、ということでもてぎさんと一緒に動いたものです。いろいろなテストをして、当初パイプフレームとかも検討したのですが、やはり安全性ということになると、モノコックという方向になりました。これはツインチューブのモノコックで作ってあります」
――すべて独自開発で?
「独自でやりました。FIA-F4と同等のクラッシュテストも行って、十分な強度と持っていることを確認してあります。まず安全というところを最初に考えて、ちょっと時間はかかったのですが、何とか完成できたというところです」
――レースのグレードでいうと、FIA-F4相当を想定している?
「もっと下のクラスですね。当初はS-FJよりちょっと下を狙っていたので、このタイヤもラジアルです」
――テストでえらく速かったという噂もあるが?
「ちょっとそこは性能調整しないとならないかもしれません。ラジアルタイヤで「そこそこ」のタイムが今出ているので、そこはちょっと調整します」
「ラジアルタイヤはライフも長いですし、こういうタイヤでコストもあまりかからないように、車両もできるだけ安くできるように。ホンダさんのエンジンをつかわせてもらったりしています」
――バイクのエンジンと聞いているが?
「音はすばらしい、いい音で回ります。デザインも何種類も作って、ある程度形になったので、見てくれもかなりいいと思います。ラジアルタイヤということで細いタイヤを履くと、どうしても(バランスが)おかしくなってしまったので、それを車体のカーブのラインを変えることによって、けっこう見た目もいいと思います(笑)」 「当初は来年の頭からという計画だったのですが、最初エンジンがCBRというのを選んで、それで一度クルマを立ち上げてみたのですが、ものすごく速くて(苦笑)。これだと危険が伴い入門用ではなくなってしまうので、今はホーネットというバイクの、割と低価格で買えるエンジンを選択して、それで作り直しました。だから3種類作りましたね。モノコックもこれが3機種目で、完成形です。超高張力鋼板を使っていて、1ミリの鉄板なのですが、すごい強い素材です。こういう新しい素材が生まれてきたので、このぐらいの形状であればカーボン同等の強度を持つというところまでいきました」
――レースの開催については?
「来シーズン半ばくらいからは順次始めたいと思っています」
――ちなみに価格はどのくらい?
「今は500万円という数字を目標にしています。S-FJの方がもうちょっと高いですね。バイクのエンジンにしたので、その分がコストを下げることができたと思うので」
「乗っていただくと分かるのですが、すごくコントロールしやすいです」
――エンジンさえ替えれば上のカテゴリーも行ける?
「(笑)CBRを一度やったので、どのぐらいの速さまでいけるかはだいたい見えたのですが、とてつもなく速くて、FIA-F4よりも速かったです」
本日のデモランのドライバーは伊藤駿。昨年のS-FJ筑波・富士シリーズチャンピオンであり、先日来、次期F-FJと言われる「FJ1500」のテストも経験している(https://www.fmotor.jp/2025-new-super-fj-myst-kk-f-shake-down)。前日にもスポーツ走行で「IFZ-02」を走らせていたとのことで、走行後のインプレッションを聞いた。
――ドライブしての感想を
「とてもできがよくて、エントリーカテゴリーにありがちな安っぽい感じとか、どこかシャキっとしていない感じとかが一切なくて、ひとつふたつ上のカテゴリーのクルマぐらいの質感があっていいですね。あと車高(地上高)とかエントリーカテゴリーのクルマだと車高がけっこう高かったりして、そのせいで動きがぎこちなかったりするのですが、これはそういうことがなくて、ブレーキングの時も、コーナリングの時も、ピタっとしていて、ピュアなレーシングカーです。乗っていても楽しくて」
――現行のS-FJとFJ1500と比較しては?
「比べ物にならないですね。MEFの方が上級カテゴリーのクルマと言われても違和感ないくらいで。FJ1500もS-FJよりも車高の制限がなくなって、だいぶよくなりましたが、それよりもさらに純粋なレーシングカーという感じで、FJ1500よりも、どういう運転が速いのかというのがわかりやすく教えてくれるクルマだと感じました」
――タイム的にはどの程度?
「この前のテストでは2分4秒フラットくらいまで行けたので、今日は時間が足りないのでともかくですが、3秒台は入れるかなと思います(今回のS-FJ予選ポールタイムは4秒697)」
――エンジン横置きでチェーン駆動というのは違いを感じる?
「特に違和感もないですし、言われなければ気が付かない程度の差しかありませんね」
当日のデモ走行では時間の都合もありアウトラップ~計測1周後にコントロールライン上で停止、と本格的な走行ではなかったが、10,000回転越えという最近のフォーミュラカーでは聞けないレーシングサウンドをアピールしていた。来年からのレース開催に期待したい。





Photo: Kazuhiro NOINE
Junichi SEKINE
Asako SHIMA
